表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ほんわか短編集

夕暮れ時と、蝉の声

作者: あさり

 夕暮れ時。地面に伸びる影がふたつ。


 夏も終わりに近付き、蝉も最後の役目とばかりに盛大に鳴く。

 辺りに人気(ひとけ)は無く、その道を歩いているのは二人だけだった。

 そのすぐ(そば)を、涼しい風が通りすぎる。その風が少女の長く伸びた髪を揺らしていく。


「ねぇ」


 先に声を発したのは、少女であった。

 けれど少女は少年の方には顔を向けず、ずっとうつむいたままだ。

「引っ越しちゃってもさ、たまには遊びに来てよ」

「うん」


 蝉の声がうるさい為、少女は少しだけ大きな声で話す。

「引っ越してもさ、永遠に会えないわけじゃないよね」

「うん」

「ねぇ、会いに来てくれるよね? 会いに来てよ」

 少しの間が空いた後、少年は答えた。

「うん」


 蝉の声が辺りに響く。

 よりいっそう、大きく。

 儚い命の限り、鳴く。


 夕焼けが照らす道を、二人は並んで歩いていた。

 その後ろで蝉の啼き声だけが、いつまでもその場に取り残されていた。




 夕暮れ時。地面に伸びる影は、まだふたつ。

三人称で書く小説は、初めて書きました。

切ない感じを出すように心がけたのですが、いかがだったでしょうか。

私的には、最後の一文がお気に入りだったりします。

楽しんでいただけたのであれば、幸いです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ