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最後の温もりが暖かい

たった四話のお話に付き合ってくださり、ありがとうございました!

このお話はこれで完結ですが、このお話の番外編を別の小説の一括りとしてあげたいと思います。

そちらもどうぞ!

「聞いたでしょ?

そいつから色々と。

あたし達は復讐してる。」


「零華・・・?」


「・・・俺達が、そいつの言う、空浮人だ。

まぁ、『サレイスト』や『セリア』なんて命名は、近頃つけられた物だがな。」


あたし達はそこにいる奴の先祖に殺された子孫なの。

憎いのは当たり前でしょ?」


「二人が?

・・・そりゃ、柳碼の先祖がやった事はやっちゃいけない事だと思う。

人殺しなんて、いつの世にもあっちゃいけない。

けど、復讐なんてしたって、その人たちが戻ってくるわけじゃない。」


「・・・そうね。

正論よ。

でも一つ、教えといてあげる。

人って、そう簡単に物事を割り切れるものじゃないわ。」



・・・この二人はそんなに憎んでいるのだろうか。

柳碼達の事を。

顔も知らない先祖達を考えるが故に。

この二人から見たらきっと、柳碼は憎き者でしかないんだ。

けどそれなら、この二人の瞳に宿る悲しい炎は何なのだろうと思う。

もっとも、それがなんでも止めるけど。

だって、断言したもの。

止めるって!



「・・・こいつは渡せない。」


「なんで、」


「だって、殺しちゃうんでしょ?

私は目の前で人が死ぬのを見れる人間ではないし、友人を人殺しにするようなバカでもないつもり。

私はそんな事、して欲しくない。

復讐はきっと、復讐を生むと思うから。」


「・・・それも正論ね。」


「でもな、正論だけじゃ止められない。」


「止めるよ。

だって二人は、私にとって大切な友達だもん。」


「・・・相変わらず、頑固だな。それも鈴だからか。

なら、お前も殺して後ろのやつも殺すまで。」


「筬峩!?」



零華が筬峩に向かって叫んだ。

その後の記憶は私には、ない。

私が覚えているのは、傷だらけの柳碼の横で突然現れた二人を下から見上げながら話していた事と、筬峩が私を殺そうとして刀を振り上げてきた事。

そして最後に。

私を庇うように傷だらけの身体で前に出た柳碼の姿と、それを助けにきたであろう、神社の人の声だけだった。



私が目覚めたのはそれから一週間だった頃。

目を開いた瞬間飛び込んできたのは、柳碼の顔。

どうやら私は、友人の事がかなりのショックだったらしく、目覚めるのが遅くなってしまった為、ずっと柳碼の実家でお世話になっていたとか。

そんな事があったおかげか、こいつの両親と私の両親は仲良くなっていた。

それをきっかけに、私も柳碼とそれなりに仲が縮まり、共に空浮人の事を調べた。

柳碼が持っている情報だけでは物足りなかったからだ。

結局、収穫はなかったが、微力ながらもあの二人の力になりたいと出来るだけ探りまくった。

そんな二人はあの出来事以来、学校には来ていない。

それでも当てもなく二人を探し続けたのは、何かの確証を得たかったから。

二人は本気で殺そうとはしていなかったと、分かってしまったから。

だって柳碼の傷を治したのはあの二人って言うじゃない。

やっぱり私が見た瞳の奥の炎は見間違いじゃなかったと、確信した一ヶ月後の昼の事。

・・・今ならなんでも話せそうな気がするのに、二人は十数年間、姿を現してはくれない。


私は高校卒業後、結婚したの。

その後、愛しい人の子供を産んで、今まで育ててきた。

あんな事があったから、結構肝が据わって、少々の事じゃ驚かなくなったわ。

すぐ物事に感傷されやすいと心配してた零華と筬峩には、今は胸を張って話せるよ。



「お母さん!手が止まってるよ?」


「あらほんと。

蜂蜜がこぼれちゃった。」


「お父さんから教わったんだよね。

蜂蜜をいれる絶妙なタイミングがマフィンを美味しくする鍵だって。」


「・・・そういや、教わったわね。」



本当に、櫂が作るお菓子は美味しすぎる。

学校初日に交わした約束を覚えていて、半ば適当に見てたけど、本当に美味しかった。

櫂が作るマフィン。

でも・・・、あの夢の意味って・・・?



「ただいま。」


「お父さんだ!」


「父さん、お帰り。」


「お帰り、櫂。」


「ただいま。

そうだった。

入ってくれ。」


「はい!」


「子供さん?」


「それだけじゃない。

紹介したい人がいる。」


「はい?」


「お邪魔するわよ、鈴。」


「久しぶりだな。」


「・・・零華・・・!筬峩!!」


「何泣いてるのよ!」



・・・ああ、今日はなんていい日なんだろう。

友人にも会えて、友人の可愛い子供達にも会えた。

きっと私が見たあの夢は、このことを教えるためのものだったのかもしれない。

そう考えると私の頬をつた涙はしばらく止まってくれなかったが、そんな私を暖かく見守ってくれていたのは、やっぱり最愛の友人達だった。

あの時、得たかった何かの確証。

それはこの人達のぬくもりだったのだろう。

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