エピローグ
アンザリアとルルスの境界であたしは足を止めた。道の脇には境界の目印となる石柱が立っている。
「ここからは一人で行けるね」
もう、あいつらは追ってこない。振り返れば、ここ数日は穏やかな旅路だった。
「ミアさん?」
「そっから先がアンザリア。」
ミアさんがはっと息をのむ。小高い丘の上に白い神殿が見えた。
あたしは契約書を取り出した。
「報酬をいただこうか?」
ミアさんが鞄の中から小袋をとりだした。
「竜の瞳…確かに」
箱の中身を確かめる。きれいな大粒の青い石。
「それじゃ、終わりね。ばーいばい」
とん、とセアラさんを押して、アンザリアの境界線を踏ませた。
契約書から煙が上がる。炎を出さず、ゆっくりと契約書が灰になる。
「ありがとうございました…」
セアラさんが深く頭を垂れる。
「いいっていいって、結構楽しかったし。じゃね」
ばいばい、と手を振ってセアラを送り出す。
「ああ、そうだ、あたしから神子長への就任祝いね」
あたしも帰ろうとしてふと思いつく。
ひょい、と小袋をセアラさんのもとに投げた。
「ミアさん?」
「あんたの人生長いんだからさ、厄介ごともいっぱい降ってくるだろうよ。
それはそん時につかいなよね。それじゃ。今度こそバイバイ」
それっきり振り返らずにあたしは歩いた。
酒場で美味しいワインでも飲むことを考えて。
空はいつの間にか夕焼けを通り越して星が輝いていた。空の色は、竜の瞳の色によく似ていた。
お読みいただきありがとうございました。
ずいぶん昔に書いた小説を、手入れしながらアップしております。
誤字・矛盾点等ありましたら順次直していきます!!