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6 ヘンリエッタ12歳(4)

6 ヘンリエッタ12歳


それから俄然やる気を出した私は毎日勉強に勤しんだ。

まぁ周りから心配され寝ていなさいと言われたけど、あの夢を見てから調子がよくなった。

それで「皇子をこの目で見るまでは日本に帰れない!」と意気込んだはいいものの…


マナー、ダンス、歴史、言語の勉強はなかなか難しい。

言語に関してはなぜか他の国の言葉も喋れるのだが、書く事ができない。

昔学校にパキスタン人がいてなぜか私に熱心にジュースという文字を教しえてくれたが、私には文字には見えなかった。

「え?!これでジュース?!何てゆ〜か…絵…みたいだね!あはは」なんて苦笑いして勉強を中断して逃げたというどうでもいい事を思い出したくらいだ。

でも、初日に会った、あの綺麗なお姫様の授業はない。なんでも体調を心配して一ヶ月遅らせるんだとか…。また勉強科目が増える…めげそう。


でも私は頑張らなければならない。

なにも皇子の為だけじゃない。

あれから毎日ヘンリエッタの夢を見るのだ。

トラウマんなったかな?なんて思ったけどあのシーンではない。普通のヘンリエッタだ。

読書をしたり、楽器を演奏したり、庭園を散歩したり…。

楽しそうに笑うヘンリエッタの顔が私の心にこびりついて離れない。

一体何を伝えたいのか、私に何をしてほしいのか。毎日現れるならきっと何か意味があるのだろうから…それを知りたい。


まぁ皇子に会いたい気持ちは否定はしないけどね!





*****************




「ヘンリエッタ様、朝食の準備が整いました。王妃様と王様がお待ちでございます。」



私は朝食をとる為食堂へ向かう。

一週間も経つと案外慣れるものでこの広い宮殿でも迷う事が少なくなった。まぁ、行く所が決まっているというのもあるんだが。

私の一日の始まりは大体こんな感じだ。

朝、ベットルームで起床。ネグリジェを脱ぎお風呂の準備にかかる。石鹸とタオルを持ってきたメイド達がやってきて私の体を洗う。まるで全自動洗濯機に突っ込まれる気分だが気にしたら負けだと思うことにした。

石鹸もあまりいい匂いではない。けどないよりましって事でこれも気にしなーい。

お風呂を出ると体全体にプシュプシュと香水をかけられ、ドレスに着替えた後、髪をセットする。

そうこうしてる間に朝食の準備が整いメイドが呼びに来る。

食堂で家族で食事をする。

今までは朝食を一緒に取る事はあまりなかったみたいだが、記憶喪失事件後は「記憶を戻すきっかけとなれば」と王妃さ――いや、お母様がきめた。

まぁ朝の流れはこんな感じ。



考え事をしてる間に食堂の前についた。扉がメイドによって開かれる。


「ヘンリエッタ!」


視線の先には王妃が椅子から立ち上がり手を叩いて喜んでいる。毎日こうだ。

「さぁ、今日は若鶏のクリーム煮よ!とっても美味しいわ!あ、お野菜もキチンと食べなきゃね!これは――」

席にもついていないのに全力で話かけてく王妃。


「ま、まぁお母様、ちゃんと食べますわ。とりあえず席につかせてください」

「まぁ!私ったら!うふふ!セバスチャン!毒見は万全ね?!さぁヘンリエッタに暖かくて美味しい食事を。栄養をつけなければなりませんからね」

「ははは、王妃よ、ヘンリエッタが困っているぞ、さぁ食事にしよう…」「うふふ…」

なんだ?この夫婦…って気分だが、記憶喪失の娘を持って絶賛空回り中なのかもしれない。と思っておく。


シーン…


カチャカチャと食器の音のみの食事。私も何を話していいかわからないのだ。実際はまったく知らない外人で、ましてや王様や王妃様とする話なんて見当もつかない。

なんか元の世界の事を口走っちゃいそうでこわいし…。


「ヘンリエッタは鶏肉が大好きよね、今日はとっておきのを用意させたわ!それをヘンリエッタの好きなクリーム煮にしてもらったの。これで――」

「ごめんなさい…」

「まぁ、そんなに焦る事はないではないか。モーリスもじき思い出すだろうと言っておった。」

「そ…そうね?ふふふ、焦らない事よね、じゃ…じゃあ鶏肉はどうかしら?」

「美味しい…です…。」

「ふふ、きっとシェフも喜ぶわ!褒美でもとらせようかしら」

「が!!何かが足りない気が…。んーなんだろうな〜…なんかシンプルすぎるっつーか?そうだ…自然食みたいだ、コレ。芋は芋、鶏肉は鶏肉、人参は人参、ミルクはミルク。ってなんかもーちょい工夫できないもんかねぇ?ん〜………はっ!!!」


二人が大きく目を見開いている。やっちまったーーーーー!!あんま美味しくなくってつい本音が…


「た…食べる事は好きだったけれど、料理まで詳しかったのね。お母様、知らなかったわ…。」

最初は驚きの表情を隠せなかったのに最後はガクっとうなだれる王妃。

すいません、ヘンリエッタさんは多分包丁も握った事のない生粋のお姫様だったと思います…。

「ふむ…そうだったか、では、シェフを呼んでまいれ。」


王がそう言うとメイドが一人のおじさんを連れてきた。


「な…なにか粗相でも…?」

「いや、なに。ヘンリエッタがこの料理は味が素朴すぎる、質素だ、ちっとも面白くないと申してな」


えぇぇぇ!!!ちょっと勘弁してくれよ〜!!そんな言ってないよ!!おじさん真っ青んなってるよー!!


「ヘンリエッタが是非アレンジをしたいと申しておる。厨房で料理をさせてやってくれ。勝手がわからぬだろうからお前に姫の世話役を命ずる。」

「は…はひ…」


おじさんテンパりすぎだって!


「王!!ヘンリエッタに何をさせるつもりです?!」

「我々が知らないうちに娘は料理を趣味としていたのだろう…。ならば料理をすればひょっとしたら戻る可能性もあるかもしれんからな。」


すいません、つい口からでてしまっただけでヘンリエッタさんは料理のりの字も知らなかったと思います…

「そ…うね!そうだわ!それがいいわね!ペネロペ!頼みましたよ!!」

「は…はひ…王妃様。仰せのままに…」



そうして私は厨房に行く事になった。












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