第54話 それか、リナさんが特別なのか
第54話掲載させて頂きました。
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俺達は池へと歩いて行く。陽はまだ高く、夕方まであと少し。といった感じだ。
数10分歩き池へと着くと、前回来た時と同じように花が綺麗に咲いている。周りを見渡しても人はいないようだ。
俺達は前回来た時と同じように花畑から少し逸れた丸太に腰をかける。
「ふぅー。スイトは大丈夫?疲れてない?」
そりゃー…普段よりは疲れてます。
肉体的には大丈夫だけれど、色々と…まぁリナさんとのイベントもあったし。
それに蜜蜂族の件もあったしなぁ。1回の、しかも1泊2日程度の冒険でこれほど色々な事があるのだろうか?いやないだろう…
「色々ありましたからねぇー…疲れてないって言ったら疲れてるかも…今日はぐっすり眠れそうですよ。」
俺は、笑いながら隣に座るリナさんに言う。
ハルは花畑をピョンピョン嬉しそうに跳び、ロゼリールは花畑を楽しそうに飛んでいる。
時折花に触りながら、止まっているところを見ると、蜜でも吸っているのだろうか?
「そうね。でもスイトにとっても良い勉強になったんじゃないかしら?冒険の基礎はある程度教えられたと思うけれど…」
うん。ある程度冒険とはどういうものか。というのは学べたと思う。実戦も含め、非常に今後、冒険するときの基礎は出来たし、敵の魔物の特徴や対戦を含めた実戦的な事も出来た。
それを踏まえた改善点を家に帰って思い返そうと思っている。
「そうですねー…でも俺はまだまだで3人に付いて行くのがやっとでした。」
3人の手際の良さ、連携を見つつグランさんのリーダーシップの高さなど学べる事が非常に多いと思った。
冒険に出るまでは不安と緊張などが一番最初にきていたが、徐々に薄れていったのも確かだ。それでも段取りなどはまだスムーズにできる気はしないが…これは回数を重ねていけば自ずと身について行くだろう。と今では思える。
「うーん。私達は旅慣れているし、この世界でずっと暮らしてる訳だしなぁ…こっちの世界にきて1ヵ月にしては上出来だと思うわよ?合格よ。合格!」
ハルとロゼリールを見ていたリナさんは俺の顔を見てにっこりと笑う。
しかし俺がやったのはビッグフロッグとの戦闘とお茶を淹れたくらい…
1人だと状況把握などまだまだな気はするが…
「それにあたしも久しぶりに楽しかったなぁー。いつもは1人だったし、たまにアイナさん達と一緒に3人で出かけるってのばっかりだったしね。そこにスイトが加わって、素敵な出会いもあって…」
またリナさんはハルとロゼリールを見ながら話す。
俺も冒険としてはまだまだ不慣れだなぁ。とか、足引っ張ってないかなぁ。などと気を遣ったりはしたけれど…それでも自分の今ある力を最大限に出し切ったと言える。それにそれを抜きにすれば、俺もこの冒険は非常に充実したものだったし、楽しかった。
「俺も楽しかったし色々勉強になりましたよ?それに加えリナさんの新しい一面が見えて、楽しかったです。」
俺はちょっといたずらっぽく笑いながらリナさんに言う。
冗談と捉えられるかもしれないが、実際嬉しかった。リナさんとも腹を割って話せたし、距離が一層縮まった気がする。
「こーらー。スイトまでからかわないでよねー。」
リナさんは頬を膨らまし俺の頬をつんつんとつつく。
夜の会話がなかったらもっとお互いの距離は遠かったんじゃないかなぁ。
一緒に住む上でお互いいい意味で距離が縮まるってのは大事なんじゃないだろうか?
うーん…1人暮らしが長かったから断定はできないけれど…
「それに…また賑やかになるわねー。今度はロゼちゃんも増えて。」
確かに。2人と1匹から今度は2人と2匹になるんだ。今以上に賑やかになるのは間違いないだろう。
しかしハルとロゼリールは仲が良さそうに見える。さっきまで別で遊んでいたが、今はロゼリールがハルを抱えて空を飛んでいる。
いつも見ない視線からだからか、ハルは嬉しそうだ。
「すいません…さらに騒がしくしちゃって…」
リナさんはなんとも思っていないだろうが、俺の仲間が増えるということは少なからずリナさんの負担が増える可能性があるということ。ましてや俺は居候の身だ。
「いいじゃない。あたしは賑やかなの楽しいからなんとも思ってないわよー?それに今の生活も前より楽しいもの。なんか家族が増えた気がして嬉しいわ。ロゼちゃんもいい子だしね。」
家族…か。リナさんがそう思ってくれているのなら俺も気が楽になるなぁ。
しかし家族かぁ…リナさんと家族なぁ…でも俺がずっといる限りリナさんは恋人の1人もできない訳でそれはそれでなんか申し訳ないな。
というか恋人が出来たら俺は独り立ちしないといけないのか。
うーん…今回の冒険の報酬がいくらになるか分からないがリナさんに借金を返したら、少しずつ貯金をしていった方がいいかもしれないな。
「そう言ってもらえると助かります…でもある程度基盤が出来てきたら出ていかなきゃいけないですよねぇー。」
「え?いいじゃない。あたしは全然構わないわよ?」
リナさんは何言ってんの?って顔でこっちを見る。
えぇ…ずっといてもいいのかな。さっきも言ったがリナさんの恋人ができるかもしれないし、なにか環境が変わるとも言い切れない。それは逆に俺にも言える事で、万が一…億が一俺にも恋人ができるかもしれない。
それに今はハルとロゼリールの2匹だが仲間が増えないとも言い切れないし…
2匹とも家に収まるサイズだから今はいいが、もし収まらないような魔物が仲間になったら、それこそ迷惑だろう。
「だって色々あるじゃないですか。その…もしリナさんに恋人とかできたら出ていかなきゃいけないでしょう?」
「あはは!大丈夫よ。あたしと話してる男の人なんて、数える程度よ?それはスイトも知ってるでしょ?」
まぁ確かにそうなんだが…それでいいのだろうか?
リナさんがいいなら今は甘えるとして…
「でもまぁ、スイトに恋人ができるかもしれないもんなぁー。カッコいいし性格もいいし。」
そのままそっくり返させてください。可愛くて、性格もいいリナさん。
まぁ、俺もこっちにきて1ヵ月。話したことある女性なんて、リナさん、アイナさん、ルナリス、アレイラさん、ルーリアさんくらいか。
それに、俺は女性に免疫がないからなぁ。ま、恋人なんて夢のまた夢のまた夢くらいだろう。
「あはは。逆にそれもないですよ!だって俺女性に免疫ないですもん!」
「そうねぇー。でも1ヵ月で大分あたしとは普通に喋れるようになったし表情も豊かになってるわよ?」
そういえば…最初は緊張していたし、どこか気を遣って話してはしてたけれど、徐々に気を遣わず普通に喋れている気がする。
慣れってことなのかな…?
「それだけこっちの世界に慣れてきて余裕が出てきたってことかな?なんにせよ良い事よね。」
「それか、リナさんが特別なのか…」
「え?」
2匹を見ていたリナさんが驚いたようにこっちを見る。
いや、普通に特別なのは事実なのだが…色々あってこっちの世界に来たのもそうだけれど、やっぱりリナさんがいなければこっちの生活は成り立っていないし。
「もう…ちょっとドキッとしたじゃないの…不意打ちよ不意打ち!」
そんな事言われましても…
でも怒ったリナさんも可愛いなぁ。
「本当に…あー!そろそろ帰りましょっか。家に着いたら色々やる事もあるしねぇ。」
「そうですね。そうしましょっか!おーい!2人ともー!そろそろ帰るぞー!」
俺はハルとロゼリールをこっちに呼ぶと、ハルを抱えて飛んでいたロゼリールがそのまま俺の元へやってくる。
俺とリナさんも立ち上がって歩き出す。
帰ったら晩御飯も作らなきゃいけないし、冒険も終わったし道具の整理と…あ!ライフカードも確認しなきゃだな。あとはロゼリールの寝る場所と…
ともかく帰ってからも大忙しな1日はまだまだ続きそうだ。




