表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クズ人間の俺が聖女と呼ばれている  作者: いかや☆きいろ
八章 決戦の炊き出し
145/152

帝都へ

 作戦会議回。

 ネリを捕らえるのが私たちの任務なのでこのまま引くことも出来ない。なので帝都を直接攻める事になった。


 んー、間に物凄い会議が有ったのでそこは説明せねばなるまい。

 女王陛下以下百人ほどの貴族が集まっての作戦会議だ。


「一旦は引くべきか?」

「そもそも戦争状態の相手に躊躇する必要は有るのか?」

「一気に皇都を落とすべきでは?」

「流石に皇都は難しいだろう」

「それに帝国を我が国の貴族だけで管理するのは危険であろう!」

「そうだ、優位な停戦条約を結び搾取する形を取るべきだ」

「人を虐げることは女神様の思惑に反するのでは?」

「いや、戦争なのだ。勝った方が言い分を通すのは当然だ」


 議論は伯爵級以下で紛糾する。そもそも下位の貴族の意見を汲み取れるのがサンテドールの強みだろう。しかし時折チラチラ私の方を見て発言する貴族がいる。

 聖女様ならどう思いますでしょうか? みたいな薄っぺらな感情が読み取れる。


 だから貴族は嫌いなんだよ。自分の派閥に聖女を引き込んだら駄目なんだよ。貴族なら法律くらい読めや。分かっててやってるのもこっちは分かってるぞ?


 上位貴族のお父様たちはそれらの意見を黙って聞いて、多分頭の中では凄い計算している。上位貴族なら当然だよね。国を守ることが第一なのは分かってるし、私は、お父様になら少しくらいなら利用されてもいい。家族だもんね。

 もちろんお父様もヨドミちゃんもひたすらに理想を追い求める思考と柔らかい思考を兼ね備えた凄い貴族なんだけど。政略は二人には勝てないよ? ただの詐欺師ですから。二人に恩も有るしね。いつも私の時間を作ってくれるんだ、この人たちは。


 戦争はありすちゃんとヨドミちゃん、お父様やお母様、私の炊き出しその他で超強化されているキンノ住民まで前線に出て戦っているので、はっきり言って楽勝コースらしい。

 そもそも辺境軍が私の援助で全体的に見ても二倍以上に強くなっているらしく。ここに来てるゲハマナさんの言うには彼のいる第四砦は四倍を超えてるらしい。まあ復帰したゲハマナさんが一軍の強さだもんね。

 この帝国との戦いは戦争になっていないと言うのが全体の感想だった。


 やはり何かおかしい。どうしてそちら方面、辺境にホムンクルスは出さなかったのか?

 ホムンクルスを出していればいくらか抑えられていたはず。まあ鍛え込まれた辺境軍はゲハマナさんを抜いても無敵の強さらしいけど。


 これは皇帝とネリの決裂が思ったより酷いのか、逆にそういう策かと考えねばならないと言う事だ。


 まず、皇帝とネリの決裂の場合を考えてみる。

 推測ではあるがネリが皇帝を「材料」にしようと目論んでいる可能性がある。

 もしそうなら当然皇帝はこれを受けないだろう。だが皇帝は「まだ雷神を相手にするつもりはない」とも言ってる。

 正直に言えばルートだけだと前回の火竜戦は怪しかった。もちろん私がいなければルートの戦略も変わった可能性は高い。ルートはダンジョン攻略者だ。はっきり言って冒険者最高峰に頭は柔らかいだろう。

 実際にあの戦いはルートは私と言う戦力を計算に入れて、かなり余裕を持って戦っていた。力押しで方を付けたように見えて計算は有ったんだよね。


 最初に私がああいった大物が現れればアタノールシューターを放つことは計算に入っていたし。ならルートの破壊力も百パーセント払う必要は無かっただろう。最後の一撃は決めなければ格好が付かないからあれでよかったけど、地震がしばらく起こったからね? やりすぎだからね?

 なんで味方の戦力が計算外なの?


 皇帝とネリの確執があの「皇帝の出現」の後で広がったケースも考えられる。あの時点ではギリギリ認められていたネリの研究を、その前後の無様な敗北で見限ったのは想像に難くない。ならば今はネリを差し出すことを皇帝は考えていてもおかしくはない。しかしなかなかネリを家臣の推しで降ろせず、サンテドールの侵攻とぶつかる事になる。


 確かにここで戦わないと帝国は滅亡の一途だ。だが、それを覆すにはネリの手を取るか、ネリをサンテドールに突き出すしかない。しかしそれはもう多くの貴族が選択できなくなっている。ネリの戦力は既に帝国の戦力に匹敵しているからだ。利用して砕け散るしかない。あるいはネリを前線に出して敗北させてその瞬間に降伏だ。……だが、ネリは逃げた。帝国はその一手で詰んでるように見える。どこまでがネリの思惑かは分からないが。


 ……まあここまでは推測だ。だが逆に策として考えると……。


 私は、あの皇帝がネリと仲良しこよしなどととても信じられない。ポッシさんのこともあるが、求婚されてほだされるなんて私は阿呆かとは思うんだが、あの時なら、皇帝は私を無理矢理に拐えられたんじゃないか?

 ルートの雷撃に一度は耐える竜を用意していたんだ。本当に私を見たかっただけなんじゃないだろうか。拐おうとしたら拐えたんじゃないだろうか?

 もちろん皇帝に気持ちが移ることは有り得ないけれど、あの時の彼の気持ちは本物だったのかも知れない。


 馬鹿なのかな。愛されたからその愛に答えなければならないなんて、そんなこと、あるわけない。でも、流石に助けられるなら助けたい。……無理なら見捨てるけど。


 策だとしたら皇帝は私を拐って逃げるのかな……? もう帝国はボロボロだし。後はネリが私を狙って全戦力を温存しているか、か。勝てるかな……。


 結局私たちの結論は一択になった。


 皇帝とネリは確執している。


 確執していないなら何故辺境にホムンクルスが送られなかったのか。その理由が無い。一般兵に被害が出れば皇帝は当然困るし、ネリも彼らを吸収出来ない。気分が悪い話だが。ネリは早く止めないと被害は更に広がるだろう。


 結論として、国家として、軍事力で帝国を蹂躙し、ホムンクルス兵は回避、私たちも同時に帝都へ侵攻、私たちがホムンクルス兵とネリを倒す!


 これが最終的な方針となった。






 次から最終決戦が始まります。かなり無慈悲です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ