第81話 なんだこの量…山盛りじゃないか…
第81話掲載させて頂きました。
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なんてことだろう。俺は1時間経たないくらいで4本しかガーショを採取することができなかった…
ミリーとフロルは10本ずつくらい。で、ピグミィはなんと20本。さすがだなぁ。
4本って…少ないよなぁ。
一応、鑑定を使いつつ間違えないように採取はした。それに1本目で特徴は掴んだはずなのに。くそぅ…
「まぁ初めてだからねー。あんまり気を落とさないで?ね?」
ミリーが俺を励ましてくれる。まぁ、初めてだし…4本採れただけでもいいじゃないか!
まだイートラットの討伐も残っている。落ち込んでいる場合じゃないな。
「そういえば、ハルちゃんとロゼリールちゃん。あっちに飛んでったわよね?」
「そうね。ちらちら見てたけど、ロゼリールちゃんの方は魔法とか使ってたけど…大丈夫かしら。」
そうだ。ロゼリールがハルを抱えてあっちの方に飛んでいったな。そろそろ戻ってくるとは思うのだが…
「こっちもあらかた終わったものね。2匹の方に行きましょうか。」
フロルが提案してくれた。ありがたい。
それに嬉しい誤算かもしれないが、イートラットが草むらに現れて、2体ほど既に狩れている。
スティンカーも1匹現れたがピグミィが難なく倒している。
「そうだねー。ガーショも結構集まったし行こっか!」
俺達は2匹がいた草むらに歩いて行く。確かこっちの方だったはずだが…
あー。いたいた。2匹は並んで休憩をしている。
…なんだこのガーショの量…山盛りじゃないか…
「おぉー…ハルちゃんもロゼリールちゃんも凄いねぇ…」
ミリーは普通に驚いている。それに…イートラットとスティンカーまで倒している。その2種類の魔物も積まれている。
「ガーショだけでも凄い数ね…イートラットとスティンカーも私が数えていくわ。」
フロルはまずガーショを1本ずつ数え、ポケットに入れていく。
…43本。この短時間で相当採集したな。恐らく2匹で役割分担をして、採取していったのだろう。戦闘だけでなく、こういうところでも連携がとれるのは素晴らしいな。
フロルはガーショを数え終わると次は1匹ずつイートラットの尻尾を切っている。
「…18体ね。すごいわね。この短時間でこの数は…」
フロルは静かに驚いている。…ちょっと引いているようにも見えるが。
イートラットとスティンカーはそれほど強くはない魔物とは言っていたけど…素直にこれだけの数を討伐したのは凄いと思う。
この短時間でこの数だからなぁ。ハルもロゼリールも力を着実につけているんだなと思うと嬉しい。
ハルもロゼリールも俺の方を見つめ、達成感に満ちており、自慢げに私達これだけ倒せるようになったよ!と言ってるかのようだけど…
とはいえ、ガーショもかなり採取しているし、その上でこれだけ魔物を倒しているからな。凄いことには変わらない。
俺は2匹を褒めて撫でると2匹はとても嬉しそうに微笑んでいる。
ははは。こうやって撫でていると可愛いが、俺の見てないところでどれだけ無双していたのか…ハルもロゼリールも頼りになるなぁ。
「しかし多いわね。イートラットがこの短時間で18体、スティンカーが9体か。」
フロルが神妙な顔つきで積まれたイートラットとスティンカーを見てそう呟く。
うーん。その量が多いのか少ないのか…俺は良く分からないからなんとも言えないが…
「初めてマルスーナに来たけど…この量って異常なのかな?」
「私は薬草採取のクエストしか受けてないから断言はできないけれど…薬草採取の時にこれだけの数見た事無いわ。イートラットに関してはギルドにクエストが貼ってあったから大量に発生しているのでしょうけど…」
普段はこんなに出会わないってことか。ハルもロゼリールもガーショ採集をしていただけだろうしなぁ。わざわざこっちから仕掛けることもないだろう。現にガーショの本数が多いし、見つけて討伐している暇なんてないだろうしなぁ。
「私もフロルのお手伝いでたまーに薬草採集のクエストをやるけど…こんなに現れた事ないわ。ね?ピグミィ。」
「ぶぃー。」
ミリーとフロルの2人とピグミィもそう言ってるしな。間違いはないのだろうが…
ん?たくさん積まれたスティンカーの中になにやら他のと若干違う奴がいる気がするんだけど…
「ねぇ?こいつだけ色が違ってない?」
その1体は色味が1体だけ違っておりすぐに目に入った。
8体のスティンカーは大小はそれぞれ違うものの浅黄色をしている。が、その1体は藍色をしているので目立っている。
鑑定スキルを使うと、他の8体は《スティンカー》と出ていたが、そいつは《スイートオウダー》と表示された。
うーん…完全に違う魔物なのかな?でも、鑑定の結果、名前が違うので恐らく別種の魔物だろう。
「言われてみればそうだねー!でも色がちょっと違うだけじゃないのかなー?」
ミリーは首を傾げている。なんにせよここにいる3人は冒険などの経験が少ないからなぁ。
もう少し、冒険者として慣れている人に聞く方がいい気もするが…
「そうね。私も初めて見る色だわ…まだお父さんも門にいると思うからちょっと聞いてこようかしら。」
確かにそれはいいかもしれないな。この周辺には現れない魔物かもしれないし、長年門番をやっているフロルのお父さんなら何か知っているかもしれない。
それにクエストもガーショは既にノルマを大きく上回っているし、イートラットもハルとロゼリールのおかげで数は稼げている。
イートラットのクエストは10匹以上は数に応じて報酬が変わってくるらしいので、一応はノルマは達成したと思っていい。あとは倒したら倒した分報酬が貰える。
「そうだね。一応クエストはクリアしたようなもんだし、あとは俺達でイートラットを倒せるだけ倒しておくよ。ミリーもそれでいいよね?」
「うん!フロルはお父さんのところに行ってきて大丈夫だよ!」
俺とミリーはフロルの提案を了承し、送り出す。
些細な違和感でも、注意するに越したことはない。実際この周辺にいない魔物ならば、冒険者や街の住民の生死に係るかもしれないしな。
「ん。ありがとう。ちょっと行ってくるわ。ちょっとこいつを預かるわね。」
フロルはスイートオウダーをポケットに入れ、街の方向に走っていく。
まぁ30分もあれば戻ってくるかな?
さて、俺達はイートラット等の魔物を討伐するとしようか。ハルとロゼリールはサクサク倒しちゃうけど、俺も実戦経験を積まないと。
「じゃあ俺達もイートラットの討伐をしようか。ハルもロゼリールもまだ大丈夫そう?」
「ピッ!」「ビッ!」
2匹とも元気な返事が返ってくる。休憩もしていたみたいだし、無理はしていないだろう。
「よーし!ピグミィ!私達も頑張ろうね!」
「ぶぃー!」
ミリーとピグミィのペアもやる気満々だ。ピグミィも気合が入っているのか、後ろ脚で地面を蹴っている。
さて、どうやって討伐していくかだが…
「でもさー、スイト?なんでこっちではあんまり見かけなかったのに、ハルちゃんとロゼリールちゃんの方にはこんなに出現したんだろうね?」
確かに。距離は離れているとはいえなにか理由もあるはずだが…
「もしかしたらある一定の方向からこっちの草むらに流れてきた…ってのは考えられるかな?」
「あー…なるほどなぁ。イートラットは単体であんまり行動しないしなぁ。それにスティンカーはイートラットの天敵だもの。ある方角からスティンカーに追われていたってのもあるのかなぁ?」
うんうん。スティンカーがある方向からこの草むら方面に向かってイートラットを追っていたから、スティンカーも一定数倒せているのかもしれないな。
「ハル。ロゼリール。こいつらってどっかの方角から来たとかって分かる?」
俺はハルとロゼリールに問う。
ハルとロゼリールは顔を見合わせたあと、ロゼリールが指を差す。ハルは隣でぴょんぴょん跳んでいる。
あっちには木々があるが…マルスーナの森ではないな。
「林の方ね!私とピグミィは何度か入ったことあるけれど…確かにこの拓けた場所よりかは遭遇する確率は高い気がするわね。」
なるほどな。そちら方面から多くこっちに追われていたという可能性が濃厚か。
まぁなんにせよフロルがお父さんのところへスイートオウダーを持って行っている。
今この場から離れるのは良くないよな。
フロルが戻ってくるまではここで討伐をしていた方が賢明だろう。
《イートラット》
大きなネズミのような魔物。大きさは20センチから40センチくらい。体色は灰色のものが多い
雑食で素早く、憶病ながらも食物の匂いを嗅ぎつけると襲ってくる。3~4体で行動していることが多い。
壁や小さな隙間も入ることができ、街の作物などを食い荒らすことがある。いわゆる害獣。
可食部も少なく美味しくないので食用としては向いていないので安価なため、冒険者が干し肉として携帯していることがある。
《スティンカー》
細長いイタチのような魔物。大きさは大体60センチくらいで、大きいものは1メートル前後にもなる。
体色は浅黄色をしている。
素早く、木登りなどもできる。雑食だが、イートラットを襲っては食している。イートラットの天敵。
非常に好戦的で冒険者を見つけては襲ってくる。
攻撃手段は、素早い動きからの噛みつきと、尻から出される悪臭。
相当臭いため、小さな魔物等は気絶する。
臭いでひるませてから攻撃をしてくるパターンもあるが、尻をこちらに向けてくるので悪臭を放つのは丸わかりである。
一度臭いがついてしまうと3~4日は匂いが取れないが、魔法で臭いを除去することができる。
肉はそれほど美味しくはないが、よく捕獲されるので安価で販売されている。




