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クズ人間の俺が聖女と呼ばれている  作者: いかや☆きいろ
二章 聖女は奇跡を起こす
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これが私の生きる道

 シーナさんにアクセスしたいのだがどこにいるかは分からないのでまずはダツヤナ村長のところへ向かう。クシワク婆様も一緒に居れば色々一括で済ませられるんだけどな。

 村は前より更に活気に溢れていた。冒険者は更に増えて、なんか新築の大きな建物が幾つも有る。どうやらギルド支部を正式に作っているみたいだ。この近くの森がダンジョンになったって事が理由らしい。聖女の要請よりそっちのが大きいんだろうな。

 俺を見つけてガキ共が喜んで駆け寄ってくる。犬のようだな。


「おー、お前ら、元気にしてたか?」

「うん! あ、でも」

「シンが酷い病気みたいで遊べないんだ」

「そうか、後で姉ちゃんが見てやろうな」

「やった! シン元気になるね!」

「また遊べるね!」


 どうやらガキ共の一人が急に臥せるようになったみたいだ。上級浄化ポーション大活躍だな。炊き出しに出てこれない人もいるよなぁ。診察もしないと駄目か。……やる事がガンガン増えるな。先にシンのとこに行くか。


「じゃあシンのとこに行くか。案内してくれな」

「やったー!」

「はーい!」


 赤毛のチビ助がダンで、お下げの金髪チビ娘がネノと言うらしい。可愛い先導者たちに導かれて、なんか潰れそうな小屋に来た。

 知らん間に後ろからついてきてたアンセルが扉を開けてくれる。こいつはどこまでも騎士様の自分が好きらしい。

 王国騎士にこう言う奴は割といる。脳筋で自分は駒と見なし命令に忠実で、国の事が一番大事。それが一般的な王国騎士だ。最初の人物鑑定から俺はこいつがその典型的な王国騎士だと思ってる。俺の事を守ろうとしたりするのもその為、国の為だ。


「……まあ良いや、有り難う」

「……いいえ」


 ん? なんか拗ねてる? あれか、置いていかれた犬みたいな感じ? まあ良いや。「ごめんくださーい」と入り口から呼び掛ける。今にも死にそうな婆さんが出てきた。事情を説明してシンの寝床に案内してもらう。

 寒そうな薄い布団にくるまって咳き込んでる少年。汗だくだ。このままじゃ風邪が治らないのも頷ける。うちの布団は良い布団だからな……金は有るし。普通はこうなんだろう。そりゃ貧民上がりの山賊も増えるわ。


 まずは普通の浄化ポーション、様子を見て水を飲ませる。栄養補給に通常のポーション。起き上がれるようになったみたいだ。


「大丈夫そうかシン」

「う、うん、もうぜんぜん苦しくない! 有り難うお姉ちゃん、お帰り!」

「おう、ただいま」


 それにしても魔法薬すげえな。初級だけで瀕死からぴんぴんに回復してる。俺のポーションが凄いのも有るかも知れんけど。それもラウネーズの手柄だしな。

 後ろを振り返り婆さんにもポーションをやると少し元気になった。プルプル震えていたのがガクガク震えだした?! 更に土下座した!?


「ううう、うちにはお返し出来るものが有りませんですじゃあ……孫は連れていかんでくださいまし!」

「いや、何もいらんって」

「お姉ちゃんは聖女様なんだよ!」

「みんなにご飯を食べさせてくれたりするんだ!」

「そうだ、婆さんも食いに来いよ、今晩は私が炊き出しをするからさ」

「おおお……聖女様……」


 改めて言われるとこっぱずかしいな。でもまあ、これが俺の、いいや……これが私の生きる道だよな。


 シンの家を出てしばらく村長宅に向けて歩く。後ろからは「お姉ちゃんの恋人~?」とか言う定番のセリフが聞こえてくるがスルーだ。上司の声かけ一つで人を斬れるそんな怖い男は御免だ。


 歩いてると、エルフ仲間のカナイが向こうからやって来た。いつの間にか居なくなってたが、こいつはこの村にも拠点が有るんだよな。


「カナイ、買い物か?」

「ああ。シェルか」

「そうだ、カナイさ、シーナさんがどこにいるか知ってるか?」

「シーナは、ヤーカミ」

「おっと、炊き出しの準備してるのか。私が帰ってきたのを知らせておいて、出来ればヤーカミで待っててほしいんだが……、カナイも用事有るよな? ガキ共行ってきてくれる?」

「いい、私が行く」

「そ、そっか。なんか悪いな」

「いい、暇してた」


 暇してたのか。まあ私と炊き出ししてたら忙しいからな。充実した忙しさって奴は麻薬だよな。ブラックに嬉々として勤める奴はこの麻薬の中毒なんだろう。カナイに頼んで後でヤーカミ食料品店で合流する事にした。

 やっとダツヤナ村長に報告できるな。なんつーか本当にこの村は私を暇にさせてくれない。だがそこが良いんだ。足りない物が有るなら持ってる奴が補う。ノブレスオブリージュだったか。私を必要としてくれるこの村はなんとも離れがたい。


「ダツヤナ村長いるか~」

「ああ聖女様、お疲れ様でございましたな。ようこそお帰り下さいました」

「なんだいなんだい、シェル。あんたはぜんぜん女らしくならないね」

「お、クシワク婆様もいたのか、ちょうど良いわ」


 私はナコイ男爵の街で起こった一部始終を二人に報告した。奇跡のスープについても説明し、どうせなら全村民に食わせたい事も伝えた。


「はあ、あんたは何と言うか、最初から分かっていたけど本当に規格外だね」

「しかしあらゆる欠損がスープによって回復するとは、凄まじいですな。それにこの村には怪我のせいで退役した冒険者も多い」

「戦力拡張になるねえ。ダンジョンスタンピードになる前に朗報だよ」

「ダンジョンスタンピード?」


 二人によると、どうも最近この近所に森林ダンジョンが出来たのだが、いずれはそこから魔物が溢れ出てくるらしい。

 どうやらピンチに間に合ったようだ。聖女様の面目躍如だな。




 ここからシェルの一人称は私になります。覚悟を決めたようです。

 ヒーローに落とされて変わるんじゃないところがなんともシェルらしいですね。


シェル「聖女の私をよろしくな!」

クシワク「いきなり女らしくはならないねえ」




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