第31話 留守番のエーミーヤ2
魔女師弟が出発した翌日。朝っぱらから招かれざる客が団体でやってきた。本当に非常識な連中だな。人様の土地に無断で入ってはいけないとわからんのかね? 困ったものだ。まぁ、私は留守を任された身として、自分の務めを果たすだけだがね。
「……何用かね? ここは私有地だ。勝手に入られては困る。早急に立ち去りたまえ。でなければ、実力行使に移る」
やってきた連中にそう告げる。まぁ、無駄だろうとは思うし、実際、無駄だった。クズ共が。
やってきたのは高校生らしき連中で、少年一人に、少女達十人の、計十一人。本人達は隠しているつもりだろうが、こいつらの目的が私には手に取るようにわかる。こいつらの関係性もわかる。『名無しの魔女』程ではないが、私は魔道の心得が有り、読心術が使えるが、この程度の連中なら使うまでもない。……くだらん連中だ。だからといって、内心を悟られるようなヘマはせんよ。そんな無能ではブラウニー失格だからな。
さて、私有地であるから、早急に立ち去れと告げたが、案の定、このクソガキ共は従わない。
「あなたがここの主人ですか?」
少年が聞いてきた。……私は早急に立ち去れと言ったのだがね。人の話を聞く気が無いな。従う気も無いな。まぁ、こいつらの目的を考えれば当然だな。その事にあえて気付かぬふりをして、答えてやる。
「いや、違う。ここの主人は今、留守にしていてね。私はその間の留守を頼まれた者だ。ところで、君達こそ何者だ? ここに何用か?」
ここの主人は留守であり、私は留守を頼まれた者だと答え、更に君達こそ何者か? 何用か? と聞いた。ポイントは嘘はつかないが、全てを話しもしない事。ここの主人が魔女である事。私がブラウニーである事は伏せる。その上で向こうの出方を探る。すると、先程の少年が答えた。こいつがリーダーらしいな。
「信じてもらえないかもしれませんが、俺達は異世界から来たんです。修学旅行の最中に、乗っていた飛行機が突然、嵐に巻き込まれて墜落して……。気が付いたら、この島に来ていたんです。生き残りは、男は俺一人。あと、女子が十人。飛行機の残骸から使えそうな物を探して、サバイバル生活をしていたんですが、こちらの方から煙が上がっているのを見て、ここまで来たんです」
「そうか。それは災難だったな」
少年の話によれば、修学旅行の最中に異世界に飛ばされたらしい。転生者ではなく、転移者だな。何らかの理由で異世界に来た者だ。事故と人為的の二種類がいるが、どうも後者らしい。理由は少年から下級神魔の力を感じるからだ。下級転生者と同じ、後付けの異能をね。つまり、こいつは下級神魔により異世界に来た者。要は下級転生者の亜種。使い捨てのクズだ。全く信用に値しない。
少年の態度は表向きは丁寧だったが、残念だったな。そんな薄っぺらい演技では私は騙せんよ。
「で? 目的は何かね? 繰り返すが、ここは私有地だ。早急に立ち去りたまえ」
目的は見え透いているが、気付かぬふりをして、立ち去るように告げる。私はこんなクズをいつまでも相手にする気は無い。暇ではないのだよ。
すると少年の態度が一変した。案の定だったな。くだらん奴だ。
「……おい、おっさん。調子に乗るなよ? 死にたくなかったら、さっさと失せろ。この屋敷は俺達が貰う!」
そう言うなり、少年は大型のサバイバルナイフを突き付けてきた。更には少女達も同じく、サバイバルナイフや槍を向けてきた。やはり、この屋敷を奪う事が目的か。
「誰がおっさんかね? 失礼な。これが最後通告だ。早急にここから立ち去りたまえ。でなければ、実力行使に移る。それと、刃物は人に向けてはいけないと教わらなかったのかね、君達は? だとすれば、育ちが知れるな。いやはや、気の毒にな。そんな当たり前の事すら教わらない程、お粗末な育ちとはな。同情するよ」
ここぞとばかりに、嫌味たっぷりに煽ってやる。この手の自惚れた馬鹿には非常に刺さる。そして、予想通り、少年と少女達はキレた。
「馬鹿にしやがって! ぶっ殺してやる!!」
「ふん、ボキャブラリーが貧困だな」
やれやれ、爽やかな朝が台無しだな。さて、世の中を舐めきったクソガキ共に教えてやろう。
『異世界は理想郷でも、楽園でもない』
現実はクズに忖度しない。その事を思い知れ。
今回の馬鹿side
そもそもの事の起こりは、修学旅行。三泊四日の海外旅行。順調に飛んでいた旅客機だったが、突然の嵐に巻き込まれて墜落、大破。乗っていた乗客の大部分、乗員全員が死ぬ大惨事となった。
しかも旅客機が墜落した先が、見た事も無い島。連絡を取ろうにも、何とか無事だったスマホは圏外。繋がらない。荷物もほとんどが大破した旅客機と運命を共にした。このままでは、飢え死に確定。
ただ、俺は旅客機が嵐に巻き込まれて墜落する中、不思議な声を聞いた。
『異世界に行かせてやろう。特別な力も与えてやろう。その力を持って、異世界無双をするが良い』
その直後、旅客機が墜落。激しい衝撃を受けて俺は気を失った。
それからどれ程経ったのか……。気が付けば、旅客機は大破。ほとんどの人間が肉片と化した地獄絵図が広がっていた。だが、俺は傷一つ無く五体満足。どうにかシートベルトを外し、大破した旅客機から外へと出た。
外に出て周囲を見渡したが、改めて地獄絵図だった。旅客機の機体は滅茶苦茶。辺りは焼け焦げ、煙が燻り、木々は薙ぎ倒され、バラバラになった人間の肉片が飛び散っていた。自分が五体満足で無事だった事が信じられない。
しかし、ここは一体、どこなんだ? 修学旅行前に地図を見たが、こんな所はルートに無かった。修学旅行は南国への旅行だったはず。だが、今見える海には、幾つもの流氷と氷山が浮かんでいた。かなりの北、もしくは南。明らかに違う。
「どこなんだよ、ここは? 何が起きたんだよ?」
突然の事態に呆然としていると、突然、声を掛けられた。
「浅羽君? 無事だったの?!」
その声に振り向けば、そこにいたのはクラスメイトの軽井 音奈だった。それ程勉強はできないが、明るい性格でクラス内でも人気者、女子のリーダー格だ。
見れば服装はボロボロだが、五体満足らしく、普通に立っていた。とりあえず、俺以外の生存者第一号発見だ。
実のところ、俺は軽井とは別段、親しくない。というか、女子と親しくない。……はっきり言って縁が無かった。
なぜなら、うちのクラスには希良梨 光という奴がいる。サッカー部のエースで、絵に描いたような爽やかイケメンで、文武両道、大企業の御曹司と、お前はゲームかラノベの主人公かという程のハイスペック野郎。当然、女子からの圧倒的な支持を得ており、そのおかげで、俺を始めとする他の男子なんぞ、その辺の石ころ扱い。
だが、辺りを見渡しても、あのいけ好かないイケメンの姿が無い。……もしかして希良梨の奴、死んだか? 少なくとも、軽井は希良梨の所在を確認していない。でなければ、こんな所にいないはず。こいつも希良梨に夢中の一人だからな。希良梨がいるなら、間違いなくそちらに行く。俺の事なんぞ、無視してな。とはいえ、念には念を入れ、聞いてみた。
「軽井、なぜ、ここに?」
他に生存者がいた事には驚いたが、知らない相手じゃない。なぜ、ここにいるのか聞いた。
「飛行機が墜落した後、どうにか外に出たの。幸い、何人か生存者がいて、私は他にも生存者がいないかと思って、探していたんだけど……」
「そうか」
軽井も俺同様、助かり、機体の外に出て生存者を探していたらしい。
「他の奴らはいないのか? 特に希良梨とか」
その問いに、軽井は目を伏せて答えた。
「私を含めて十人程、女子がいるけど、男子は浅羽君しか見てないわ」
「そうか……」
やはり、希良梨の奴はいないのか。死んだのか、単に他所にいるのかは知らないが。とにかく、現状、男子は俺だけ、他は女子だけか……。これは上手いことすれば、ハーレムを作れるんじゃないか? 無人島でハーレム生活! 最高だ! これまで希良梨の奴のせいで、女子に全く見向きもされなかったが、俺にも運が向いてきた!
だが、ともあれ、今は女子達と合流だ。一人じゃできる事も限られているからな。
「軽井、悪いけど、他の女子達がいる所に案内してくれないか? 今はとにかく合流だ。一人じゃ死ぬだけだ。後、男手は必要だろ?」
帰宅部の俺では大した事はできないが、ここぞとばかりに男手の必要性をアピール。……普段なら、希良梨がいたら、全く相手にされなかっただろうが、今は非常事態だ。軽井も女子ばかりで心細かったらしい。
「……うん、わかった」
しばし、迷ったが、俺の要望を受け入れた。内心、喝采を上げる。よしよし、俺のハーレム計画の第一歩の始まりだ。必ず、ハーレムを作ってやる! ……その為にも希良梨の奴は邪魔だな。死んでいれば良いけど、生きていたら……。
軽井に案内された先は小さな川のほとりだった。確かに十人程の女子達がいた。うちのクラスの女子だけじゃないな。知らない顔が何人かいる。幸いな事に、美人揃い。
「あっ、軽井さん戻ってきた……って男子?! 生きてたんだ!」
一人がこちらに気付いて声を上げる。どうやら、本当に男子の生き残りは俺が初らしい。……希良梨の奴が出てきたら、どうなるかはわからないけどな。死んでりゃ良いけど。
ともあれ、お互いに自己紹介。クラスメイトじゃない面子もいるからな。そしてお互いに情報交換と、現状把握。はっきり言って、最悪に近い。
「食料も水も無い。当然、医薬品も無い。寝泊まりする場所も無い。外部との連絡も取れない。大人はいない」
とりあえず、現状の問題点を挙げるが、その事に一部の女子達が噛み付く。
「ちょっと! あんた嫌な事ばかり言わないでよ!」
「そうよ! そうよ! 男のくせに!」
他にも同調する奴らが出る始末。こいつら馬鹿か? 現状を無視しても何も変わらないぞ。
「悪いけど、騒ぐだけならどっかに行ってくれ。とにかく、今は生き残る事を考えよう。その為にも物資がいる。みんなで手分けして、機体の残骸から使えそうな物を探そう」
現状、物資を探すに一番良さそうな場所は、墜落、大破した旅客機の残骸だ。ほとんどは駄目だろうが、少しは残っているかもしれない。
墜落、大破した旅客機の残骸を漁るなんて、女子達は嫌そうだったが、最終的には渋々ながら折れた。他に当てが無いからな。
俺としても、あの地獄絵図の現場に戻るのは嫌だったが、仕方ない。女子達と共に墜落現場へ。
「とにかく、使えそうな物を探そう。何か見つけたら、ここに集合。じゃ、解散」
墜落現場は相変わらずの惨状だったが、手分けして使えそうな物を探す事に。とりあえず、何か見つけたら、ここに戻るとルールも決めた。
「……まぁ、この分じゃ、ほとんどが焼けてしまってるよな」
手近な残骸の所まで来たが、黒焦げだ。当然だな。旅客機なんて、大量の航空燃料を積み込んだ巨大爆弾みたいな物。それが墜落したんだからな。正直、よくあれだけの生存者がいたもんだ。奇跡を通り越して、御都合主義だ。まるで、誰かがそう仕組んだみたいな……。
『異世界に行かせてやろう。特別な力も与えてやろう。その力を持って、異世界無双をするが良い』
墜落の時に聞いた『声』。まさか、あいつの仕業か? ……いや、まだわからない。そもそも、本当に聞いたのかどうか。ともあれ、今は機体の残骸から使えそうな物を探そう。目の前にはかなり大きい機体の破片。近くに有った金属パイプを差し込み、テコの原理でどかす。すると……。
「うっ……」
破片をどかした下から出てきたのは死体。服装から見て、男子生徒。しかも上半身だけで、首と右腕が無かった。墜落の衝撃でちぎれたんだろう。下手すれば、俺もこうなっていたかもしれないと思うとゾッとした。
だが、その時。ふと、死体の左腕に着けている腕時計が目に付いた。高校生が着けるような物じゃない、海外高級ブランドの腕時計。そして、その腕時計に見覚えが有った。これはもしかして……。
気になった俺は死体の左腕から腕時計を外し、その裏蓋を見た。そこにはこう刻まれていた。
『HIKARU KIRARI』
「やっぱりそうだ! この腕時計は希良梨の……」
以前、希良梨の奴が親から誕生日プレゼントとして貰ったと自慢たらしく見せつけてきた、海外高級ブランド腕時計。しかも特注品で、希良梨のフルネームが刻印されている、一点物だと言っていた。その腕時計を着けているとなると、この上半身だけの死体は……。
「は、はは、ハハハハハハハ!! 希良梨の奴、死にやがった!! ハハハハハハハハハハ!! いい気味だ!! ざまぁ見ろ!! アハハハハハハハハ!!」
間違いない! 希良梨の奴は死んだ! ご自慢のイケメン顔も無くなって、残念だったな! 本当にいい気味だ! ざまぁ見ろ!
周囲に聞かれる危険性は有ったが、それ以上にあのいけ好かないイケメン野郎の希良梨が死んだ事がわかったのが嬉しくて、つい、大騒ぎしてしまった。この気持ち、女子達には絶対にわからないだろう。希良梨は俺達、男子の怨敵だったからな。
「希良梨の奴が死んだのを確認できたのは良いけど、状況は良くないな」
大きな懸念であった希良梨。その死を確認できたは良いが、本命の食料、水、医薬品、寝泊まりする場所とかはまだ確保できていない。機体の残骸を漁ったものの、見つかった物はどれもこれも黒焦げ。このままじゃ、希良梨の後追いだ。
「クソッ! せっかく生き残って、邪魔な希良梨も死んだってのに、これじゃ俺のハーレム計画が台無しだ」
あの、目障り極まりない希良梨が死んだんだ。邪魔者がいないこの状況を逃してたまるか。しかし、最低限、食料、水が無いことにはどうにもならない。このままでは餓死するだけだ。
「あ〜、腹減ったな〜」
何せ、墜落以降、何も口にしていない。だからといって、食べる物は無い。荷物はほとんどが機体と運命を共にした。手元に有るのは、奇跡的に無事だったスマホだけ。当然、食えない。
「そういえば、もうすぐ、期間限定バーガーが出るんだったよな。トリプルビーフデミグラスバーガー。去年食ったけど。あれ美味かったよなー」
腹が減ったせいで思い出したのが、去年食った、期間限定のトリプルビーフデミグラスバーガー。あれは美味かった。また食いたかったけど、もう無理だな。
「とにかく肉を食ってる感が凄いんだよな、あれ。あ〜! 食いて〜!!」
見知らぬ島に墜落、遭難している現状、無理だとわかっている。それどころか、明日の命さえわからない状況だが、食いたいものは食いたい。
……そして奇跡が起きた。
ふと香るのは、濃厚なデミグラスソースの香り。んな馬鹿なと思ってその香りがする方を見たら、地面に見覚えの有る紙包み。
「…………ヤッベ! 幻覚が見えるなんて、マジでヤバい」
トリプルビーフデミグラスバーガーの包みが見えた。有るはずのない物が見えるのはヤバい。しかし、本当にリアルな幻覚だな。試しに手を伸ばしたら、ちゃんと感触が有った。持ち上げるとズシリと重い。そうだ。去年、初めてトリプルビーフデミグラスバーガーを持った時もこのズシリとした重みを感じた。
「まさか……幻覚じゃないのか?」
幻覚にしては出来過ぎだ。こんな所に突然、トリプルビーフデミグラスバーガーが出てくるのもおかしいけど。しかし、さっきから、美味そうな匂いはするし、出来立ての熱さも感じる。何より、腹が減った。
「こうなりゃヤケだ! どうせこのままじゃ飢え死にだ。だったら、トリプルビーフデミグラスバーガーを食って死んだ方が、まだマシだ!」
包み紙を破り、トリプルビーフデミグラスバーガーに齧り付く。
「……美味い!」
去年、初めて食べた時と同じ、圧倒的な肉感。濃厚なデミグラスソース。付け合わせの刻み玉ネギも合わさって、本当に美味い!
「何がどうなっているのかわからんが、確かに本物だ」
腹が減っていたせいで、すぐに食べ終わってしまった。しかし、バーガーだけじゃ喉が渇くな、こういう時は冷たいコーラが……。
コト…
そう思った直後、足元にコーラが出た。紙コップに入った奴がストロー付きで。
見たぞ! 今度は確かに見た! 何も無い場所からコーラが出た! そこで思い出したのが、墜落時に聞いた『声』。あいつの言っていた特別な力ってこれか?!
望む物を出せる能力だろうか? とりあえず、食べ物以外に出せないか試してみる。そうだな……移動手段、乗り物はどうだ? 以前から欲しかったバイクを出そうとするが、何も出ない。
「駄目なのか? だったら、マウンテンバイクはどうだ?」
バイクは出なかったので、自転車、マウンテンバイクに変える。すると……。
「出た!」
最新モデルのマウンテンバイクが出た! 試しに乗って走ってみる。よし、ちゃんと使える。
その後も色々出せる物を確かめてみる事に。
あれから色々試してみてわかった事。
『俺の知っている物を出せる。知らない物、生命体は出せない』
『複雑な機械類は出せない』
『出した物は消せる』
『出せる量は無制限』
「万能とまではいかないが、この力は間違いなく、ここで生きていく上で圧倒的なアドバンテージになる。食料も水も医薬品もテントも好きなだけ出せるからな。……武器もな」
俺の手には大型のサバイバルナイフが有った。以前、ミリタリー雑誌で見た奴だ。できれば銃が欲しかった……いや、やめとこう。出せなかったし、仮に出せても当てられる自信が無い。
「とにかく、この力が有れば、今の状況が一変する」
食料、水、医薬品等を好きなだけ出せる。機械類は出せないが、それ以外の便利な道具もな。寝泊まりする場所もテントを出せる。
「本当に運が向いてきた。一番の邪魔者の希良梨は死んだ。大人もいない。そして俺の力。食料、水、医薬品といった品を与えるのと引き換えに、女子達を従わせられる。あいつらだって、野宿や餓死は嫌だろうしな」
夢物語でしかなかったハーレム生活。それが、急に現実味を帯びてきた事に興奮が止まらない。
「ざまぁ見ろ希良梨! ハーレム王に俺はなる!!」
その後、俺は女子達と再合流。どうやら、他にも生き残りがいたらしく、総勢二十人程に増えていた。
俺は女子達の前で力を使い、食料の山を作ってやった。そして取引を持ち掛けた。俺を王とし、俺のハーレムに入り、好きな時にヤらせるなら、水でも食料でも好きな物を好きなだけ与えてやる、と。
現金なもので、女子達は二つ返事で全員ハーレム入りした。ケッ! 以前はどいつもこいつも希良梨君、希良梨君で、俺なんか見向きもしなかったくせにな! これだから女は……。だが、念願のハーレム王になれた。この力が有る限り、俺は絶対王者だ!!
墜落事故から二ヶ月程経った。毎日、好きな時に好きなだけ、ヤりたい女を犯し、好きな食料、飲料を出しては、好き放題に過ごす毎日。テントのおかげで寝泊まりする場所にも困らないしな。
女達は食料、水、医薬品といった品欲しさに俺に媚びへつらう。俺に逆らったら、一切、手に入らなくなるからな。特に媚びへつらい、真っ先に俺に処女を捧げたのが、軽井だ。
再合流した際に、女達に希良梨が死んだ事を伝えたんだが、こうもあっさり、掌返しをするとはな。まぁ、俺に逆らわず、従順に従うならば良し。今も、軽井を犯している最中だ。好物のパフェを報酬にな。
「しかし、俺が物資を出せるとはいえ、いつまでもこんな所にはいられないな。王の俺にふさわしい場所が必要と思わないか? 音奈」
「はい……ピチャピチャ…陛下の仰る……ピチャピチャ……通りです。偉大なる王に……ピチャピチャ………ふさわしい場所が必要と思います……ピチャピチャ……」
豪華な革張りの椅子に座る俺は、足元に四つん這いで這いつくばり、俺の足を舐める女達の一人、音奈に話し掛ける。ちなみに一番舐め方が上手かった奴には褒美を与えるルール。逆に一番下手だった奴は折檻だ。女達は褒美欲しさと折檻を恐れて、皆、必死に俺の足を舐める。
まぁ、この二ヶ月で女を何人か折檻のやり過ぎで殺してしまったからな。反省、反省。
ただ、やはり、王である俺にふさわしい住居は欲しい。いつまでもテント暮らしは嫌だからな。幸い、当ては有る。
こっちに来てから数日後。離れた場所から、煙が上がっているのを見た。その後も何度か見た。煙が上がっている場所はいつも同じ。もしかして、この島は無人島ではなく、誰か住んでいるのか? だとしたら、好都合。住居を奪い取ってやる。武器は出せるしな。
ところが、そう簡単にはいかなかった。島の地形が立ちはだかったからだ。
ハーレム王になった後、方位磁針を手に島を調べてわかったが、俺達がいるのは西側。基本的に荒地。対し、煙が見えたのは東側。緑が豊かな土地。
行きたいのは山々だが、そうはいかない。島の西と東を分断する形で、険しい断崖絶壁が走っていたからだ。そう簡単には向こうに行けない。ヘリや飛行機は出せないしな。
だからといって、行かない選択肢は無い。俺は王だ。王が王にふさわしい住居を求めているんだからな。下僕共は黙って従え。
「おい、お前。この先の崖を調べてこい。通れそうな場所を探せ。見つけたら、報告しに来い」
とりあえず、適当な女を偵察に出す。俺は王だ。こういう事は下僕の役目。
「え? ちょっと! あの断崖絶壁の通れそうな所を探せって、無理よ! 落ちたらどうするの!!」
ところが命令に従わない。……王に逆らう気か!!
「お前、今後、何も無しな。嫌ならさっさと行け! ほら、ロープは出してやる」
王である俺の命令に従わないなど許されない。そんな奴には、今後、何も与えない。そうなれば待つのは死だけだ。嫌なら、王に従え。
「……わかりました!!」
女も俺の怒りを買うのは不味いとわかっているから、ヤケクソ気味に返事をし、ロープを手に断崖絶壁に向かっていった。
……そして帰ってこなかった。使えねぇ。翌日、面倒だが見に行ってみたら、転落したらしく、ぶちまけたトマトみたいな死体になっていた。本当に使えねぇ、クソが。
その後も引き続き調査に送り出し、何人か転落死したものの、どうにかルートを見つけた。どうにか人一人、通れそうな細いルートだそうだ。そして、登山道具一式を持ち、断崖絶壁を突破し東側に向かうべく出発。まずは下り。底まで着いたら今度は登り。
出発の際に何人かごねたから、見せしめに釘バットで滅多打ちにして殺した。王の決定に逆らう奴は死ね。
その後、女達を先行させて、ルートを確保しながら、断崖絶壁を移動。時間は掛かったし、途中、何人か転落死したが、遂に断崖絶壁を通過し、東側へと辿り着いた。その時点で女達は十人程になっていた。ちなみに軽井は途中で転落死した。まぁ、良いか。いい加減、あいつには飽きたし。
それよりも見えてきたぞ。向こうに見えるのは立派な洋館。誰が住んでいるのか知らないが、構うものか。俺は王だ。俺以外は全て下僕だ。黙って屋敷を明け渡せ。拒否するなら殺して奪い取るだけだ。
…………そのはずだったのに!!!!
なぜ、俺は地面を見ているんだ? なぜ、目の前が暗くなるんだ? なぜ……。
今回の馬鹿。無事死亡。
エーミーヤside
「私は言ったはずだ。立ち去らねば実力行使に移ると。不法侵入者は排除する」
全く、馬鹿の相手は鬱陶しくてかなわんな。とりあえず四手で終わらせた。
一手目、左裏拳でサバイバルナイフを弾き飛ばす。
二手目、右貫手で喉を突き、動きを潰す。
三手目、うつ伏せになるよう足払い。
四手目、うつ伏せに倒れた馬鹿の首すじに対し、渾身の踏み付け。頚椎を踏み潰してゴミ処理完了。
私は無駄に相手をいたぶる気は無い。殺す際の心構えは迅速確殺。無駄に長引かせてもろくな事にならんからな。対し、下級転生者を始めとする馬鹿共は力をひけらかしたい一心で無駄に長引かせては、反撃されて死ぬ事が多い。愚かな事だ。
さて、馬鹿が死ぬと私が叩き落したサバイバルナイフの輪郭が揺らぎ、そして消えた。更に馬鹿に付き従う女子達の手にしているサバイバルナイフ、槍も同じように消えた。なるほど、魔力による物質生成。周囲の元素を使い、物質を作る能力。しかし、程度が低い。あくまで一時的な実体化でしかない。術者が死ねば消える。『名無しの魔女』なら、そんなお粗末な事はせんよ。
それに、ナイフ、槍で武装していた辺り、車、バイクといった乗り物が無かった辺り、複雑な構造物は出せないようだな。出せるなら持っているだろう。撃てる撃てないはともかく、銃で武装するだけでも相手に対する強力な威圧になるからな。まぁ、所詮、下級転生者の亜種。遅かれ早かれ、異能の使い過ぎで『加護』切れを起こして死んでいた。
で、残るは、馬鹿に付き従っていた女子達の処遇だ。私は殺人鬼ではないからな。馬鹿が私にあっさり殺された事で、女子達は激しく動揺している。さて、どう出るかな?
「許してください! 私達、あの男。浅羽 海に脅されていたんです! 逆らったら殺すって」
「そうです! 全部、浅羽のせいです! 浅羽が悪いんです!」
「何でもしますから、許してください!」
ふむ。口々に許しを乞うてきたな。全てあの馬鹿。浅羽とやらが悪いと。浅羽に脅されていたと。まぁ、嘘ではないな。彼女達からすれば、こんな見知らぬ島に遭難した以上、物資を出せる浅羽は絶対権力者。逆らえる訳がない。
…………だから?
「なるほど、なるほど。君達の言う通りだな。確かに先程殺したクズ。浅羽とやらが悪い。それは認めよう」
「ありがとうございます!」
「良かった〜! 助かった〜!」
「本当に浅羽の奴のせいで!」
彼女達の言い分を聞き、私は浅羽が元凶と認めた。その事に少女達は安堵の息を吐く。だが、私は更に続けた。
「何を勘違いしているのかね、君達は。私はあくまで元凶が浅羽だと認めたが、君達を見逃すとは言っていない。そもそも、君達は浅羽と同じく不法侵入者だ。しかも浅羽と同じく私に刃を向けた。よって君達も浅羽の共犯者。同罪だ。故に抹殺する」
私の宣言に少女達の顔が絶望に染まる。知った事ではないがね。私は私の仕事を粛々と果たすのみだ。恨むなら、己の愚かさと不運を恨みたまえ。
「全く、余計な仕事を増やしてくれる。まぁ、小遣い稼ぎにはなったか」
クソガキ共を全員処分。さしたる手間は掛からなかったが、私は余計な仕事を増やされるのが嫌いでね。予定が狂う。
「後で業者に引き取ってもらうか。あんなくだらん連中でも『人体パーツ』としてなら役に立つ。高く売れる」
各種臓器、角膜、骨髄、血液、皮膚、髪、骨、筋肉、神経等々、人体に捨てる所は無い。クソガキ共のせいで不快な思いをしたのだ。それぐらいの役得は許されるだろう。まぁ、それはそれとして……。
「……いい加減、隠れていないで出てきたまえ。いるのはわかっている。五秒やろう。それでも出てこないなら、こちらも考えが有るからな」
私は近くの茂みに向かって話し掛ける。不法侵入者は他にもいるからだ。
魔女の島にやってきた馬鹿の末路。
今回の馬鹿
浅羽 海
とある私立高校に通う二年生。陰気で執念深い嫌われ者。クラスで一番人気のイケメンである希良梨 光を目の敵にしている。海外への修学旅行の最中、乗っていた旅客機ごと、異世界へ。
その際、下級神魔より異能『物質生成』を与えられる。
着いた先はナナさん達の住む魔女の島。ただし、西側。ナナさん達が住むのは東側。
旅客機墜落時に乗客のほとんど、乗員全員死亡。浅羽はその異能を武器に生き残りの女子達を従わせ、ハーレム王として君臨。傍若無人の限りを尽くす。
島で暮らす内に東側から煙が上がっているのを目撃し、誰か住んでいるのではと考え、そちらに向かい、誰か住んでいるならば、その住居を奪おうと画策。
誰かが住んでいるのではという考察自体は正しかったが、相手が悪過ぎた。ナナさん達の留守中を預かるエーミーヤと遭遇。不法侵入者として抹殺された。
不法侵入者達を抹殺したエーミーヤですが、他にも誰かいる模様。
では、また次回。




