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クズ人間の俺が聖女と呼ばれている  作者: いかや☆きいろ
二章 聖女は奇跡を起こす
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呑気なイケメン騎士が仲間になったらしい

 腰が抜けて全く動けない俺にイルレコユサとカナイが寄ってきた。待て、こいつはヤバい。近寄るな。

 騎士はこちらに振り向き、こちらに手を伸ばして止まる。


「……」

「く、来るな!」

「……分かった。しかしそこで座っていると通行の邪魔になりそうだが、どうする?」


 いや、そんな事聞かれてもな。あ、何か眉を寄せて普通に困ってる。あの時の迫力は微塵も無いな。

 ……まああの時は俺も誤解を招くようなスタイルだったしこいつは上司に命令されて追いかけて来たんだもんな……つかこいつはあの時の山賊モドキが俺だとは気付いてないだろうし……当たり前だが。俺が怖れる理由は今は無いはずだ。いや、貴族ってだけで怖いけど。


「イル、レコ、ユサ、聖女殿を起こしてやってくれないか?」

「分かりました」

「にゃあ」

「シェル、早くご飯」


 ぶれないなユサ! こんな時くらい気を使えよ! でも突っ込んだら怖いのも少し落ち着いたわ。錬金術師ギルドの用事を済ませないとな……。

 何か騎士、アンセル君っつったか、こっち見てめっちゃニコニコしてるな。あ、助けてもらったのに礼言ってない。


「す、すまん、アンセル君、有り難う。助けてくれて……」

「お役に立てたようで何よりです、聖女殿」

「聖女殿はやめてくれ。シェルでいい」


 うわっ更に笑顔になりやがった。イケメンスマイルがまばゆすぎる。な、何かめちゃくちゃドキドキするのはあれだな、ストックホルムシンドロームって奴か? いや、吊り橋効果だったか?

 まだ怖いんだな……。あいつには近寄らないようにしよう……。だからなんで笑顔なんだ?


「お噂以上に可愛らしい方ですね、シェル」

「ぶっ! ……ばばばばばば……っかじゃねーの、何いきなり口説いてんだ?!」

「口説いてましたか?」

「いや、口説いてはねえな、だが初対面で可愛らしいはやめろ!」


 くそっ、なんなんだこの心臓は。やっぱり怖いのが継続してるんだろうな。つか何か錬金術師ギルドの中まで付いてきたぞイケメン。アンセルな、名前覚えよう。どうせならイルレコユサみたいに分かりやすくイケメーンとかって名前なら直ぐに覚えたのに。

 やだそんな名前の人、イケメンでも逃げるわ。でも横文字の名前って覚えづらいよな。

 いいさ、営業にとっては人の顔と名前を覚えるのは重大な能力だ。直ぐに覚えてやる。もう営業じゃないけどな。


 つか錬金術師ギルドで営業か。ちょっと落ち着こう。……イケメン退散イケメン退散、かーっ! あ、俺寺生まれじゃないから無理か。寺生まれにも無理か。前々世の俺なら退散させられる方だしな。坊さん見る度に逃げないと駄目とか嫌だぞ。


 なんとか呼吸を整えて、一つの受付に座ったところでアンセルが俺の横から顔を突き出してきて盛大にビビった。心臓が止まるわっ! 止めんかい! やっぱこれ怖いだけだな。


「すみません錬金術師ギルドの皆さん、お騒がせしました」

「あ、いえ……」


 ああ、暴れたからな、お前だけ。謝罪は必要だわな。んで受付さんの顔は真っ赤だ。これだからイケメンは。さっさと話を終わらせてイケメンから逃げよう。


「えーと……買い取りをお願いしたいのですが」

「チッ、あ、はい。錬金術師ギルドのカードや冒険者ギルドのカードなどのギルドカードはお持ちですか?」


 舌打ちしたよこの人。大丈夫かこの人が受付で。彼女はキスイー=ダーネカオさんと言うらしい。覚えておこう。


 そう言えばギルドカードなんて作った事無いな。有りませんと答えると錬金術師カードを勧められた。一応説明を受けてメリットの方が多目なので作っておく。具体的にはアイテムや素材の売買で五%のポイントが入るとか、錬金術師の協力が得やすい。

 デメリットは呼び出しを受ける可能性が有るとかだ。それも無視しても構わないらしい。ただ頻繁に通知が来るらしい。

 作れる物でランクが決まるらしく、現在最高はSランク。作れなくてはいけない物は……。何か見た事が無いようなアイテムがたくさん並んでるが、色々有るけど一つ作れるのが有った。


「これだね」

「ええと、これは?」

「欠損回復薬」


 ズシャアっと言う音と共に受付のキスイーさんは椅子ごと後ろに吹き飛んだ。マジで大丈夫かあんた。その四角い硬いポーション瓶をアンセルが手に取って面白そうに見ている。


「彼女が実際に欠損回復を行った事は伯爵家にも報告が上がっている。これは本物だよ」

「はくしゃくけえっ!?」

「ひっ!」


 何かキスイーさんがめちゃ狼狽してそれにビビる俺。つか伯爵家にも報告行ってたのか。だからアンセルが俺が聖女だと知ってるんだな。いや、もうこれ聖女って認められない流れじゃ無くなってるよな……どうしよ。

 つかまた何も考えずにアイテム出すなよ俺も。でもSランクの方がメリット多そうなんだよな。色々情報を秘匿してくれたりするらしい。研究者は引きこもりたいもんな。


「ぎ、ぎ、ギルド長を呼んで参りますう~っっ!」


 キスイーさんは椅子から転がり落ちる勢いのまま走っていった。錬金術師ギルドの受付には身体能力が必要だったりするんだろうか。植物界と駅伝で覇道を競いあってそうな見事なアクションだった。


 ぼんやりしているといきなり天井が割れた。ギルド長? は、天井から何かカラフルな乗り物で降りてきた。トロッコ? 空中に浮き、七色に輝いている。帰ってきたキスイーさんによると彼がギルド長で間違いないらしい。イサク=ドンメと言う名前だそうだ。何か田舎で畑耕していそうな名前だな。


「めんどい。これ薬剤鑑定機」

「いや、何か説明しろや」


 思わず突っ込んだ。イサクは白髪で頭頂部は禿げている。横に残った白髪が角のように伸びててゲームキャラのようだ。

 しばらくポーション瓶を弄ったりその機械に乗せてボタンを押したりしていたが、急に眉間を揉み始めた。


「お前さんそんな見た目だがエルフだよな? 五百才くらいだったりするのか?」

「あん? 十六の女の子に五百才はねえだろ」


 いや、実際エルフ年齢で五百才とかなのかも知れないけどそんな事は女神様言ってなかったぞ。


「じ、十六でこの純度と濃度の欠損回復薬を……天才にしても凄すぎるだろ……」

「あ、そう言う事か。これの調整にエルダードリアードの力を借りてるんだよ。魔力は私が入れたんだが」

「えええ、エルダードリアードおっっ!?」


 うお、ビビるからいきなり叫ぶなよ! 爺さんもキスイーさんもやはり植物界とライバルなのかってくらいの音速の滑りで後ろにずり下がった。

 あいつ(プラム)はただ飯食らいだぞ? そんなに驚く相手なのか?


「シェル、エルダードリアードは魔王級のモンスターだよ。シェルはやっぱり凄いんだね」

「またこのイケメンはニコニコして顔を覗いてきやがって……。ちょっと離れろや、怖いから」


 怖くてドキドキするんだよ! 寄るな!

 暫く動きを止めていたイサク爺様はそのアンセルののんびりした言い分を聞いてようやく動き出す。つかアンセル、魔王が出たと言うならもう少し慌てろ。呑気すぎるだろ。


「直ぐにギルド会議を開く。お嬢さん……、シェル様は直ぐにSランクに登録だ。情報の秘匿を徹底せよ!」

「わっ、分かりました!」


 と、どうやらSランクに無事になれたらしい。カードももらった。情報を秘匿してくれるのはやはり有り難いな。何か忙しそうだから一声かけて帰ることにした。


 ギルド員が慌てて総員でお辞儀して来た。……うーん、やはりあの薬は出したらヤバい薬だったのか。つかただ飯食らいが意外と有能だったって事だよな。これからも薬製造機にしてやろう。ただ飯はゆるしまへんで! ただ飯は俺が食いたい!


 ギルドを出てイルレコユサとカナイと宿を探してると何故かアンセルがにこやかに笑顔で色々話しかけながら付いてくる。なんでついてくんだよ。


「父からは君を失えば諸外国にこの国は責められ滅ぶことになると聞いてるけど、帰った方が良いのかな?」

「国が滅びるとかのんびり言う話かっ! それでなんでついてくるんだよ」

「出来れば君と一緒に女王陛下に謁見して、君の保護をお願いするように言われている。俺は君の付き添い兼護衛だな」

「……女王陛下に会ったら完全に聖女認定されそうだが……」

「伯爵が認定してるからもう無駄な足掻きだと思うよ? あ、君が危険にならない限りは君の行動を妨げる事はしないから安心して」


 ……こいつは、なんでこう、とんでもない事をさらっと言うんだ。

 つまりこいつは、こののんびりイケメン……何かラーメンのびてそうだな。この呑気なイケメンはこの後も俺についてくるのか。


 いつの間にか呑気なイケメン騎士が仲間になったらしい。良いけど、……怖いからあんまり近寄るなよ。





 名付けが我ながら酷すぎです。

 好きですけど。

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