ケーキ屋の前で会ったイケメンくん
お話的にはグダグダですが、どうか楽しんで行ってください。
お菓子の作り方に関してはスルーでお願いします(笑)
詳しくないもので。
「お母さん!
今日のおやつは何
?」
「んー?
今日はね、マフィンを作るの。」
「本当?!
早く早くっ!」
「はいはい。
もう、どうしてこんなに好きなのかしら。」
「母さんが好きだからでしょ?
私も手伝うよ。」
「本当?
じゃあ、バターとグラニュー糖と卵、後は薄力粉とベーキングパウダーに牛乳を用意して。」
「チョコもいれていいかな?」
「ええ。
冷蔵庫に入ってるから、とってね。」
「量は本通りでいい?」
「いいわよ。
今日はそれで作りましょう。」
今日は七月三十日の午後一時。
私は子供達のおやつを作ろうとしていた。
今日のおやつはマフィン。
本当はクッキーにするつもりだったけどやめたことには理由がある。
マフィンが下の子の大好物だということもあるけれど、今日の朝、懐かしい夢を見たからでもあった。
そう、それはもう十数年前の夢。
私が高校三年生の春、出会った無愛想な彼との出会いであった。
その日は高校一学期目の始業式。
私は通学路の途中にある、ケーキ屋さんの前にいた。
そこのケーキ屋さんの厨房は私が歩く道に面している上に、ガラス張りだったため、中がよく見えていた。
まだ朝の八時前だというのにせっせとケーキを作る女性と男性。
恐らく夫婦だと思う。
私が高校に通う今までの二年間の観察のはて、そう思った。
息がピッタリあってるし、笑顔で喋ってたり、たまに子供がそこに入って行ったりするからだ。
勿論違う可能性も否定はできないけど、そんな気がする。
そしてここのお二方が作るマフィンは美味しい。
私の大好物だ。
そんな私がその光景に見入っている中、後ろで人の足音が止まった。
そして私の隣に立ち、同じようにケーキ屋さんを見ているようだ。いつもならここに止まる人はいない。
不思議に思った私はケーキ屋さんに向けていた目を隣に向けた。制服はうちの高校と一緒。
顔は整ってるから、女に見えなくもない。
所謂美形だ。
少しイラっとするが、そこはあえて無視しておこう。
髪は茶髪。
長さはそれなりにあるから、後ろで縛っている。
けれどこんな人、私は知らない。
誰だろう。
私の頭にはクエスチョンマークが浮かぶばかりだ。
しばらく頭で考えていたが、該当する人物はいない。
仕方が無いから、声をかけることにした。
「・・・あなた、誰?」
「・・・・・・。」
はい、無視。
まるで聞こえてないかのように私の言葉を無視するとは。
その後二、三回声をかけたけど返事をしてくれることはなく、諦めた私は自分の高校の方へと足を向け、歩き始めた。
のに、足は全く進んでおらず、周りの景色も変わってはいない。
その時初めて、私の肩に手が乗っていることに気づいた。
その手の主が分かったため、また後ろを向き、声をかける。
「何ですか?」
「・・・お前の高校、何処だ。」
「・・・はい?
あなた、知らないの?
その制服、うちのでしょ。」
「知ってるけど、迷った。」
「・・・待って。
まずあなた誰。」
「・・・俺は柳碼櫂。
今日からお前がいる学校に転校してきた。」
「ゆう、ばかい?・・・ばか?」
「は?ばかじゃねえよ。
ゆ・う・ば、か・い、だ!」
「柳碼ね。
なら最初に。
お前ってのやめて。」
「いきなりだな。
でも無理だ。」
「何が『でも』だ。
・・・お前って呼ばれるの、なんか気に食わない。」
「・・・だったらお前の名前は?」
「だからお前じゃないって。
人の話聞いてる?」
「名前。」
「はいはい。
私は高瀬鈴。」
「高瀬、と呼べばいいか?」
「まぁ、お前よりは断然マシ。」
「で、学校は?」
「口で説明するのはめんどくさいし、どうせなら一緒に行きましょ。」
「そうだな。
・・・もう一つ聞いていいか?」
「何?」
「ここからどれくらいでつくんだ?」
「十分位。
なんで?」
「・・・もう、八時二十分、過ぎてる。」
「はい?!
さっさと言ってよ!それ!!」
初日から遅刻!!
あれから三十分も立ってたなんて驚きよ!!
いつもは歩いて行く道を駆け足で通り過ぎて行く。
基本走ることが嫌いな私は遅れないように注意していたけど、こいつと話してた所為でかなり遅れてしまった。
走っているのだが、あまり速く無いため、間に合うかどうか分からない。
半ば諦めていると右手が急に引っ張られ、走る速度が速くなって行く。
柳碼が前に出て私の手を引っ張っていた。
「道、教えてくれよ。
分かんねぇんだから。
それと、」
「?」
「マフィンの美味しい作り方、教えてやろうか?
そこらの本に出ているやつよりはうまい。」
「・・・はぁ。」
学校初日からほんと、最悪ー。
どっかの映画とか漫画じゃないんだから、やめてよね。
こんな事あるなんて思っても見なかったんだから。
私がそんなことをグルグルと頭で考えているうちに、どうやら学校についていたようです。