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クズ人間の俺が聖女と呼ばれている  作者: いかや☆きいろ
一章 クズ人間は聖女と呼ばれる
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クズ人間の俺が聖女と呼ばれても

 二話目です。

 さて、旅するとなれば色々準備が必要だろう。まずはクシワク婆様にポーション瓶をいくつか売ってもらう。どうせ、いずれは使うのだから二百買おう。金はクシワクに預けてるのがまだ余ってる……つかポーションが売れて増えてる。使っても使ってもクシワクがこっちに入れてくるんだよね、買い取りだとか言って。売れてないのにポーションの代金を払ってくれているようだ。なんか売るアテが有るなら良いんだけどさ。無理してなきゃ良いんだが。


 と、ポーション瓶は手に入ったので例の欠損回復ポーションに挑戦しようと思う。幾つか作っておけば仲間を救えるかも知れないしな。

 この世界の回復魔法やアイテムはほとんどゼロから人を復活出来る物も有るらしい。ほぼ不死の人間が実現できるとか。……不死とかしんどそうだな。色々な人生を楽しめた方が良さそうだよな。俺が二回も記憶残して復活してるから思うのかも知れないけど。


 まずやるのは欠損回復ポーションのレシピを見つけるのと、炊き出しの依頼だな。

 レシピの方は積んでた本からあっさり見つかった。


 炊き出しは広場に集まってる女冒険者さんたちに頼んでみたら一週間ならオーケーと言ってくれた。帰ってきたら金貨一枚ってことで、前金で銀貨十枚出した。一応プラムはこの村に残すので逃げられる心配は無いだろう。そんな人たちでもないし。俺に人を見る目が無かったら営業なんか成立しないしな。金より冒険が好きそうなんだよなこの人たち。彼女たちのリーダーはシーナ=ナコイと言う人で、男爵令嬢らしい。もし逃げたら男爵家で返済すると証書まで書いてくれた。まあどこまで通用するか分からない証書は保険でしかないし、実際に返済されるかは分からないけど。ナコイ領はこれから行く町の名前らしい。


 さて、炊き出しの前に欠損回復ポーション作るか。材料は……多いな。世界水にリゲイ草、ボーン草、這い草、眠り草……って、これラウネーズが最初に持ってきた草か! もう材料揃ってた。

 早速ラウネーズに草を磨り潰してもらう。世界精霊水も任せた。プラムにメイン調合の調整を頼みつつ魔力を注ぐ。速い。そもそもラウネーズ、慣れてきたら本当に作業速いな! やはり植物界はマッハの世界なのか……。ううむ。尻に根が生えてたりしないらしい。


 あんまりに早かったから眠り薬とか煙玉とか色々要らん物も作ってみた。必要そうなのは魔力ポーションだな。……俺は自分がフラグ建築士なのを忘れたのか……? またこのアイテムたちを使うはめになったらどうするんだ?

 そう思いつつ浄化薬上級を作る俺は阿呆で間違いない。でもこれは作りたかったし。これが有れば男の時の両親は死なずに済んだからな……。


 少し陰鬱な気分になりながらもヤーカミ食料品店に向かう。今日は肉の加工品を使うか。ベーコンの分厚いのとレタスとトマトをもらう。薫製は正義だよな。

 パンはいつもの硬いパンだ。柔らかいのは銀貨五枚もするし在庫少ない。そもそも保存が悪いから一部は硬くなってるんだよな、結局。量が揃えられなきゃ炊き出しに使えないし。

 それにしても新鮮な野菜本気で高い。一つ銀貨一枚以上かかる。小さなトマトが一つで銀貨一枚とかほんと信じられん。


 パンを薄く切ってフライパンで炙っていく。ベーコンも厚目に切ってじんわり焼いていく。

 ステーキとかの肉物って焼いてる時に細かくひっくり返したら駄目みたいに言われてたけど最近は引っくり返すのが良いと言われてる。余熱で火が入るから柔らかくジューシーに仕上がるんだよな。火は弱火だ。ただ弱火だから時間は掛かる。ハンバーグは崩れるからやめといた方がいい。愛人はぜんぜん崩さずにデカいハンバーグ何回も引っくり返してたけどあれは例外だろ。真似しちゃいかん。

 ハンバーグに自信がないならミニハンバーグにすると良いよ、って言ってたな。確かに一口かじるならミニでもおんなじだし口に入れてしまえば肉汁溢れないんだからな。口の中がジューシーになるだけだ。ハンバーグに自信が無いなら繋ぎ無し、包丁で玉ねぎと肉をミンチ、包丁だけで丸めて、で、ミニハンバーグが良いらしい。繋ぎは味がボケるんだよな。

 ミニならそう崩れないしすぐに火が通るからひっくり返すのも一から三回で良いそうだ。香辛料はオールスパイスと胡椒。ハンバーグは塩も大事だって。ハンバーグはそのうち作ろう。


 うーん、ベーコン美味そう。目玉焼きも付けるかな?

 焼いたパンにレタスとトマトとベーコンを乗せて、更に目玉焼きもお好みで!

 もう一つはパンにガーリックバターで炒めた小さく切った鳥股肉を乗せて。バジルもかけるか。野菜物も欲しいな。野菜たっぷりでスープも作っておくか。和風出汁と塩胡椒でシンプルな野菜スープ。具はキャベツ、ジャガイモ、ニンジン、玉ねぎ、ベーコンの余りだ。うん、美味いな。

 和風出汁だけど実際これでチーズリゾットとか作っても美味いんだよな。いつか作ろう。米探さないとな。


 皆に混じって食べてるとイルたちとカナイが丁度揃っていたので隣街までの護衛を頼むことにした。だがカナイは乗り気で無さそうだ。


「左腕が傷む」

「相変わらず簡潔だがそれだけだと中二病っぽいな。よし、お姉さんが特別に治してやろう」


 早速欠損回復ポーションの出番だぜ。


「あー、ガキ共、私は一週間ほど出掛けるけどその間冒険者さんたちが炊き出ししてくれるからな~」


 ポーションを用意しながらそう言うとガキ共が嫌だ嫌だと泣き始めた。おいやめろ、出ていきづらくなるだろ。卑怯だが仕方ないか。


「お前らみたいに困ってる子が他の街にも居るんだよ。その子たちを助けに行くんだ。よし、有った。ほれ、カナイ、手を出せ。左腕」


 欠損回復ポーションをカナイのボロボロの古傷になっている部分に垂らすとカナイの左腕の傷は一瞬で引いていく。このポーションも威力高杉くんじゃねえか。やべえ、ますます存在を狙われる事になりそう……。なんで俺はもう少し慎重に動けんかね!


 しかし周りの反応は俺が思ってるのとは違った。まず炊き出しを手伝っていた宿屋の娘のウルルが「シェルお姉様は聖女様だったんだわ……」とか涙目で言い出した。おいやめろ。

 それに反応したガキ共まで聖女様、聖女様と騒ぎ出す。冒険者もそれに乗っかった。


 やめろ、聖女コールはやめろ、俺はそんな良いもんじゃねえっ! ただの子供好きの人嫌いだ! いや、なんか人嫌い治ってるけど、この呑気な村のせいだからな! あと回復もポーションだ! 誰でも出来るんだ!


 そう言ったのだがなんか爺さん婆さんが拝み始める始末。……本格的にヤバくなってないか……? 確かにポーション作ったの俺だけどほとんどラウネーズとプラムの作品なんだが……。


 しかし一度言ったことを曲げるのも嫌いだ。早いうちにこっそり出ていこう。なんかイルレコユサもうるうるしてるし。カナイまで涙目だよ。


 やめろ、クズ人間の俺が聖女と呼ばれても反応に困る!






 ついに聖女と呼ばれます。

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