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クズ人間の俺が聖女と呼ばれている  作者: いかや☆きいろ
八章 決戦の炊き出し
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リザルト

 最後に飲みます。ってかずっと飲んでますね。

 全てが終わり、私たちはキンノの自宅で飲み会の準備を進めている。もちろん戦勝パーティーとかは別に有るんだけど、まずは会議が必要でしょう、とかヨドミちゃんや陛下、お父様が言い出した。


 なので前回よりは少ないけどまた大人数で飲み会だ。戦争の打ち上げかな? みんな今回は本当に疲れたんだろう。私も疲れた。たくさん殺してしまったし、ネリも。心が痛むのは仕方がない。せめて冥福を祈ろう。

 たっぷり飲んで、嫌なこと忘れてしまおう。忘れちゃ駄目なことも有るけどさ。


 今日は戦争の打ち上げみたいなもんだから、派手な料理はやめて質素にする。派手な料理は終戦記念パーティーでやればいい。でもまあ、勝利のお祝いだから材料は良いものを使おう。魔物鯛のローストとか魔物海老のフライとかムニエルね。

 何故かありすちゃんが調理と配膳を手伝ってくれるようだ。出番がないから拗ねてる?

 シチュー余ってるからグラタンにしよう。あとは何を作ろうかな、と思ったところで誰か来た。


「戦勝おめでとう御座います! お祝いに参りました、ヤーカミです!」

「帰れ」

「お祝いなのに追い返すんですね! えーと、今日はシーサーペントのハムとベヒーモスのベーコンとクラーケンの燻製を持ってきました!」

「さすがに気合い入ってるな。まあいい、入れ」


 いつも入れてやるんだからこのやり取りももういいかな、とか思いつつもやはりやってしまうのが様式美おやくそく

 愉快なヤーカミはそれでも付き合ってくれるから有り難いよね。良い呑み仲間だ。


 ヤーカミを招き入れて私は女王様の前の席に座る。


「お疲れさま、シェルちゃん~」

「お疲れさまです、ルーナ様」

「お姉ちゃんで良いのよ?」

「ままま、まだ早いかなって」

「戦争終わったんだから良いのよ~、しても?」

「ななななな、何をですか! いや、言わなくて良いです!」


 うぶね~、と、ルーナ様は笑う。お父様とヨドミちゃんも笑っている。

 女王様たちも今回の戦いはかなり疲れたようだ。戦後処理が大変だったらしい。何せ皇帝も死んでしまったからね。直接殺したのはネリと言うことになった。


 ネリは可哀想かも知れないが全ての戦犯とされている。既に死んでいるのは有る意味で救いなのかも知れない。生きて罪を償えと言うのは、時としてとても残酷だ。

 ネリには幸いと言うか、家族はいなかったようだ。孤児として生まれ、貧しい生活の中で、体に欠損を負う子供たち。彼らを救うことを最初にネリは考えていたらしい。

 こういうお話は聞くつもりが無かったけど、自分で殺してしまったからかな、知りたいと思ってしまう。


 みんなを救いたいと考えたネリ、しかし周りの大人に味方はいなかった。ひたすら独学で学び、そしてその中で歪んでいったのだ。


 私がもっと早く、前世のどこかで聖人の道を歩めていたら、ひょっとしたらこんなことにならなかったのではないか。そう思ったら、後悔せずにはいられない。人嫌いのあまり引きこもってしまったあの時の自分を、ぶん殴りたい。そう、思っても終わったこと、仕方ないのにね。


 孤児たちをもっと早く救えていたら。ネリの話を聞いてあげられたら。そんなことを考えても、仕方がない。

 運命は、人のもの。だから、一生懸命生きないと駄目だし、人の話に耳を傾けないと駄目なんだ。そして起こった結果は変わらない。

 時間を巻き戻したりは、出来ないんだから。


 ルーナ様と色々戦後処理の話をしながら飲んでると二大公爵のヨドミちゃんとシンクお父様も話に入ってきた。三人で議論を始めたのでイセイスの家族の席に移動する。なんか気を使われたかな?


「シェルちゃん、お疲れさま~!」

「お母様も戦争に参加していたんですってね。お疲れさまです!」

「私はしんくんを守っただけだよ~!」

「仲良くて羨ましいです」

「シェルちゃんもルートくんに守られていたんでしょ~?」

「いっぱい守ってもらいました」

「うわー、のろけるねー、二人とも」

「羨ましい……」


 ララキお姉様とルチオくんは恋人探しから始めているらしい。応援するよ!

 次は魔王席に移る。


「ひどい戦いだったの~」

「相手が悪かったから仕方ないのじゃ。火竜以外からは守れば良いのじゃ」

「まあ火竜は相性が悪すぎるからな。活躍は出来なかったが仕方有るまい」


 暴力の塊みたいなこの三魔王でさえ相性が悪いと駄目なんだよね~。まあ他の敵なら負けそうに無いのは見せてもらったけど。ミドリちゃんはしっかり火竜とも戦えてたしね。あのブレスは見事だった。


「聖女様優しいの~」

「うむ、我らが森の聖女様じゃからな!」

「あんまり頼らないでやってくれ。こいつは仕事漬けだからな」


 本当に、何で仕事してしまうんだろうね? 私は休みでも動いていたい人だけど。これじゃ田舎に引き込もって農業する人を責められないよね。楽しければそれでいいかな。


 次は娘席へ移動だ。六人仲良く喋ってるな。


「しぇるー! 貴女ものみなさいよーっ!」

「ロコちゃん飲みすぎっ!」

「わたしのお酒をのめないって言うんですの~?」

「誰だリカちゃん酔わせたの!」

「すまき~」

「あ、うん、こんな日は飲まないとだね」

「シェル、シェルお母様、お肉、あーん、です」

「どうしたのイル! 今更路線変更なの? 可愛いけど!」

「揉むにゃーっ!」

「誰だロコたちに飲ませたの!」

「肉をくれてやろう!」

「ユサが肉をくれたーッ! 何かの病気かも?!」


 失礼な! と怒るユサは酔ってるようだ。誰だ獣人娘たちに飲ませたの。危ないので次の席に。


 なんでルートとアンセルとカナイは一まとめなの?


「なんか見事に三人で分かれてるね」

「シェルの恋人希望者の席だな。私もカナイ村の奇跡のように恋人になった可能性は有る。性別が違えば」

「元々はそう言うお話だったらしいですよ」

「ここに来てメタ発言やめい!」


 うん、まあそう言うお話だったらしい。ウルルが死んでカナイが凍結して、二人で蘇生薬を作る旅をする話だったとか。

 なんかこの空間ヤバイから小屋を出ていこう。うん。らうねーずと遊ぶんだ。


『らうねー』

『おつかれねー』

『あるらうねー!』

「おお、今日のらうねーずダンスは熱烈だな!」


 なんかほっこりする熱いらうねーずダンスを眺めつつ、ふと、空を見る。星が輝いてるな。……星の女神様も祝福してくれているらしい。

 美しい星空、私は暖かいココアを取り出して、既に涼しさを増してきた風で冷えた体を暖めるように、暖かいそれを口に運ぶ。


 そこに足を運んできたのは、あの人だ。






 次回、本編最終話。

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