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或る世界の勇者と魔王  作者: 古鷹かなりあ
第三章:佐藤真桜奪還篇
68/70

第二十八話「親心」

 044



 放課後。

 担任、志寿子が挨拶をした瞬間、奏は自分の一つ前の席に座っている転校してきたばかりの双月の服を思い切り引っ張ると彼の座っている椅子が大きく傾いて、そのまま崩れ落ちた。

 一瞬、クラス中の視線が集まるが今はそんなことなんてどうでもいい奏にとって周囲の目は差ほど気に留めるものではない。それを理解しているのか、はたまた興味がないのか、何も変化することは無く教室からは次々と人が消えていった。

 しばらくして、起き上って頭を押さえている双月が座っている奏の前に姿を現す。


「痛いな、奏くん」

「……というか、何でお前がいる」

「それは僕だからだよ」


 取りあえず腹立たしいので立ち上がったばかりの双月の脛を力強く蹴る。すると嬉しそうに頬を赤くし、口角を上げると双月は暑そうにしていた学ランのボタンを外し始めた。

 いなくなる前に伊御の席だった場所に座った双月を見て、奏は自然と頭を抱えていた。


「はあ……」

「まあ、僕としては別に神代学園でなくても良かったんだけど色々と事情がねぇ」

「どうでもいい」

「でも、僕はまた奏くんと同じ学校、同じクラスになれて僕は嬉しいよ」


 発言が気持ち悪いので座っている双月が組んでいた足の脛を強く蹴った。

 色々と事情が複雑になった奏にとって、彼の到来は夏休み前日を有意義に終わらせることが出来ないと象徴しているようなものだった。

 完全的に問題児。

 全ての問題に置いて常に中心にいた、空閑双月は奏から見ても異質だった。


「もしかして、転校生くんと一条くんって知り合いなのかしら?」


 声を掛けられて、はっ、と顔を上げると目の前には千春と陽子が面白そうな物を見る表情で見下ろしているように見えて仕方が無かった。


「空閑双月。僕と奏くんは中学時代に同じ学校だったんだよ」

「そうなの、私は山瀬千春。一条くんと同じクラスで…………、分類(カテゴリー)はなにかしら?」

「そこはやはり友人、ではないでしょうか? 千春さん」

「そう、そうね。一条くんとは友人よ、よろしくね。空閑くん」

「よろしく、千春ちゃん」


 初対面で出会ったばかりのクラスメイトを名前で呼び、ちゃん付けで呼ぶ彼の神経は恐らく奏の比ではない。鉄の心臓で出来ていて、多少のことくらいでは挫けないだろう。

 特に気にすることもなく、千春は双月から差し伸べられた手を握って握手を交わした。


「私は能登陽子です。宜しくお願いします、空閑さん」

「よろしく、陽子ちゃん」

「私のことは苗字で呼んで下さい」

「よろしく、陽子ちゃん」


 ニコニコ、と笑っている陽子だが隣にいた千春が少しだけ彼女から距離を取り始めた。奏はここで少し察すると椅子の両側を持って、双月と陽子から距離を取り始めた。

 素早く奏の横に移動を終えた千春が視線を合わし続けている二人を見て小声で喋り出した。


「ああ、陽子の奴。珍しく醒めているわね」

「醒めているって、どういう意味だ?」

「まあ、陽子にも譲れない所があるのよ。例えば、誰かの家にお泊りをしても、お風呂には二時間くらい入るし、買ったプリンを食べられると口聞いてくれないし」

「いや、前者はともかく、後者は完全にお前が悪い」

「名前書いてなかったから、食べて良いと思ったのよ」

「それは能登が不機嫌になるのも無理はねぇな」


 それから、しばらくの間「私のことは苗字で呼んで下さい」「よろしく、陽子ちゃん」と、二人の間にはその言葉しか行き交いしなかった。

 最後には双月の方が先に挫けてしまい、諦めて彼女の要望を聞くこととなった。


「それじゃあ、よろしく。能登ちゃん」

「はい。宜しくお願いします、空閑さん」

「……陽子の奴、結局一度も折れなかったわね」

「ある意味、誰よりも根の強い人だな。再認識しないといけないみたいだな、能登のこと」


 げっそり、と疲れた表情を垣間見る双月は机の上に突っ伏せた。そこはいい気味だと思ってみていた。そして、千春と陽子がいなくなって入れ替わりのようにまた人がやってくる。

 今度は幾分かよい会話になることだろう。


「それにしても驚いたよ。あの時に助けてくれた人が転校してくるなんて」

「ああ、そうだな。あたしも殴った奴が転校してくるなんて夢にも見なかったよ」

「渚と長門か。いや、俺も何が何だか判ってないんだよ」

「え? 奏くんの知り合いなのに知らなかったんですか?」

「ああ、何も聞かされてなかったよ。――ほら、双月。二人に挨拶くらいしろよ」


 突っ伏している双月を余所に椅子を思いっきり蹴り上げて反動で彼を起き上がらせた。

 起き上った双月は渚と京子を見て知った顔と判ると先ほどの様子が嘘のように元気になる。気分の上下に激しい双月の言動はいまいち特徴がつかめない。


「君達はあの時にいた子達だね。確か名前は……、渚ちゃんと京子ちゃ――」


 全てを言い終わる前に目の前に居る京子に顔面を殴られた双月は窓枠に後頭部をぶつけた。それを見て慌てだす渚を余所にノーダメージの京子が睨み付けた。


「あたしをちゃん付けするな」

「そのくらいで殴っちゃ駄目だよ、京子ちゃん!」

「いてて……、今日は豪く災難だね。僕の星座占い、今日は最下位だったかな?」

「水瓶座、今日は五位だぞ」

「うわ、中途半端すぎて何もリアクションが取れないよ」


 悪友が全力で殴られているにも関わらず、ノーリアクションで今日の占いを携帯で確認した奏は無表情で双月の返答を一掃する。

 もう全てが嫌になりそうな双月にとって星座占いの結果は、よっぽどショックだったようで腫れている頬を摩りながら、徐々にテンションが下がり始めていった。

 暗い、どんよりとした雰囲気が醸し出す。


「本当に大丈夫なんですか?」

「大丈夫、平気、平気。こいつ、女の子に殴られると興奮する性質(たち)だから」

「ちょっと奏くん。ほぼ初対面の女の子になんつう暴露しちゃっているのさ! あ、奏くんが言ったこともちろん、彼なりのジョークだから気にしないで」


 目がきょろきょろして、テンパり始めた双月を見て正面にいた京子が瞬時に距離を取った。なんとなく何処か察した様子の京子は渚の肩を掴んでその場から去ろうとする。


「渚、こいつとは関わらない方が賢明だぞ」

「そんなこと言っちゃ駄目だよ、京子ちゃん。空閑くんは奏くんの友達なんだから、友達の友達は友達。もう、空閑くんは私達の友達だよ」


 そう言った渚はポケットから、ハンカチを取り出して京子達を置いて廊下へと出ていった。唖然とした三人を余所に、しばらくすると濡れたハンカチを握りしめて教室に戻ってくる。

 それを双月の腫れた頬に当てると、双月の手を掴み、それを抑えるように指示を仰いだ。


「ごめんね、悪気はないんだけど京子ちゃん、口よりも手が先に出ちゃう人だから」

「ばっ! そ、それじゃあ、全部あたしが悪いみたいじゃねぇかよ」

「今回の件については京子ちゃんが全面的に悪いからね」


 眼鏡委員長、渚がE組の不良生徒である京子にお説教をしている場面は度々、目撃する。

 ただ今回に関しては珍しく本気で渚が怒っている様子に、京子は頭を俯かせたまま、反論をすることはしないまま、五分くらい説教が続き、ようやく話の終わりが見えてきた。


「渚ちゃん、もういいから。その辺にしておいて」


 最後には双月が怒られている京子に同情するくらい、渚の怒りは鬼の角がうっすらと見えるくらいまで怒号を吐き散らしていた。

 被害者の双月に言われたから、これ以上、説教を続ける理由もないので渚は頬を膨らませて誰が見ても不機嫌な様子を醸しだしながら、鞄を手に取って京子と一緒に教室をでた。


「あ、そうだ。奏くん」


 教室を出た所で所要を思い出した渚が振り返った。若干、肩身の狭い京子はすぐさま、渚の横に移動をすると鞄を握りしめて姿勢のいい立ち方で待った。


「私達、先に駅に行っています。凄く遅れるようなら、メールか電話をください」

「ああ、わかった。出来るだけ早く終わらせて貰おう様に善処するよ」

「それではまた後で」


 侍女のようにご主人の数歩後ろについていく京子を見ながら、失笑する奏を余所に教室から出ていった二人を見て双月がハンカチを押さえつけながら、ぽーっとしていた。

 関わると面倒だと判りきっているので奏はあえて何も言わず、携帯に目を向けた。


「はあ……」


 溜息をこぼした。

 無意味のため息が奏の神経を苛立たせて打っていたメールが誤字だらけになる。


「渚ちゃんって彼氏いるのかな?」


 そんな双月の発言を右から左に流していった奏はメールを打ち終えて、送信したことを確認すると鞄を手に取って椅子から、立ち上がる。


「多分、いないと思うけど止めといたほうが良いぞ。渚には最強の守護神がいるからな」


 無論、長門京子のことである。

 そして、奏が立ち上がったことを見た双月が慌てて鞄を掴んで奏の後を付いて行った。

 教室の電気を消して、E組のクラスには誰も居なくなる。


「それで君はこれから、何処に行くんだい?」

「ああ、ちょっと野暮用があって今から理事長室に行く」

「そうなんだ。で、僕はどうすればいいの?」

「お前は……、そうだな。時間でも潰していてくれよ。終わったら、連絡するから」


 そうして教室棟と教員棟に分かれた道で奏と双月は一旦、別れた。


 これからが今日の本題。

 今から会うのは佐藤真桜の母親代理。戸籍上は姪っ子と登録されている、神代学園理事長。


 佐藤暁美との会談だ。



 045



 と、まあ。

 意気込んで向かった奏ではあったが理事長室に前にいた女性秘書に呼びとめられて扉の前で待つことに。午前で終わりというだけあって廊下には誰も通らず、静かな沈黙が二人の間に流れていった。

 あまりに静かすぎる空間にいたたまれなくなった奏が声を掛けようとする。だが、奏が口を開いて何か喋ろうとした途端、横に立っていた女性秘書がいち早く、声を上げる。


「一条奏、さん」

「は、はい……」

「一条さん。もしかして七つ上にお姉さん、いたりしますか?」


 唐突に会話のキャッチボールが発生して、動揺する奏ではあったが持ちかえすと女性秘書が聞いてきた質問に対して、思わず目を丸くした。


「姉を知っているんですか?」

「やっぱり、一条さんはあの人の弟さんなんですね」

「ええ、まあ。もしかして」

「はい。私、君のお姉さんと同級生だったんです。大変、親しくさせて戴きました」

「そうなんですか」


 女性秘書さんが嬉しそうに微笑んだ。


「それでお姉さんは今、どちらに?」

「いや、最近は家にいないみたいですけど。なんだか、出張とか多いみたいで。最後に見たのは春休み、くらいだったかな……。まあ、充実はしているみたいです」

「そうですか。しばらく連絡が付かなかったので心配していたんですよ」


 その後、しばらくの間、奏の姉に関連する話題で盛り上がると理事長室から入出を許可する声が聞こえ、慌てるように女性秘書が口元を抑えた。

 秘書と来客、と言う関係を忘れていたらしく、すぐさま、業務に戻った。


「すいません」

「いえ、別に構いませんよ」

「お姉さんによろしくとお伝えください」


 女性秘書はそう呟くと理事長室の扉を開けて奏を中に向かい入れる。ゆっくりと緊張気味に部屋の中へ入って行った奏だったが、すぐに理事長が目の前に見えると緊張は増す。


 そこにいたのは威風堂々と厳格とした雰囲気を携え、体長は二メートルを超える屈強すぎる女――――ではなく、何処にでもいる見た目が少し実年齢よりも若く見える女性だった。

 理事長室にありがちな大きな机に肘を付き、こちらを見ている理事長が少し綻んだ。


「君が一条奏くん、であっているのかな?」


 一瞬、名を確認する間の後に奏は小さく首を頷いた。

 すると理事長――佐藤暁美は先ほどまでの恐々とした表情ではなく優しい笑顔に変わった。

 そして、なにを思ったのか突然、立ち上がった暁美はそのままの勢いで奏の元に駆け寄ると大切な我が子を抱きしめるように奏をぎゅっ、と抱きしめた。

 あまりに突然の行為に奏の思考は停止してしまう。


「真桜を……、助けてくれて、ありがとう」


 それは大事にしていた娘を救ってくれた恩人に対する、当然のこと。ではあるのだが傍から見てみればいい歳をした女性が男子高校生に抱き付いている奇妙な絵図らになっている。

 そんな二人を引き剥がしたのは他でもない、暁美の秘書にして奏の姉の友人である。


「おほん……。人目が無い所ですが少しは事情をしてください、暁美さん」

「ああ、ごめんなさい。つい感極まって」

「いえ、別に俺は構いませんけど」


 恥ずかしそうにして奏の身体から離れた暁美を見て一応、大丈夫だと旨は伝えた。隣にいる女性秘書が少し厳格そうな目付きで暁美を見て、がみがみと注意をし始める。

 立場的には理事長の方が圧倒的に上なのだが、この二人の関係性はそうではないらしい。


「まあ、まあ。一条くんも構わないって言っているんだし、(かんざし)ちゃんも怒りすぎだってば」

「一条さんは客人なんですから、もう少しちゃんとしてください。それと私のことは神谷(かみたに)と呼んで下さいと何度も言っています」

「えー、いいじゃん。簪、私は好きだけどな」

「それでも、です。次からはしっかりと苗字で声を掛けてください。でないと無視します」

「酷い! 簪ちゃん、それは酷過ぎるよ!」


 何と言えばいいのだろうか、奏にもよく理解できない所なのだが。この二人の会話を聞いている限り、二人が二十歳を超えているとは到底思えない会話内容だった。


「あ、肝心の奏くんの存在、すっかり忘れていたわ」


 ぽつーん、と理事長室の真ん中あたりで立っていた奏がようやく注目視された。

 女子トークをしていた口調とは少し変わって、少し真面目になった雰囲気を醸し出た暁美は理事長室にある来客用のテーブルとソファーの方に奏を案内させる。

 ようやく、腰を降ろした奏と対面で暁美が座ると話をようやく切り出した。


「先ほども言ったことけど、改めてもう一度、言わせて貰うわ。真桜を救ってくれて本当にありがとう」


 熱を帯びた言葉が奏の耳に轟いた。

 これが子を愛した親の言葉なのだろうと感銘を受ける。誰かを助けたことなんてなかった、だから今、ここで改めて誰かを救って良かったと再認してしまっていた。

 そんな、二人の間にしんみりとした空気が漂っている中、いきなり目の前にいた暁美が音を立てて掌を叩くと唖然とする奏を余所に話を再開させる。


「まあ、辛気臭くなりそうな話はこれくらいにして。君を呼んだのは別件なのよ」

「ああ、はい……」


 てっきり、この話だと思っていた奏は身を一歩引いた状態でソファーに腰掛け直す。暁美は何を思ったのか、理事長の机に向かっていくと引き出しから何かを取り出して戻ってくる。

 そして、大きな来客用のテーブルに二枚のチケットを奏に向けて置いた。


「こ、これは……?」

「これは二ヶ月前に行われた、新入生対抗トーナメントの優勝賞品よ。海外ペアチケット、どう使うかは奏くん。君次第だわ」


 優勝賞品を受け取らない訳にもいかず、テーブルから取り上げた二枚のチケットを鞄の中にしまい込む。と、何もなくなったテーブルに秘書の神谷簪(かみたにかんざし)が淹れたお茶が置かれた。


「どうぞ、お茶です」

「あ、ありがとうございます」


 夏仕様なのか、熱いお茶ではなく冷えたガラスのコップに緑茶が注ぎ込まれていた。真桜の母親代行と言う立場の人と話すだけあって、いつも以上に喉が渇く。

 置かれたコップに手を伸ばして、喉を鳴らしながら、緑茶を飲み始めた。

 ニタニタ、とした表情で笑っている暁美に目が留まるが緊張しているせいか、たどたどしくなっている。そんな奏を面白おかしく見ていた暁美が一言、コップを置き、呟いた。



「奏くん。君、真桜のこと好きでしょ?」



 その瞬間、半分以上飲み干していたコップの中身が一気に逆流をし始める。霧になるくらい散乱をしたお茶は奏の口から放出されていった。

 改めて第三者から、それも彼女の母親代理に言われたことによって顔の温度は上がる一方。

 更に奏はたどたどしくなってしまっていた。


「そ、そんにゃこと……」

「大丈夫よ。真桜にはまだ言ってないから」

「いや、そういうことじゃなくて……」


 慌てる奏を余所に暁美が微笑ましいような感じで静かに笑った。


「真桜の口から初めて友達の話が出て、好きな子の話題が出て、私、凄く嬉しかったのよ。ああ、真桜をあの時に助けて良かったって」


 奏は真桜の過去を知らない。

 ただ、なんとなくではあるが佐藤暁美が彼女の本当の母親ではないことは察していた。

 しかし、そんな言葉は口には出さずに胸の中に留めて置く。そして、静かに頷いた。


「……あれ、真桜の好きな子の話題が出てって所で驚かないのかしら?」


 会話の中のリアクションに不備があったのか、暁美が首を傾げた。

 奏はすぐさま、手を横に振ると、


「真桜が、あいつが俺のことを好きだって言うのは知っていますから」

「それなら両想いじゃない! なんで告白しないのよ。もしかして、奏くん。ヘタレ?」


 ぐいっ! と机を乗り上げて顔を近づけてくる暁美。そして、それを引き戻す簪の表情が酷く激怒しているのは恐らく机に乗ったからだろう。

 決して奏がヘタレだからではない。無言の目力が集中砲火されるが、多分、気のせいだ。


「話がそれだけなら、俺、この後に行くところがあるので失礼します」

「ちょ、ちょっと待ってよ。奏くん!」


 逃げ出すような早口で告げると真っ赤になっている顔を隠した。

 立ち上がって鞄を手に取ると簪が先回りして扉を開いていたので一歩、廊下に飛び出した。扉が閉まる直前に振り返った奏は、手前にいる彼女の母親代理に想いの旨を伝える。

 耳を触れば火傷しそうで、顔は恐らく赤く燃え滾っていることだろう。


「今日の夜、楽しみにしていてください。きっと、良い話が聞けると思いますよ」


 覚悟を決めて早数週間。

 これが最初で最後にしてもらった、後押しだ。

 勇気を振り絞って、奏はみんなの待っている場所に駆け出して行った。


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