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第77話 私もFなんだよねー。

「ふぅーご馳走様でした。とても美味しかったです。」


「あら。お口に合って良かったわ!」


 俺がフロルのお母さんにそう告げると、にっこりと笑ってそう返してくれた。こんなに美味しい鶏…久しぶりだったなぁ。

 なんかこちらに来てから美味しいものだらけな気がする。

 前世では食事も腹が膨れたらいい。くらいの感覚だったからなのか。どちらにせよゆっくり食事を摂るという事が前世ではなかったからなぁ。


「あー。美味しかった!お母さんご馳走様!ミリーもスイトも下げちゃっていいよね?」


 そう言って、フロルは俺とミリーの食器を重ねていく。


「ありがとう。いやー本当に美味しかったなぁ。」


 フロルは、にこっとして、食器を下げていく。

 冒険した先でその土地の美味しいものを食べるというのも楽しみのひとつになりそうだ。

 それに色々な出会いがあるのも楽しい。


「さてお腹も膨れたし…次はどこに行こうかな?スイトは何がしたい?」


 ミリーはそう言うが、あんた昼ご飯食ったって言ってたよな…

 うーん。何がしたい…か。マルスーナの名物は食べたし、お腹もそこそこ満足しているしな。食べる物以外だと名所とか…それか街の外を少し歩くのもいいかな。ギルドで見たこの界隈の魔物は把握しているし。


「スイト君はマルスーナ初めてって言ってたわよね。」


「うん。マルスーナどころか、ゴトウッドから出てきて初めて来たのがこの街なんだけどね。そもそも今回はソロでの冒険の練習…になるのかな?それが目的だったし。」


 そう。今回の目的はソロでの冒険。の練習だ。


「今はお昼過ぎだし、クエストを受けるってのもなぁ…」


 考えながらフロルがぼそっと言う。

 クエストかぁ。1日で終わるものや、数日間、数週間かかるものまで色々ある。

 まぁあくまで個人差はもちろんあるけど。と、リナさんが言ってたなぁ。


「クエストかぁー。俺受けた事ないんだよね。」


 そうなんだよなぁ。冒険者ギルドに登録はしたものの、クエストを受けたことはない。


「そうなのね。じゃあ3人でギルドに行って簡単そうなクエストがあればそれを受けてみない?夕暮れまで多分3,4時間ってとこだろうけど、そういうクエストって余っているものだし。」


 なるほどな。1日まるまるかかるクエストや、長期に渡るクエストはバリバリの冒険者が朝一で受けて、バイト感覚のクエストってのは余ってるってことかな?


「いいわね!あとはお母さんに連絡しなきゃだけど…」


「大丈夫よー。休憩中にミリーちゃんのとこに牛乳もらいに行くことになってるから、その時言っとくわよ?」


「本当?おばさんお願いしてもいい?」


「大丈夫よ!その代わり、危険なクエストは受けちゃダメだからね?」


「はーい!ありがとう!」


 これでミリーも行くことになった。

 これで数時間とはいえ、初めてのクエストを受注することになる。

 一体どんなクエストがあるのだろう?


「そうと決まれば行きましょ!私準備してくる!」


 そう言ってフロルは店の奥…家の方に走っていく。


「ミリーは準備とか大丈夫なの?」


「私は大丈夫よ?一応テイマーとしての最低限の装備は持って家を出てきているから。」


 ミリーを見るとベルトには小さなポケット1つと短刀が備わっている。

 まぁ何かあればポーションだってあるし大丈夫だろう。


「それにピグミィだっているしね?ね?ピグミィ!」


「ぶい!」


 ピグミィは自信ありげに鳴く。

 戦闘はみたことないが、ピグミィはドリルボアだ。火力はあるだろう。

 ハルとロゼリールも元気そうだし、ハルには治癒魔法もある。うん。大丈夫だ。


「おまたせー!じゃあ行こっか!お母さんいってきます!」


 フロルが凄い勢いで店の奥から走ってきた。

 しかし先ほどのエプロン姿とは違い、動きやすそうな服装。そして、ベルトを装着してポケットは2つ。俺達と違うのは、それなりの長さの片手剣が備わっている。


「今日の夜は多分暇だから大丈夫だけれど、日が暮れる前には帰ってくるのよ?2人も気を付けてね?」


 フロルのお母さんにそう言われ、フロルが真っ先に飛び出していく。


「あ、そういえば、お代は…?」


「いいのよ。私からの初めてのソロのお祝いだと思って。ね?それより女の子2人をしっかり守ってあげてね?」


 フロルのお母さんはにっこり笑って、俺にそう言ってくる。多少プレッシャーになるし…

 お代を払わないでいいって言うのが少し申し訳なくなるが…ここはご厚意に甘えるかな。

 それよりも何か食材になりそうなものがあればそれをお土産にしよう。


「じゃ!おばさん!いってきます!」


「すいません。ごちそうさまでした!いってきます!」


「はい!2人も気を付けてねー!」


 俺達が店を出て振り返るとフロルのお母さんは手を振って見送ってくれている。

 ミリーのお母さんも、フロルのお母さんも良い人だったなぁ。もちろん、ミリーもフロルも。

 旅先で良い知り合いができることを嬉しく思いつつ、鶏のスパイスステーキの味を思い出す。

 美味しかったなぁ…またこちらにきたら是非とも頂きたい。


 さて、俺達3人は冒険者ギルドに向かって歩く。

 しかし、今はもう昼を過ぎている。短時間で完了するクエストなんてあるのだろうか?


「陽が落ちるまであと4,5時間だとは思うけど…そんな短時間で終わるクエストなんてあるのかな?」


 俺は2人に問う。

 まぁ俺はクエストを受注したことないからなぁ…

 でも、フロルは暇を見つけては薬草採取などのクエストを終わらしていたって言ってたなぁ。


「私は主に薬草採取のクエストが多いけど、この人数ならそんなに時間もかからないでしょう?」


 なるほどな。単純な労働力はフロルからしていつもの3倍。テイムしている魔物を併せれば更に効率はあがるなぁ。


「だから私は薬草採取と一緒にもう1つ何か簡単なクエストを受けようかなって思ってるのよね。」


 薬草採取だけでは時間が余るのだろう。平行してもう1つ簡単なクエストを受けようって事か。

 難易度は分からないが、ランクの低いクエストを受けた経験があるフロルのいう事を聞いておいた方がいいよなぁ。


「その辺はフロルに任せるよ。冒険者とはいえ俺はまだクエスト受けた事無いし…」


「私もそんなに無いからなぁー。フロルに付いて行って一緒にこなしたことくらいしかないわ。」


「どんなクエストが残ってるか次第だけどね。スイトはクエストはこなしておいた方がいいと思うわよ?クエストをこなさないとランクが上がらないもの。」


 ふむ。そういえばアレイラさんはその辺の説明をしてくれてなかったな…

 ギルドカードを取り出し見てみると俺の冒険者ランクは〔F〕だ。


「私もFなんだよねー。まぁフロルの付き添いくらいだけだからなぁー。」


 そうか。ミリーもFか。ミリーの場合は牧場の仕事がメインだし、あまりクエストを受けるという事がないからだろう。


「私はこの間Eになったわ。まぁほとんど薬草採取とか、お父さんと一緒にクエストをこなして…って感じだけれど。」


 フロルはEか。こつこつと薬草採取をしたり、フロルのお父さんと一緒にクエストをこなしてランクが上がったのだろう。


「フロルは凄いなぁ。ってお父さんも冒険者なの?」


「ううん。お父さんは冒険者じゃないわ。だけれど、ギルドカードさえ持っていればクエストを受ける事ができるからね。それに付いて行ったの。それにこの剣もお父さんのおさがりよ。」


 冒険者ギルドを利用する人は全員が全員冒険者ではないという事か。

 現にミリーもフロルも冒険者ではないが、ギルドカードを持っているしな。


「ギルドのクエストや、食材、素材等を売って生計を立ててる人が冒険者って感じなのかな…」


「その認識で間違いないんじゃないかしら?」


 なるほどなぁ。アイナさん達は冒険者だったって言ってたし、そのお金で今はパン屋を経営しているんだろう。

 リナさんも冒険者って言ってたけど…リナさんはどうなんだろう?薬屋の主人だよなぁ…帰ったら聞いてみよう。


 


 

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