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クズ人間の俺が聖女と呼ばれている  作者: いかや☆きいろ
プロローグ クズ人間は二度死ぬ
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クズ人間、山賊のアジトでスローライフを目指す

 私の好きな精神的BL作品です。よろしくお願いします。

 俺は人間のクズだ。


 前世地球の日本では営業なんかやっていたが、あの仕事はほぼ詐欺だったと今でも思っている。金は儲かった。子供三人と妻と愛人を養えるくらいには。


 俺は自分が嫌いだし、俺の妻、この世界では星の女神様だった俺の妻には、クズ人間と呼ばれた事があるくらいクズなんだ。


 さっきも言ったように俺は子供三人も妻との間に作ったのに浮気していたのだ。だが、妻が俺をクズ人間と言った理由は浮気していたからではなく、愛人に結婚している事実を伝えなかったからだった。

 なんて可哀想な事をするの、このクズ人間が。そう、叱られた。反論の余地は無い。当たり前だ。愛人になってくれた彼女には今でも申し訳なく思っている。

 女神様に聞いた話では彼女は俺の後を追って自殺したらしい。本当に、俺はクズ人間だ。


 そんなクズのくせに俺は、人付き合いが嫌で今世では絶賛引きこもった。冒険者なんてとんでもない。モンスター怖い。

 愛人が料理が得意だった影響で俺も料理を少し覚えていたので、料理人にでもなろうとレストランに勤めてみたりもしたのだが、俺は延々ジャガイモやニンジンの皮を剥くだけしか仕事を与えられなかった。

 せめて賄いくらい作らせて貰えれば知識チートも振る舞えたかも知れないのだが……。まあ人嫌いを拗らせてしまったのが悪い。まともに返事も出来なくなっていたからな。


 なので俺は早々に人生を投げた。今世の俺は見た目も山賊っぽいので、山にこもったりしたら間違えて騎士に討伐されたりしそうだが、人と触れあいたくなかったのだ。


 この世界には魔法があるし簡単な水を出す魔法や初級の浄化魔法なら俺も使える。一人で引きこもっていても大丈夫だ。飯は狩りでもすれば良いだろう。種芋なんかも買えるだけ買った。


「山の中でスローライフ、こんなのも良いさ」


 独り言を呟きつつ山に入る。死んだらまた妻に叱られそうだが、今世では女の影も無い。死んだら謝って慰めてもらおう。


 山の中で適当な場所を見つける。元は山賊のアジトだったような場所だ。物見櫓が有るし、洞窟内は整えられている。主は居ないようだ。奥には血糊が残っているので討伐されたのだろう。

 気持ちが悪いが、逆にこんなところには人が来ないだろう。食器なども残されているしここで暮らそう。


 部屋を少しずつ浄化して回る。血糊も綺麗になる。浄化魔法さまさまだな。

 部屋が片付いたらそこで疲れきってしまって、そのまま横になった。





 翌朝、飯は干し肉で済ませて畑を作る事にした。元々山賊の作った畑が有ったようなのでそこを整えて種芋を植えよう。確か芋って連作障害が有るんだよな。


 前世の通勤時に暇をもて余して異世界に転生して領主になるような話を携帯で読んだことが有るが、あの人たち記憶力も知識もスゴすぎるよな。俺にはとても無理だ。

 とりあえず連作しないで腐葉土でも運んできて色々作物を試してみよう。なんだか楽しくなってきたな。


 山賊の残した鍬で畑を耕していると、何やら大声で叫ぶ人がいる。一人や二人じゃない、相当な人数だ。どうやら商人が山賊に襲われているらしい。ここ以外にも山賊住んでるのかよ。山賊多すぎだろ。


 怖いもの見たさで覗いてみると、どうやら馬で逃げる商人を山賊たちが追いかけて行ったようだ。しめた、馬車が残ってる。

 どうやら山賊も人数が少なかったようで見張りを残すような事もしていない。漁夫の利をいただいてしまおう。


 しかし、馬車の積み荷は、人間の子供だった。三人もいる。……養えるはずは無いのだが、そもそも俺は人は嫌いだが子供は好きだ。そうじゃなければ三人も作らないしな。今世でも子供が欲しかったんだ。


 まあ見捨てるのも気持ち悪いし、他に金目の物も無さそうだ。三人を繋ぐ鎖を何とか壊してやり、つうか鍵も無いので鎖を繋いでる木の馬車の車体の方をハンマーで叩き壊してさっさと逃げる事にした。古くなってて何とか壊せたのは運が良かった。つかこんなぼろ馬車しか持てない潰れかけの商人だから奴隷なんかに手を出したんだろうな。


 三人は酷く痩せていた。一人は猫の獣人の女の子、一人は犬の獣人の女の子、一人は兎の獣人の女の子だ。全員女の子なのはそう言う趣味のお貴族様にあてがおうとしたんだろうな。クズだ。俺が言えた立場でも無いか。


 三人を拠点まで連れ帰り、水を出してやる。魔法の水はそのままだと消えてなくなるが、体内に入ると体内の魔力によって水として保たれる。なので水分補給には役立つのだ。体外に出るとまた無くなる。


「お前さんたち、名前は有るのか?」

「イル」

「レコ」

「ユサ」


 犬のイル、猫のレコ、兎のユサか。分かりやすいな。ちなみに俺の今の名前はシェルと言う。貝の獣人、ではない。普通人種(コモンヒューマン)だ。

 三人分の堅いパンを渡してやり、俺は狩りに出ることにした。弓と山刀しか無いが俺に狩猟は出来るだろうか? 前世の妻は自分で猟銃を持っていて狩りをしていたが、思えば本当にタフな女だったな。今でも勝てる気がしない。弓を二、三回引いてみる。矢も放ってみるがやはり難しい。落とし穴でも掘るか?

 悩んでいるとユサが弓を俺から奪い取った。どうやら使えるらしい。兎のくせに肉食系かよ。狩りはユサに任せることにした。丸投げはジャスティス。


 ユサは何故か兎を狩ってきた。共食いなのか? 人間が猿を食う感じなのか? まあ食えるから狩ってきたんだろうけど狼狽するよな、普通に。自分の耳と同じような耳をつかんで持って帰って来たユサはなんかサイコに見えた。手早く解体してやがるし。

 あ、水で血を流せって? 分かった分かった。


 ……まあ魚や鶏をさばくのは妻がやってたから見慣れてるけど。あいつなら兎もさばけるんだろうな。猪や鹿もさばいてたみたいだし。猪の解体は流石に他所でやってたみたいだが。

 うーん、あいつ連れてきてたら楽勝だったのにな。この世界だと女神様だしバチが当たるか。


 だがユサたちのお陰で俺たちは当分は食うに困る事は無さそうだ。こんなチビたちに頼りきりなのは申し訳なく思うが、何か他の事で頑張ろう。






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