第8話 異世界デビューだー!
第8話掲載させて頂きました。
当面の間、1日間隔の18時に掲載を予定しております。
拙い文章かとは思いますが、よろしくお願いします。
ご指導、ご指摘など頂けるとありがたく思います。
ちょっと褒められるとやる気が爆発的に上がります笑
ストレッチをし、自分が寝ていたベッドを直す。
そうしているとリナさんが戻ってきた。
立ってみて分かったが、リナさんの身長は俺よりちょっと低いくらいかな?女性の中では高い方だろう。
「おまたせ!えっと…翠斗くんにはとりあえずこの杖を使ってもらうわ!」
そう言ってリナさんは木でできた杖を俺に渡してくれる。
長さは自分と比較してみるに、地面から胸の位置くらいなので150センチくらいか。
持ち手の部分は滑らかに削られ、滑り止めのための布が約30センチ程巻かれており、持ってみると太くもなく細くもなくしっくりくる。持ち手側の端は広がっており、すっぽ抜けを防止する為の加工がなされている。
…ここの部分だけ見ると、野球のバットみたいだな。と素直に思った。
持ち手より先は原木の雰囲気が残っており、杖の先には手?なにかの動物の手があしらわれている。犬かな?猫かな?犬だろうな。
「あたしがずーっと使ってた杖で申し訳ないけど…」
いえ。むしろありがたいです。家宝にさせていただきます。不思議といい匂いもしている気がする。
…気のせい?気のせいですよね。うん。
冗談はおいといて、持ち手もしっくりくるし、振ってみても重さをあまり感じない。相当いいものじゃないかと思う。
リナさんは腰にいくつもバッグが連なったベルトのようなものを巻き、腰には短刀かナイフのような物を差している。
「よーし、準備も整ったし早速行きましょう!翠斗くんの異世界デビューだー!」
なぜかリナさんのテンションが上がっている。凄く楽しそうだ。
しかしリナさんの言う通り、俺の異世界デビューである。俺はリナさんから受け取った杖を手に取り、リナさんの後をついていく。
玄関扉を出ると、少し歩いて門扉があり、フェンスで囲ってある庭には、木の椅子とテーブルが置かれている。
門扉から数十メートル先には木々が生い茂っている。リナさんは森を少し拓いたこの場所に住んでいるらしい。
「後ろ見てみて?」
リナさんに言われ後ろを振り返ると家の後ろには天に伸びる巨大な樹。前世には絶対あり得ないほど大きく視界に収まりきらない幹。
枝もはるか上にあり、そこらに生えている木の幹より遥かに太いだろう。
そして枝に目を追っていくとだいぶ先まで続いている。
葉も綺麗な緑をしており、神々しい雰囲気がする。が、太陽の光を覆う訳でもなく、木漏れ日が心地いい。
「これが世界樹よ。この世界で一番大きく、神聖なもの。凄いでしょ?」
「凄いですね。前世にはこんなに巨大な木はありませんでした。そして気持ちも凄く落ち着きます。」
「でしょ?天気がいい日に外で飲む紅茶は最高よ。」
確かに、この雰囲気で静かに過ごすのは最高だな。前世ではゆっくりお茶を飲むなんて…考えたことすらなかったな…
「まぁ街からはちょっと離れているけどね。でもこの雰囲気は何にも代えられないわ。さ、行きましょ。」
振り返り、リナさんは歩く。
木々が生い茂っているとは言え、2人で歩くには十分な幅があり、ちゃんと道になっているので歩きやすい。
「ところで、モンスターはどんなものがいるのですか?」
「この先にすぐ小川があるのだけれど、その周辺には普通のスライムがいるわね。あとは魚を狩りにくる30センチから40センチくらいの鳥と1メートル前後の雑食のウサギね。スライムはこちらから仕掛けなければ襲ってこないし、鳥は魚さえ持っていなければ襲ってこない。向こうから襲ってくるのはウサギくらいだわ。」
「その3種類ぐらいがメインってことですね。とりあえず気を付けるのはウサギくらいか…ちなみに俺の攻撃手段は?」
「その杖で殴るのよ。」
「はい?」
「一応パーティは組んで、あたしの特技は使えるけれど…あたしがいなかったら特技使えないしね。この辺のモンスターならパーティ組んでなくても倒せると思うわよ?」
「いや、あのそうじゃなくて…この杖で殴るんですか?」
杖って振りかざして、呪文唱えて、杖の先から炎がゴォォォ!!とか敵に向かって杖を振ると雷がドカァーン!!ってイメージだったんだが…
「大丈夫よ!長年使ってきたけど折れないし!そもそも打撃を与えるうえで持ち手も改良したし。その辺の棍棒よりかは遥かに性能はいいはずよ!」
…まぁ長年使用していた本人が言うんだからそういうものなんだろうな。
木々の間の道を歩いていると、川幅5メートルくらいの小川に出る。
目の前には小さい橋が架かっており、橋を渡り左、川の流れに沿って小川沿いを歩いていくそうだ。
川の水は澄んでおり、リナさんが言うには普通に飲んでも大丈夫だそう。
なおかつ、世界樹の方から水が湧き出ており、体力が少量ながらも回復するらしい。
「あ。あの木になっている実は薬になるわ。鑑定してみて?」
そちらに目をやると、緑の実がなっている。
言われた通りに、鑑定スキルを発動させる。
《木の実》としか表示されなかった。
繰り返して鑑定いくとスキルレベルが上がってより詳しく分かるとのこと。塵も積もれば…というやつか。
ちなみに川の水を〔鑑定〕したところ、《水》と表示された。そりゃそうだけども…
小川を下り少し行くと橋が架けてあった。そこを渡りまた川を下る。相変わらず、色々な木の実を〔鑑定〕しても《木の実》としか表示されていない。
そうこうすると目の前に薄い水色で透明ななぷるぷるとした物体、スライムが現れた。