5 ヘンリエッタ12歳(3)
5 ヘンリエッタ12歳(3)
「――さ…。――さま…。あぁ…ヘンリエッタ様!!お気づきになられましたのね!!」
目を開けると、あのおばさんが私の手を握り涙を流していた。
「あぁ、よかった…お医者様をお呼びして!あぁ、お水も新しいのを――」
「お待ちくだされ――」
そう言ってつかつかとおばさんに近づいていったのは片側だけ丸メガネをしたおじいさん。
「まぁ、モーリス先生!!ありがとうございます!!ヘンリエッタ様が!!」
身振り手振りでも教えているが、大興奮で言葉が上手く出せないようだ。
「ベネトー夫人、一先ず落ち着いてくだされ、お体に触りますぞ。」
「えぇ、えぇ、そうですわね。…フー…。。。モーリス先生、先生の治療の甲斐あってヘンリエッタ様がお目覚めになりました。ありがとうございます」
「いやいや、私は何も…ところで、ヘンリエッタ様の症状で気になる点がありましてなぁ。」
「気になる点…ですか?一体なんなんです?」
「どうやら、ヘンリエッタ様はペロフの猛毒に犯されていたようでございます。」
「なんですって?!あれは…一瞬で命を奪うほどの…一体誰が…」
「えぇ、一命を取り留めたのは奇跡ですな、私にも対処しようがなかったのですから…。なのでヘンリエッタ様の身辺をより一層警戒してもらおうと思いましてな、お水もキチンと管理したものを――」
「…ヘンリエッタ様?…今日、薬品庫でなにをしていらっしゃったのです?」
おばさんが鋭い目で私を射抜く。
やっべぇ…夢の通りなら…私自身が猛毒を煽ったことになる。
どうしたらいいかわからず咄嗟に出た言葉は
「なんであそこにいたのかも…わからない…んです?」
場がシーンと静まり返る。
あっちゃ〜…私何言っちゃってんだろ?!しかも疑問形?!ばかばか!!
「ヘンリエッタ様…もしや…」
おじいさんが神妙な顔つきになる。
「モーリス先生…ヘンリエッタ様…私の事を今日、どちら様ですか?と聞きましたの…冗談だとばっかり…まさか…」
「すぐに国王と王妃に知らせを。」
しばらくするとバタバタと足音が聞こえ扉がバーンッと勢いよく開いた。
「おぉ…私の可愛い姫…。可哀想に…で、ベネトー?ヘンリエッタの体の具合はどうなのです?」
そう言って鋭い目をしたのは高い位置に髪を結い上げ、その位置から腰まで伸びた髪を三つ編みにした、可愛らしい人。
頭には小さなティアラが輝いている。まぁ間違いなくヘンリエッタの母だろう。
「峠は越したもののまだ油断はできない状態です。またいつ発作が起きるか…。」
モーリス先生が間に入って病状を話す。
「王妃様…ヘンリエッタ様は…記憶を失われておいでです。」
覚悟を決めたようにおばさんが王妃に話す。
次の瞬間ボタボタボタボターっと王妃の目から涙がこぼれた。
「そんな…まさか、あぁ私のヘンリエッタ…私が誰だか分かるでしょう?…お母様が分からない…?」
心が痛みながらも首を縦に振る。
「あぁ…ヘンリエッタ…私はあなたのお母様なのよ…」
王妃はベットにひれ伏して大号泣した。
私帰れるのかなぁ…?
この子にどんな事情があったのかは分からないけど…。こんなにお母さん泣かしちゃって。駄目だよ…
このままにせよ、こんなに愛されてるヘンリエッタの代わりは私にはとてもできそうにない。
慰める言葉も見つからない。
そんな重い雰囲気の中、また扉が開いた。
金髪の髪に立派な髭を生やした眼光の鋭いおじさん。
「ヘンリエッターーーーー!!はははは、元気になったかーーー!!」
ベットにすごい勢いで走ってくる。え、ちょっちょっと怖い怖い!!
「リシャール王!!お止めになって!!!それどころじゃないのです!!」
「なっ!!い…一体どうしたというのだ王妃よ…」」
王妃の剣幕に圧倒される王。
「私の…私たちの可愛いヘンリエッタが…――」
事情を話すと王は難しい顔をした。
「うむ…記憶がない…か。…ようやくリドルフォ皇子との婚約に釘つけたというのに…」
「あなた!!そんな事どうだっていいじゃありませんか!!」
「リドルフォ皇子…おうじ…オージ…Ouji…」
「おぉ!リドルフォ皇子を覚えているか!」
異世界ばんざ〜〜〜〜〜い!!