悪い夢
「あなたー、ミラー?ご飯よー!降りてらっしゃーい」
いつも通りの明るい母親の声
「いつもすまんなー」
と笑いながら話す父
「いいのよこのくらい!」
父親と母親はいつも通り笑顔で話していた
「ママ―!!今日のごはんなに?!」
ドタドタと階段を下りる
ガチャとドアを勢いよく開けた
「ねぇ!ママ―!ま...ま.....?」
中は明かりも、笑い声も話し声も母親の姿もなかった。
あるのは、お酒の瓶に缶、コワレタ父親らしきものと震えているぼく
「ぁ.....あ.......」
声が上手く出ない、呼吸の仕方も忘れた。ねぇ、どうやるんだっけ、呼吸って、声出すのって
冷や汗がだらだらと滝のように流れてくる。止まらない
チラっと窓をみると隙間が空いていた、そこには黒い靄がかかっていた。
その靄は窓からぼくを覗き笑っていた、薄汚く、でもその笑みは見たことがあるものだった
ボクは....ボクは........ボクは....ボクは.......
ワルクナイワルクナイワルクナイワルクナイワルクナイワルクナイワルクナイワルクナイ
ワルクナイワルクナイワルクナイワルクナイワルクナイワルクナイワルクナイワルクナイ
ボクは悪くないんだ!!!
「はぁ...はぁ......」
ぼくの右手にコツンッと硬いものがあたった
それは立てかけてあったらしく床にたたきつけられスゴイ音がした
それはぼくが愛用していた白いバットだったが半分以上が美しい赤に染まっていた
ボクは笑った
何がおかしいのかはわからないがボクは笑っていた
ガチャっと後ろのドアが開く
そこにいたのは――――――――――。
「-ラ―――――ろ」
何処かで聞いたことがある声
「ミラ―――お―ろ」
――あと5分ー...。
「ミラ!!!起きろ!」
と大きな声とドスッという音とともにお腹に圧力がかかった
「る”、る”き”起きるから!」
「おっ?!やっとおきたー!」
ニシシと笑った
このルキは小さいころから一緒にいる親友だ
思い出したくないが、父親が死んでいた時にすぐ来たのがこのルキだった
ルキはいつも青色の服が好きでいつも着ているのに、この日は紫だった、びっくりしたなぁ
「ねぇミラー、なんかすっごーくうなされていたよ?大丈夫??」
それにいつも白い顔がいつもよーり白いぞーと顔をのぞいてきた
ルキとぼくは一緒に住んでいる、あの日からずっと。
いつもいじめられていたぼく、でもいつも守ってくれたのはこのルキ
ルキにはいつも感謝していた
でもあの日の話をするといつも抱き寄せて肩を震わせている
泣いているのか、こんな僕のためにとずっと思っていた
朝昼晩とバイトして帰ってくるのは10時ごろ
そしてルキと一緒にご飯を食べて、寝るのが日課だった
でも今日は、ルキはいない、仕事が長引いてるらしい。
夜の仕事、、、何してるんだっけ?まぁいいか
寝るといつも同じ夢を見る
そう、あの日の夢だ。
いつもいつもいつもいつもあの日の夢を見る
嫌だと思っても見てしまう、そう今も
いつの間にか昔の家のリビングにいた
いつもは明るい、楽しい雰囲気から始まるのに今日は何故かもう暗くなっていた
考えていたら
ガチャ
と扉が開く。
そこにいたのは、ルキだった。
「ミラを手に入れるミラを手に入れるミラを手に入れるミラを手に入れるミラを手に入れるミラをミラをミラをミラヲミラヲミラヲミラヲミラヲ」
とずっとぼくの名前を繰り返していた
目には濁りきっていた
そこでボクは思った
青にアカを足したら?
本当に泣いていたのか?もしかしてワラッテタノ?
ボクは転がっていたぼくが愛用していたバットを持った
ルキらしき汚物を
これは悪い夢だ
起きたらルキはいるはず
いつも起こすはずのルキが今日は来なかった
ベットをみると赤く染まったルキ
あぁ、これは悪い夢だな
あれ?どっちが現実?
あれ?なんでなんでなんでなんでなんでなんで?
ルキがルキが
ねぇ起きてよ、ねぇってば!!
アハハハと聞こえるボクの笑い声
あぁそうか、もうぼくの夢は終わったんだね、
そうこれからはボクの夢だ