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プロローグ とある魔女と、その弟子

 果てしなく広がる荒涼な大地。草一本すら生えぬ、死の大地。


 その中にそれは有った。大きな黒曜石で作られた石碑。


 そして、その前に立つ、二人の人影。一人は大人。黒を基調としたメイド服を着た黒髪銀眼の女性。その頭の上には、なぜか白いツチノコが乗っている。もう一人は黒ジャージを着た金髪碧眼の若い娘。


 メイド服を着た黒髪銀眼の女性が石碑の前にひざまずき、石碑に語り掛ける。


「師よ。今年も来ました。今年も無事、この日を迎えられた事、誠に喜ばしく思います」


 当然、石碑からは何の返事も無い。しかし、彼女は構わず語り掛ける。


「今年は大切な報告が有ります。僕は弟子を取ったんです。驚きましたか? 僕自身も驚きました。まさか、僕の弟子たるにふさわしい者に出会えるなんて。長生きしてきた甲斐が有りました……」


 彼女はそうしみじみと語る。そして後ろに控える娘の方を振り向く。


「サキ、ここはね、我が師、初代様のお墓なんだ。だけど、見ての通り、このお墓には墓碑名も何も無い。初代様の意向でね。遺骨も遺髪も無い、本当に形だけのお墓。だけど、僕は初代様に敬意を表し、このお墓を建てた。その偉業を忘れない為に。さ、初代様に挨拶して。くれぐれも失礼の無いように」


「はい、師匠」


 師である黒髪銀眼の女性に促され、金髪碧眼の娘が墓碑の前に出る。


「はじめまして、初代様! 私は二代目様に弟子入りした、大神(オオガミ) (サキ)と言います! 若輩者で未熟者ですが、よろしくお願いします!」


 そして気合いの入った挨拶をする。そんな彼女を優しく見つめる黒髪銀眼の女性。


「うん。実に元気の良い挨拶だったね。きっと初代様も、『気合いの入った良い子じゃないか』と褒めてくださるよ」


「ありがとうございます! 師匠!」


 黒髪銀眼の女性は弟子である金髪碧眼の娘を褒め、弟子も感謝する。


「さて、師よ。今年も一緒に飲みましょう。貴女の好きなビールですよ。つまみも貴女の好きなサラミです」


 黒髪銀眼の女性は()()()()()()()()()()()()()()()。そして両方を開け、片方は墓碑に掛け、もう片方は自身で飲む。


「サキ、君はまだ未成年だから駄目。飲酒、喫煙は二十歳になってから」


「……厳しいなぁ、師匠は」


「僕はルールが絶対とは言わないけど、守るべきルールは守るべき。それすらできない奴はクズだ。クズはすべからく死ね」


「……師匠って、基本的に穏やかだけど、時々、怖いよな」


「僕はクズが嫌いなだけだよ。()()()()()()()なろう系の連中なんか、正にその代表格だったよ」


「あぁ、あの下級神魔が自分の強化の為に作った、気狂い共。何かと言えばチート、最強、ハーレム、成り上がり、改革とか。本当、頭おかしいよな、あいつら。そんなもん、簡単にできる訳ないのに。で、最終的に偉い神様の怒りを買って、絶滅したんだろ? 馬鹿過ぎ」


「そうだね。どんなに凄い力を得ても、本人自身が凄くなった訳じゃない。なろう系の馬鹿はそこを理解しなかった。クズは所詮、クズなんだよ。現実は非情。御都合主義なんか存在しない。……我が師、初代様がよく仰られていた事だよ」


「そうならないように、気を付けます」


「うん。それで良い。その気持ちを忘れない限り、君はクズにはならないさ」


 師弟は、初代様の墓碑の前で語り合う。


「さて、そろそろ帰ろうか?」


「もう帰るんですか?」


「いつまでもここで時間を潰している訳にはいかないからね。それこそ、初代様に怒られる。『いつまでくっちゃべってるんだい! さっさと帰れ!』って」


「……師匠も厳しいけど、初代様も大概だな」


「少なくとも、間違った事は仰らなかったよ、初代様は」


 後片付けをし、師弟は帰り支度をする。


 サキは一足先に行き、黒髪銀眼の女性は去り際、もう一度、墓碑の方を振り返る。


「……師よ。貴女にもこの場にいて欲しかった。貴女だけではなく、皆にもいて欲しかった。貴女に、皆に、我が弟子サキを紹介したかった……」


 黒髪銀眼の女性の頬を一筋の涙がつたう。


「……師よ。僕も弟子を取った以上、覚悟はできました。僕はサキに僕の全てを与えます。かつて、貴女が僕にそうしたように。何、そんなに遠い話ではありません。すぐです。だから、もう少しだけ待っていてください」


「師匠〜、何やってんの〜? 帰るんでしょ〜?」


「ごめん、今行く」


 涙を拭い去り、黒髪銀眼の女性は弟子の元へと向かう。


「シャー」


 今まで空気を読んで黙っていた白いツチノコが、一声上げる。


「うん、大丈夫だよダシマキ。僕は僕の成すべき事をやっと見つけたんだ。それを成し遂げずに死ぬ気は無いよ。そんな事をしたら、それこそ我が師に合わせる顔が無い」


「シャー」


「ありがとう。気を遣わせてすまないね。じゃ、行こう」


 彼女はもう振り返らない。自分を待つ弟子の元へと歩んでいった。そして、そんな師弟の姿を黒曜石の墓碑は見つめていた。


 名も無い墓碑。遺骨も遺髪も無い、形だけの墓。かつて存在した、生きながらにして伝説となった大魔女。『名無しの魔女』。その墓である事を知る者は少ない。ここに墓が有る事さえも。そして彼女に弟子がいる事も。


 師弟が去った後、誰もいなくなった世界で、黒曜石の墓碑は、ただ、そこにたたずんでいた。







「ねぇ、師匠。昔の話を聞かせてよ。いつも断るけど、いい加減、話してくれても良いんじゃない?」


「……そうだね、良い機会だし、話そうかな。とりあえず、全ての始まりとなった出来事から話そうか」


 これから語られるのは、既に過ぎ去った、昔話。一人の魔女と、その弟子となった一人の少女の物語。




前作、『僕と魔女さん』のリメイク作。以前から、あまりの稚拙さに、リメイクすべきか悩んでいましたが、この度、リメイクする事にしました。


所詮、駄作ですが、駄作者にも駄作者なりの意地とこだわりが有りまして。


前作をベースにしつつ、細かい所は変えていきます。前作の失敗を踏まえ、多少なりとも、マシな作品になるように頑張ります。



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