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回想~シルトとヘルト~

 人物紹介


 シルト=デア:主人公

 ヘルト=アマデウス:幼馴染み


 突然だが、俺には一人の幼なじみがいる。


 残念ながら、幼なじみと言っても可愛い女の子ではない。

 普通に男だ。

 生まれる前から家が近所で親同士仲が良く。

 同時期に生まれてからはどちらかの家で2人を面倒し、もう片方が農作業や副業をするという家族ぐるみの付き合い。

 それは幼少期まで続き、

 それからは色々あって少年時代を王立学院で共に過ごし、

 20歳になり成人となった今日まで腐れ縁は続いていた。


 だけど、大事な事なのでハッキリ言っておく。


 俺ことシルト=デアは、

 幼なじみであるヘルト=アマデウスの事が、


 大の苦手であり、大、大、大嫌っいである。


 ……まあ、面と向かって言った事はないけどな。


 ※


 俺がヘルトを嫌いなのには当然理由がある。

 そりゃあ、そうだろう。

 兄弟同然に共に育った相手を普通は嫌ったりしない。

 だが、残念な事にヘルトは普通ではなかった。


 ヘルトは生まれつき物覚えが早かった。


 どれくらい早いかというと、俺がハイハイしている頃にはすでに歩き始めており、俺が親の名前を言えるようになった頃には既に大人に混じって会話していた。


 早いというよりは異常。


 しかし、狭い農村では目の前の出来事が現実であり、ヘルトは良く出来た子供として見られ、俺は常に下に見られ育てられた。

 だが、まだその時は特に気にならなかった。

 俺にとってもそれが普通だったからだ。


 初めてヘルトを異常だと思ったのは物心つき始めた5歳の時。


 お伽話を聞かされた翌日の事だった。

 俺は父に要らない板をもらい、

 母に布を板に貼り付けてもらい、

 庭で盾士の真似事をしていた。

 そこに遊びに来たヘルトが俺を見て、話しかけてきたのだ。


『おい、シル。ボロッチイ盾を手にして何してんだ?』 


『ぼろっちくない! たてだもん!』


『はぁ? そんなのが盾?』


『うん、たて!』


『てか、盾なんてもってどうしたんだ?』


『おとぎばなしのたてしになるの!』


 今、思い返せば、我ながら大分たどたどしく幼かったと思う。

 そんな俺に対して、


『ふふ。あはは。アッハッハ!』


 と、声を出して笑い出したのだ。

 その笑い方は子供から見ても薄気味悪く、話に聞くゴブリンみたいだと子供ながら俺は思った。

 そして、ヘルトは笑いながら、独り言を大声で言い出したのだ。


『まさか、まさかこんな身近に盾士になろうとするやつがいるとは! なんたる天恵! こんな古びた農村に転生とか舐めてんじゃねぇぞ!って思ってたが、こういうことか!? 勇者パーティーで1番探し辛いと思ってた盾士の卵が幼なじみにいるとはな! 傑作だ! 物語りの主人公の幼なじみが勇者パーティーの盾士! 物語りにしたら上出来だ! これまで農村スタートとか馬鹿馬鹿し過ぎて舐めプしてたが、いよいよ本気出してやるか!!』


 そのヘルトの独白に、

 内容を当時は半分も分からなかったけど、

 ヘルトだと思っていた者が全くの別者に見えて、

 俺は恐怖と共に異常とはこういう事だと、

 幼きながらに実感した。


『シル喜べ! お前を選ばれし転生者で勇者である俺のパーティーに入れてやる! 今後、鍛えてやるから楽しみにしろよ!』


『う、うん。わかった』


 初めて目にした異常を前に恐怖し、思わず頷いてしまった当時の俺を思いっ切り殴ってやりたい。


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