陳腐な指
この指が
あなたを綴るのは
憂鬱です
雨 雨 雨
雨が降っている
濡れた空気は
人の匂いを消し
私をひとりにしました
アイセナイのは
楽でいて
辛いことです
ぬるい珈琲が
胃を抜け落ちる音
雨音より静かで
イキタイとか
シニタイとか
よく聞こえない
目を
開けても
閉じても
雨 雨 雨
雨が降っている
窓のそば
水滴の底へ
沈んでゆき
皮膚から
あなたが
湯気立つのに
この指は
使い古した言葉で
あなたを綴る
アイされる
幸せも
ウトまれる
痛みも
誰が
いったい
信じるのでしょう
触れる代わりに
言葉で注いだ
私という存在
音を立て
揺れる水溜りに
浮かんでいます
雨 雨 雨
雨が降っている
口はつくろえても
この指は
嘘をつけない
ふける夜に
言葉は呑まれ
隠れる
湿った風は
あなたの気配を
纏っているのに
私の言葉で
温めたいのに
この指
雨 雨 雨
雨が滴っている