空浮人(サレイスト)と神使(セリア)
あの後、私が声をかけた為に柳碼が重傷を負ってしまった為、その柳碼を抱えて、こいつの家に向かった。
救急車を呼んだ方がいいと思ったけど、空浮人が作った傷は柳碼の家の神社の者にしか治せないらしい。
だからちょっと・・・でもないか。
かなり重いこいつを背負って走っているのだ。
そーいや、柳碼に重傷を負わせた(といっても、きっかけを作ったのは私だけど。)空中に浮いてた奴は、何時の間にか消えてた。
何でだろ。
兎も角、柳碼の家に辿り着く間、色々な事を教えてもらった。
あの空中に浮いていた人間。あれは『サレイスト』と言うらしい。
漢字で書くと『空浮人』。
なんか、命名はよく分からないけど、取り敢えずは空に浮く人が全般だと思っておけばいいと思う。
だってそのまんまなんだもん。
空浮人ね。
でも人って空に浮くもんじゃないでしょ。
だいたい飛ぶって言うでしょ。
そんな事を言ったら掠れた声で柳碼がそこか!!って突っ込んできたのは置いといて。
あれかな。
雲とか、『ふわふわ浮く』って言うからかな。
にしても、なんか納得いかない。
さっき突っ込んできた柳碼はもう呆れてるよ。
しかも私が聞いてない間に、空浮人の話ししてるし。
「えっと、その空浮人は普通の人間じゃないのね?」
「空を、飛んでる時点で・・・、普通じゃない、けどな。」
「確かにね。
それで?どうしてそんな人間があなたと戦ってたわけ?」
「・・・空浮人達は、俺達一族を憎んでる、からだ。」
「憎む?なんで。」
「・・・遥か昔、古の時代に、俺達の先祖は空浮人達を・・・。」
「何?」
「・・・殺してきた。」
「・・・は?!」
「だから、今、復讐してるんだ。」
え、それ、どゆこと?
頭の整理が落ちつかない。
少しずつ整理して行こう。
柳碼の話によると空浮人は古き時代より、神として拝められてきたらしい。
けれど神と言うのは、その地域に一人でいい。
そんな人々の勝手により、神の使いと言われてきた神使、柳碼の先祖達は神として相応しい器を選び、その他の空浮人達を殺して行った。
神使は空浮人と同じような力を持っている。
成る程。あの光は受け継がれた力か。
で、話を元に戻すけど、選ばれた空浮人もいつかは寿命で死んでしまう。
その後を引き継いで行かなければならない。
しかもその血は純血を求められている。
だから選ばれた空浮人の親戚だけ残していくという、ずる賢いこともしていたそうだ。
だが、みすみす殺されてしまうのを空浮人達が待つ訳が無い。
逃げた者もいれば、選ばれた者の側にいる事で殺されるのを免れた者たちもいた。
その者達が今になって、復讐しているという。
・・・そんなのって、
「人間差別じゃない!」
「確かに、差別だな。
でも高瀬。
お前も『普通の人間ではない』と言っただろ?」
「!・・・それは、そうだけど。」
「・・・高瀬、お前がそう思うのは無理、ねぇ。
先祖達は自分勝手な理由で、そういう手段をとった。
自分勝手に神にしたてあげ、自分勝手に、その神の仲間を殺した。
その行いは、いつの世でも許される、ものじゃない。」
「・・・許されないよ。」
「・・・ただ言えるのは、その時代にも、傍観者がいたってことだ。
誰も止めず、ただそれを見てた。
お前なら、どうする?」
「・・・絶対、絶対止める。
けど、それはその行いに限ってじゃない。
その復讐の連鎖、止めるよ。
柳碼は身を守る為に、戦って。
止めるって言いながら、矛盾、してるけど。」
「ありがとな。
・・・悪かった。
こんな事、今日初めて会った、お前に聞いて・・・っ、くっ・・・!」
「!傷がっ!!」
苦痛に顔を歪めた柳碼。
傷が痛むのを我慢してこの事を話してくれた。
言いたくなかっただろうに。
・・・早く行かなければ、死んでしまう!
「待ってて!今すぐ連れてくか
「そいつを離せ。鈴。」え?」
「せい、が・・・?」
私の前に現れたのは、殺意に溢れた筬峩と零華だった。