可愛い妹(ララキ=イセイス視点)
二話更新の二話目です。ララキお姉様は好きなキャラですね。
公爵家令嬢と言ってもこの国の公爵家令嬢の立場は他のどんな国ともはっきりと違っている。未来の女王となる可能性が有るからだ。
女王国であるサンテドールでは女性の高位貴族は大切な存在だ。まあ女王の血を残すためには上位貴族の女性の血は出来るだけその中で回す必要があるのだ。私やお母様にはその血が強いのだが、どうやら初代女王となられた聖女様はハーフリングだったんじゃないか、そう推測されるくらい王族と上位貴族の中にハーフリングが生まれる。ルート様も先祖返りらしいのでその可能性は高い。
私も低身長はコンプレックスではあるが、お母様がハーフリングなので仕方無い。お母様は不幸せには見えないので私にもそのうち良い恋が出来るかも知れない。
私の場合血は残さないと駄目だし、なのに高位貴族と付き合うのも権力闘争の問題を生みかねず、八方塞がりだ。
なので私は最近出来た可愛い妹の恋を見て楽しむと言うことを覚えてしまった。これがとても初々しくて可愛らしいのだ。
二人とも初恋らしくたどたどしいところも有るのだけれど大胆なところもある。この間は二人のキスを見せてくれた。うわー、凄い、あつーいキスしてるな。まあ唇を合わせるだけのキスだけど。ディープなのはまだ無理らしい。
低身長のルート様とそこそこ大きいシェルちゃんだけど、大人と子供のキスではなく年相応の恋人同士のキスだった。可愛いのにエロいと言う謎シーンだわ。
こんなの見てて楽しくない訳がない。でもなんだか私は行き遅れそうだ。
普段から私は国の政務に携わったりしている。学生でも成人で有るからには早々にこの分野を学ばなければならないのだ。女王陛下は私に地位を譲って隠居するつもりが有るらしいが……私はごめんである。王族なんてストレスしかない。籠の鳥だし仕事も多いし考えることも多い。長くやると女性でも禿げるらしく、うちはお父様も昔禿げてたので心配だ。だからか代替わりが激しいんだね、禿げだけに。あ、シェルちゃんが笑った。
シェルちゃんってこう言う駄洒落とか好きだよね。いつも鋭い突っ込みしてるのに。そっちはけっこう切れが良いから面白いんだけど、本人が気合いを入れたギャグはつまらない事が多い。不思議な子だ。あれだ、突っ込み体質って奴かしら?
何の話だっけ? そうそう、うちは女王の入れ替わりが激しいって話だった。なので私は女王教育も受けている。お母様は今からは無理と言ってるし、お父様とラブラブする時間を削られたくないーとか駄々をこねて、政務にはほとんど手を出さない。まあお母様はハーフリング百パーセントなのでのんびりやっていても年を取らないからね。私もハーフだしずっと若くいられるのかな? そうなら良いのだけれど。ハーフリングハーフ……ハーフハーフだね。あ、またシェルちゃん受けてるよ。安いね。あ、へこんだ。可愛いわ、本当に、私の妹は。
時々上位貴族の令嬢と言う、人の顔を見るのが仕事みたいな私にも読めないくらい感情を隠すけど、普段は本当に子供のように感情を現す。何と言うか、聖女様よね。
彼女は子供に優しく、子供を愛している、その姿はまさに聖女。
彼女が突然現れた事は調べがついている。彼女に聞いたら警戒されるだろうが、彼女は間違いなく女神様が遣わせた聖女なのだ。彼女の故郷はと聞くとキンノ町と答えるけれど、もちろん彼女はそこに突然現れたのは町の人の証言から間違いない。彼女はそこで発生した。それは女神様の力でしか有り得ない。
普段はこの世界に全く干渉しない女神様だが、時々こう言う奇跡を起こし、聖女を遣わせるのだ。
前回の聖女様は八十年ほど前に現れたが現在は亡くなられている。聖女様と言っても不死身では無い。守らなければならない。それは国の義務でも有るが、それよりも。
私は私としてこの可愛い妹を守りたい。彼女はとてもストレスに弱いようで、貴族の中に入ると疲れた顔をしている事が多いのだ。そんな時にほとんど表情を無くしている。これは心が読めない。でも疲れてるのだけは分かるのよね。
多分彼女はこう言った貴族とのやり取りも慣れてる。なら逆にもういい、やめたいと思って疲れているのも頷ける。私だってこんな厄介な世界に長くは居たくない。
彼女の疲れを癒すためにお茶会に誘ってみた。メンバーは私とお母様と彼女の友達三人だけ。庭の東屋に行くとそれだけでメイドは全ての準備を整えてくれる。うちのメイドは優秀でまるで最初から全ての予定を聞いていたと言わんばかりの働きを見せる。シェルちゃんがあいえええーとか可愛らしい? 驚き方をしている。うん、その驚き方はどうかと思うよ?
時々シェルちゃんっておじさんみたいな事がある。彼女がおじさんから転生したなんて話がどこからか出てきたけど、あながち間違ってないのかも。今の可愛らしさ、聖女らしさからは想像もつかないわね。
六人で丸テーブルを囲む。うーん、一人は何故かいつも簀巻き。何なのこの簀巻き。シュールだわ。つつくと可愛らしい声ですまきーとか喋る。うん、そこは可愛い。見た目は簀巻き。
それよりシェルちゃんを癒してあげないとね。
「良い庭でしょ、シェルちゃん」
「本当ですね。うわあ、夏なのに薔薇があんなに咲いてる。こっちの桜みたいな花はなんだろ?」
「百日紅かな。綺麗だね」
この庭の植物たちは錬金術で管理されていて、常に何かの花が咲いている。薔薇なんかはオールシーズン咲いてる。植物が好きなシェルちゃんだから楽しめているみたいだ。時々花と語り合ってて、彼女のスキルを知らなければ可愛らしい乙女と見えるだろう。事実可愛らしいのだけど。
どうやら疲れた顔も癒されたようだ。いつもの感情の読みやすい顔になった。この顔落ち着くのよね。
可愛い私の妹には、いつまでもその天使の笑顔で居て欲しい。
明日も二話更新します。
この人のお話を読んでみたい、とか有りましたら教えてください。今書いてる本編が終わったら後日談的なものを書くつもりです。




