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3 ヘンリエッタ12歳

3 ヘンリエッタ12歳


混乱しながらも強引につれていかれ、長い廊下を行きたどりついた場所は大きなダンスホールだった。

神様っぽい人や天使らしきものが描かれた天井に大きくてキラキラと輝いたシャンデリアがあり圧倒された。

数人の人が私の方を向きニコニコしてる。その中の一人がコツコツと足音を鳴らしながらゆっくりと私に近づいてきた。


「ご機嫌麗しゅう、ヘンリエッタ様。恐縮ながら今日より新しくヘンリエッタ様にレッスンをさせていただくノエリア・アメレール・フィエスキでございます。さぁ、今日も楽しいダンスのレッスンでございます、立派な淑女になる為ですわ!頑張りましょう!」


そう言うと手を宙に浮かした。

確かにまるでそこに誰かがいるように見えるが、混乱真っ只中の私は若干引き気味にノエなんちゃらさんを見た。


「1.2.3.1.2.3.1.2.3…」


そう言いながらクルクルと回り始める。

「はい!これが基本となります。」

満面の笑みで見てくる。周りもさらにニコニコしている。――え?なんなんすかこの雰囲気。踊れってか?!


「グズグズしている暇はありませんよ、ささ」


急かしてきたのはさっき私にいきなり金切り声を上げたドレスは鼻血もんのおばはんだ。


「ではヘンリエッタ様、肘を引いて、右手は肩に乗せるイメージ、はい1、2、3、1、2、3、1はい、3で右脚下げて〜、1、2、3」


パンパンと手を叩きながらノエさんが私にアドバイスする。

が…小っ恥ずかしい!こうゆうのは、可愛らしいショートケーキな人が踊るからいいもんで…


「恥ずかしがらずに〜」


俯きかげんで赤面する私に容赦しないノエさん。怖い、目が笑ってない。

早々にお姫様を諦めて、日本人として生きてきた私に何言っちゃってんだ…。

確かにドレスを見れば素敵だと思うし、未だにプリンセス系のアニメや映画は大好きだ。

王子様にも憧れるし、可愛い小物やお菓子は今でも作り続けてる。

だがそれは一般的な思想があるからこその『憧れ』であり、今更社交ダンスを習ったり、コスプレとしてドレスを作って着たり

朝は天蓋つきのベットで小鳥のさえずりを聞きながら「う〜ん」って伸びしながら起きたい!

…なんて考えはないわけで。まぁ…26年の人生で一度はイメージした事も…ありますけど!

そんな事を考えながらクルクル回る。



クル…クル…クル…クル…



――あぁ…見事なほど流されてるなぁ…。私って、日本人だなぁ…。


ボーっとクルクル回っていると。

「はい、今日はここまでに致しましょう。基本がマスターできましたら練習相手を連れてまいりますわ!」

「お茶をお持ちしなさい、さ、ヘンリエッタ様。お茶をお飲みになって一息いれたら次はボネール語のレッスンです。」

おばはんがそう言うとホールの隅に置いてあったダイニングテーブルセットがあっという間にホール中央に運ばれてきた。


白くて丸いダイニングテーブルは金の脚に薔薇の彫刻やフルーティングが施されている、平然と持っている執事らしき人物達が信じられない。

かなりの重さだと思う。次に運ばれて来たのは細身の椅子だ。こちらも白をベースとして金のフレームに装飾、

クッション部分は光沢のあるクリーム色のシルクに細かい白い花の刺繍が施されている。

そして一人のメイドさんがガラガラとカートを引いてきた。2〜3人のメイドがワラワラと集まりてきぱきとお茶の支度をしている。


支度が終わり席につかされると目の前にちっちゃなカップが置かれた。

「今日のお茶はなんとゴルディアン地方から取り寄せた幻と言われる一級品のティカ茶ですのよ。」

おばはんは目を輝かせながら、いかにゴルディアン地方の茶葉が素晴らしいかを説明してくるが私にはちんぷんかんぷんだ。


でもよくわからない話に嫌気が差してきた、そんな事より今!どうなっているのか!そ・れ・が知りたい!!!

イライラがマックスになる頃におばはんがすっと立ち上がり優雅にお辞儀をした。


そしてつかつかと私の前に来たのは、透き通るような白い肌、金の色をしたふさふさの睫毛の中はスカイブルーの瞳のぱっちりした目、ぷっくりとした小さい唇。

名古屋のAge嬢もびっくりの盛り盛りハーフアップに花の飾りを差し、残りを縦ロールにしおろした16歳くらいの絶世の美女。


「ご機嫌よう、ヘンリエッタ様。さあ今日も――…?どうかなされましたか?お加減でも悪いのですか?」

顔をほんのり赤く染めポーっとしていた私に彼女が話しかけ彼女の手が私のおでこに触れる。


「まぁ、大変。お熱がおありになりますわ、お医者様をお呼びして!」


あのおばさんが慌ててホールを飛び出す。


「体調が悪いなら正直に言ってください、授業などいつでもいいのですから」

心配そうに顔を覗かれさらに顔を赤くした。


あれ・・・たしかになんか体が熱い。

視界が傾くと体がグーっと地面に引っ張られる感じがする。


ドクン――


あれ、ちょっと待てよ?


ドクン――


なんかおかしい…


ドクン――


く…苦しい


そして私は意識を失った。











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