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クズ人間の俺が聖女と呼ばれている  作者: いかや☆きいろ
一章 クズ人間は聖女と呼ばれる
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報告(ドルーシ伯爵視点)

 三話目です。

 我が領内では最近魔物が増えている。一地方を任せているナコイ男爵の領地では特にその傾向が顕著だ。恐らくダンジョンが発生したのではないかとの推測が私の耳にも入り始めた。

 実際魔物の森であるキンノ西の森では、トレントなどの魔物の動きが活発になり、それに伴い森の獣を率いる魔物も勢力を伸ばし始めているらしい。……実に頭の痛い問題だ。執事のノンキッソには冒険者を遣わせて原因を探るように言ってあるが、当のナコイ男爵の娘がちょうど冒険者をしているらしく、彼女たちをキンノ村に派遣したらしい。

 カモフラージュの意味も込めてキンノ村長には冒険者を集めるように指令書と資金を出した。


 だが彼女から上がってくる報告でダンジョン発生より気になる情報が上がってきてしまった。なんと、幻の存在とまで言われる薬草ラウネを三体も率い、森の支配者と言われるエルダードリアードを支配下に置く少女が居ると言うのだ。


 恐らくは何らかのスキルを女神様に与えられた存在だろう。早急に彼女を保護しなくてはなるまい。

 しかもこの報告では森から出現したグランドオーガウルフと言う魔物が統率する群れを彼女が中心になって殲滅したと言うではないか。


 グランドオーガウルフはオーガウルフと呼ばれる凶悪なウルフ系の魔物の長であり、成長したグランドオーガウルフは魔王と呼ばれる一地域を支配する魔物の王となる事もある、ランクで言えばAランク、中級ドラゴンに匹敵する存在である。

 キンノ村近郊には完全に森林型ダンジョンが発生したと見て間違いない。しかし、それよりも驚きなのがそれを倒した少女が居ると言うのだ。具体的に攻撃したのは彼女が支配しているエルダードリアードと冒険者たちらしいが……そんな魔物を従えているのが恐ろしいのだ。


 魔王に匹敵する魔物が命じられるまま子供を守ったとか、それは完全に支配下に置いていると言う事ではないか。放置は絶対に出来ないが、敵対するのは尚恐ろしい。


「旦那様、シーナ様から追加の報告です」

「読め」

「例の少女、シェル様は癒えぬはずの怪我を負った女性の欠損をポーション一つで修復し、人々に施しを与えている事から聖女と呼ばれ称えられるように……」

「まて、聖女だと?」

「そのようで。そして彼女は次の街、我らがナコイの街にも救済の手を差しのべるために旅立ったと。シーナ様は彼女からの依頼でキンノ村に残るため報告を終えると……」

「待て待て、ナコイに向かった? まさか国中で救済活動をするつもりか? それでは正に……」

「紛れもなく聖女様ですな、この爺、感動いたしました。直ちにお迎えに上がりたいくらいです」

「待て、待って、ちょっと息子呼んでくれ!」


 予想を遥かに上回る事態で完全に混乱してしまった。明らかに超常の力を振る舞う、紛れもない聖女が現れ、シーナは聖女に籠絡されてるし聖女はダンジョンのマスタークラスを従えてるのに放置して村を出てしまってるし施しに向かう? 街に? 間違いなく騒ぎになる。なんだこの聖女、物凄く危機意識が低い。いや、それほどの能力が有れば当然なのか? もしや国一つくらいは楽に滅ぼせますよ、とでも?

 不味すぎる。凄まじすぎてどう接して良いのか分からん。分からんが……。


「父上、お呼びでしょうか」

「ああ、この報告を読め」


 下策かも知れんが、もうこれくらいしか打つ手が有るまい。彼女を当家、ドルーシ伯爵家で聖女認定し息子を聖女の元に向かわせ、可能なら女王陛下との謁見まで持っていく。丸投げだ。

 何処かの地で丸投げはジャスティスとの声が響いたと言う話がある。確かあれは息子からの報告だったはず。この問題はまず息子に丸投げ。次に女王陛下に丸投げ。

 ……丸投げはジャスティス、その言葉を叫んだと言う男は神の使いかも知れんな。私の髪は薄くなるばかりだが。もう問題は増えないでくれ。丸ハゲはジャスティスではない。


「父上、この報告書ですが」

「何か不備が有ったか?」

「いえ、私の知り合いの冒険者がこのキンノ村に向かっておりまして」

「おおっ」


 丸投げ対象が増えたな。うむ、少し落ち着いて考えられそうだ。まあ息子を派遣するのは最早避けられぬ。女王陛下への進言が遅れれば国際問題にもなりかねん。報告書は出しておかねばな。


「それが、言いにくいのですが、ブラッドイーターのメンバーでして……」

「血塗れ兎か!」

「そのようです」


 血塗れ兎率いるブラッドイーターは僅か数ヵ月で森の魔物を食らい尽くし、一年でBランクまで駆け上がった化け物たちだ。一度奴隷に落とされ普通人種(コモンヒューマン)を激しく恨んでいるとも言われている三人の獣人のパーティーだ……。何と言う事……もし聖女様と接触すれば衆生を救うとされる聖女様は彼女たちには邪魔になるのではないか?

 不味い、不味すぎる。聖女様を失えば国が、国があっっ!


「……まあ大丈夫でしょう、彼女らはそれほど悪い娘たちでは有りません。貪欲では有りますが」


 もし万が一聖女様を傷付けたらどうする。何も犯罪行為はしていないらしいが、まともな噂は聞かん奴らだぞ。いや、聖女様ならBランク冒険者くらいなら撃滅出来るか?


「とにかく、お前は聖女様と合流し、可能なら女王陛下との謁見に持ち込むのだ。儂の名前ならば幾らでも使って構わん。彼女は当家が聖女認定する」

「畏まりました」

「旦那様、追加の報告が」

「なんだ!」

「その、聖女様にブラッドイーターのメンバーがすっかりなついて共にナコイに向かうようで」


 あ、駄目だこれ。髪がまた音を立てて抜けた。もう一刻でも早く息子を向かわせるしかない。ブラッドイーターは息子の子飼いのパーティーだったはずだ。こいつしか抑えられまい。


「頼んだぞ、アンセルよ……」

「畏まりました。でも多分大丈夫ですよ」

「何故分かる?」

「ブラッドイーターは皆良い子だし、彼女らがなついているなら聖女様も安心です」


 そんなの何の保証も無いも同然ではないか! あ、また髪が……。この呑気なところがある末っ子のアンセルで本当に大丈夫であろうか……。あ、またまた髪が……。このノイナ=ドルーシ、スローライフを所望する……。あと毛生え薬を聖女様に作ってもらいたい……。






 ヒーローは誰にするかまだ決まってなかったりします。ヒーロー候補は何人か出てくる予定です。

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