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クズ人間の俺が聖女と呼ばれている  作者: いかや☆きいろ
一章 クズ人間は聖女と呼ばれる
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クズ人間、再会する

すみません、寝てました。

 ガキ共もなかなかたくさん魚を釣った。クーラーもどきの中はどれも魚と俺が出した氷で一杯だ。釣れなくて泣いた子もいるが全員にここまで歩いた分のお金を、銀貨一枚と少ないが渡してやる。魚も一匹銀貨二枚で買ってやる。まあ半分は俺に付き合ったようなもんだしな。帰ったら美味いもん食うぞ! そう言ってやれば泣いたガキ共もすぐ笑った。


 だがこう言う気分の良い時に限って嫌な事は有るもんだ。プラムから警告が飛ぶ。


『魔物だぞ主』

「うお、ついに戦闘かよっ!」


 この世界はただでさえ魔物が多い。それがこの村では更に最近は増えているそうだ。冒険者が増えていたのも予防の意味で村長が呼んでいたものらしい。そんな中ノコノコ遠出をしたのは失敗だったかも知れない。

 だが準備がある程度出来ているから出てきたんだ。プラムにガキ共を任せて俺が戦闘に挑む。……やるっきゃねえ。

 出てきたのは大量の狼だった。見えてるだけでも二十匹はいそうだ。しかもなんか奥にでっかいのが一匹控えている。……ヤバそう。


「おらあっ!」


 氷を作りぶつけるが、石をぶつけるくらいの威力だ。ちょっとこれで倒すのは厳しいかも……魔力を増やして更に威力を上げる。当たりどころが良ければ倒せるが狼も黙って殺られてくれない。何度か攻撃を受けて結界を発動させる。その度に魔力を消費する。きっつい! きっついからこれ!

 プラムやラウネーズも隙を見て草で相手を束縛したりしてくれている。


『やるねー!』

『たおすねー!』

『やるらうねー!』


 なんか気合いが入りすぎてセリフが変わってるぞ! やるのかヤクル!

 しかし何だってこんないっぱいいるんだ? 最近魔物が増えてるのとなんか関係有るのか?

 火の方を使う。毛に引火してヤバい。ギャンギャン叫んで転げ回る狼たち。なんか奥に居る奴が凄い殺気を放ってくる。焦げる狼の臭いもヤバい! 獣臭い!

 だけどなんとかなりそうか? プラムにガキ共を逃がしてもらおう。魚も持っていってもらおう。狼に魚を投げる? テロリストには屈しません! 狼だけど! ガキ共が楽しみにしてるんだ、やるわけにはいかん!


 少し強めに火に魔力を込める。森が燃えると困るが少し森からは距離が有るからな。


「森の木たち、下がってくれ!」


 森に声をかけて少し離れてもらう。この世界の植物界はトロいと生きていられないぜ! とばかりに森が退き、大きな狼さえビックリしている。木の何割か狼に攻撃しているな。どうやら言葉が通じる俺を味方と判断してくれたらしい。火は使えないな。足止めしてもらってるうちに逃げるか!


 なんとか転げながら逃げるが、幾らかは狼が抜けてくる。が、草に足を取られて転ける。植物たちにはなんか恩返ししないとな。

 村に駆け込んだ子供の中でも体のでかい脚の速い子たちが冒険者を呼んでくれた。なんか炊き出しに参加してた人たちも居るな。反撃だ。ガキ共は全員村に逃げ込んだので氷の指輪に全力の半分くらいの感覚で魔力を込めて壁を作り、その上から矢や魔法を冒険者たちに放ってもらう。作戦は上手く行って雑魚狼はどんどん逃げていく。


 狼狩りしないと駄目かも知れん。金は有るんだから冒険者に頼めばいいよな。魚も冒険者に頼んだ方が良いかも知れないが、それだとガキ共に仕事をやれないのがな。護衛を任せるとかするか?


 やっぱり知識無いとキツいな。なんか仕事を作れたら良いんだが。ラウネーズの仕事をガキ共に任せるか?


 氷の壁は雑魚狼は防げるが、あのでかいのはどうだろう。上からとか脇から飛び出して来そうだが。

 フラグを立ててしまうのが俺の悪い癖だな。デカ狼は氷を飛び越え、冒険者たちに突っ込んだ。


「ラウネーズ!」

『わかったねー!』

『いくねー!』

『あるらうねー!』


 うちには売れ残ったポーションの貯まったカメが有るからそれをラウネーズに取ってきてもらう。冒険者の中心に狼が落ちてきたせいで混戦になっている。逃げていた普通の狼も氷を迂回して来やがる。


 しかしこっちもガキ共を逃がしたプラムが戻ってきた。茨がデカ狼を囲み、縛り付ける。そこに剣を持った冒険者が一斉に突っ込んだ。


 かっこいいなおい。俺もあんな風に戦えたらな……。身体強化してるんだけどぜんぜん動けない。元々がショボすぎる。主役にはなれそうにないわ。今の主役は冒険者たちだ。


 ボス狼は冒険者たちが倒し、雑魚狼を狩りに冒険者たちが森に向かう。何人かは怪我人を避難させてる。俺もカメを持って帰ってきたラウネーズを引き連れて避難所に駆け込んだ。


 このカメのポーション、効果高いからな。どんどん怪我人が回復していく。けっこう大怪我してる人がほとんど全快してビックリしている。


 だが傷が残る人も居るみたいだ。前に飯を食いに来たエルフ仲間のカナイも左腕に酷い傷が残っちまった。古傷を治したり腕を生やしたりする薬はまだ作ったことが無い。帰ったらチャレンジしてみるか。


 回復した冒険者たちがお礼を言ってくるが、炊き出しをするので来てくれと告げてガキ共に合流する。


 ガキ共は俺を見つけると泣きながら駆け寄ってきた。デカいのまで泣いてる。おいおい、俺は子供の涙には弱いんだ、やめてくれ。俺も顔をグショグショにしながら魚をさばいていく。冒険者が何人か手伝ってくれる。魚さばくの上手いな。やっぱり冒険者は外で魚や魔物をさばいて食ってるらしい。


 兎獣人のユサみたいな人がいる。似た人が居るもんだな。彼女の方がだいぶ大きいけど。……彼女の横では犬獣人と猫獣人の娘が魚をさばいている……。あれ?


「イル、レコ、ユサ……?」


 俺が声をかけると三人はビックリする。そりゃそうだ。俺は女になってるし顔がぜんぜん違うし分かるわけない……。


「シェルっっ!」

「あ、おお」


 なんでわかんだよ。






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