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第52話 これを数滴入れてみましょうか。

第52話掲載させて頂きました。


毎週月水金の18時~19時頃に掲載を予定しております。


ブックマークも40件を超え、評価も180PTを超えました。本当にありがとうございます。


レビューや評価、感想などを頂けると今後の創作意欲に繋がります。

またご指摘や、こうした方がいい等、助言も頂ければなと思います。

 紅茶とは何か。

 リナさんはずっとうーん…と考えている。


「各々色々な楽しみ方がある。ってことでいいのかしら?それに紅茶とひと口に言っても色々なものがあるのでしょう?」


 なるほど。確かにそうだ。

 薬屋でもあるリナさんは飲みにくい薬草などを調合し、少しでも飲みやすく摂取できるように色々研究をしている。


「確かにそうね…ロゼマーリティーなんかはどちらかというと王道とは外れているし、血液の流れを良くしたり疲労回復や冷えに効果があるけれど…少々癖があって好き嫌いが分かれるもの。」


 確かにこの爽やかな味わいは普通の紅茶とは違い、好き嫌いも分かれるだろうな。


「そもそもがロゼマーリって茶葉ではないのよね。香草とか薬草の種類だし…」


 え…そうなのか。だから独特な癖があったのか。

 前世で言うハーブティーみたいなものだろうか…


「そうですのね。ロゼマーリは紅茶の茶葉ではないと…でも、これはこれで私は好きですけれど…万人受けはしなさそうですわね。リナさんが言うように健康には良さそうだし、朝とかスッキリしたい時にはもってこいだけれど…あ!そうだわ!」


 エマは少し考え、何かを思いついたようにお付きのソルジャービーを呼び、耳打ちをする。

 ソルジャービーは飛んでいきすぐに小瓶に入った濃い黄色…黄金色の液体を持ってくる。それをエマへ渡し、また去っていく。


「これを数滴入れてみましょうか。」


 そう言うとエマは手に持った小瓶の液体を数滴カップに入れる。


「えぇやっぱり!これで特有の強い香りが少し和らぎましたわ。これである程度は飲みやすくなるんじゃないかと。」


 にっこり笑ってエマは小瓶を俺達に回す。俺達もエマを見習って少量入れてみる。

 ん!これは…ハチミツか。ほのかに甘味が広がりハチミツ独特の風味もある。

 ロゼマーリティーの独特で強い爽やかさと香りが中和されほど良く甘味を感じられる。

 何も入れなくても自分はスッキリとしていて好きだが、これはこれで万人受けするんじゃないかと思う。


「これは…これなら独特な風味が苦手な人も飲みやすいわ!」


「おぉ!実はロゼマーリティーは少々苦手だったが俺でも美味しく飲めるぞ!」


 リナさんをはじめ、グランさんも高評価だ。

 エマはそれを聞き満足げに頷いている。


「私達のハチミツには甘味はもちろんのこと、色々な栄養が含まれてます。紅茶と併せるとさらに効果が高まると思いますわ。」


 確かに。前世でもハチミツは甘味だけでなく、色々な栄養成分が含まれていると聞いたことがある。それに飲食だけでなく、美容や健康にいいとも。


「ハチミツは栄養価も豊富と聞くわね。まぁ…なかなか手に入る代物ではないけれど…」


 あぁ…そうか。蜜蜂族のハチミツは希少価値が高く高価だって言ってたなぁ。

 グランさんが言ってたハチミツを入手するにもソルジャービーからの攻撃という危険性もあるし、そもそも巣がなかなか見つからないとも言ってたし、それは珍しいものなのだろう。


「そうですわ。ハチミツは私達にとっても大事な栄養源だし食料ですの。なので兵士達は追っ手がいると察知したらまず追っ手を撒きますし、ダメであれば迎撃もしますわ。それに巣も滅多に見つからないようにしてありますの。」


 なるほどな。確かに蜜蜂族の本家であるこの巣も普通に冒険していたら見つからないだろう。

 出入口は上手く葉や草でカモフラージュしてあるし、そもそも普通に冒険していたら道ではない場所にある。


「しかしこの巣である洞窟に入った際にほのかに甘い香りがしていたが…匂いでバレることというのはないのか?」


 グランさんがエマに問う。

 そういえば、この洞窟に入ったらすぐに甘い香りがした。恐らくハチミツの匂いなのだろうが…

 鼻が利く魔物や冒険者などにバレることはないのだろうか。


「それも心配ありませんわ。先ほど門番と言っていたぬめぬめむしがいたでしょう?代々私達に仕える者なのですが…あの者が甘い香りを吸収し周りに漏れないように別の匂いを出してますの。」


 なるほど。あのぬめぬめむしがこの巣の秘匿性に一役買っているのか。

 それにロゼリールがやってきた時に木の上から現れたし、何か怪しい者がいたら巣のソルジャービーに伝達しているのだろう。


「それにこの巣は色々なところに外部と繋がった穴があると言いましたわね?空気を入れ換えるための穴と言いましたけど、その役目を担っている穴ももちろんありますが、ソルジャービーなど蜜蜂族が出入りする穴というのは他にもありますのよ。」


 ほう…俺達が入ってきた穴以外にも出入口があると。


「ということはエマのこの巣というかお家には色々出入口があるんだな。」


「えぇ。もちろんハチミツの匂いを分散させるという目的もありますが、入口を数か所に分けて作る事によって色々な箇所で兵士達が見つかりますわ。それに皆様方が入ってきた入口というのは、この巣で唯一地上に面している出入口ですの。その他の出入り口はおおよそ人間では踏み入ることのできない場所にありますわ。」


 なるほどなぁ。出入口はたくさんあるが、唯一この巣に踏み込まれる可能性があるのが俺達が入ってきた出入口だと。それでもその出入口は秘匿性に長けていたので、エマの言う通りその他の出入り口はよっぽど見つからない可能性が高いうえに、人間では入る事のできない場所にあるのだろう。ソルジャービー達は飛べるしなぁ。


「そういう事か。俺もこの界隈は良く散策しているが色々なところでソルジャービーを見掛けたからな。」


「えぇ。別の巣のソルジャービーということもあり得るでしょうが…それに色々な箇所にハチミツの原料となる花畑や花ができる木がありますわ。そう言った場所への利便性や秘匿性なども加味して出入口があるのです。とはいえこれは、先代よりも昔からある出入口だそうで、この話も私が幼い頃言い伝えで聞いただけではありますが。」


 この巣は蜜蜂族の本家だ。その出入口も本当に昔からある出入口なのだろうな。

 しかしひとつ疑問が浮かび上がった。


「エマさん。もしロゼリールがビッグフロッグに襲われずに巣を作る場合は新しく巣を作ることになりますが…その場合安全性などは大丈夫なのでしょうか?」


 これはロゼリールだけでなく、他のクイーンビーにも言えることだ。原則として1つの巣にクイーンビーは1匹。新しく誕生したクイーンビーは巣作りのために外の世界に飛び立っていく。

 もちろんロゼリールのように襲われる可能性だってあるだろう。


「そうですわね。ある程度目星がついた場所に巣作りをするのですが…日数にして2,3日で出入口などは作り終わります。そしてそのあと中を拡張して…ということになりますが道中襲われることもザラではありません。」


 そうだよな。移動中に危険にさらされることも多々あるだろうし、ずる賢く冒険に慣れた冒険者なら巣を作り次第、ハチミツが溜まってきたタイミングで巣を襲撃。なんてこともあるのだろうか。

 なんにせよ希少で高価とはいえ、蜜蜂族のハチミツが市場に出回っていることがあるのは事実らしい。

 その出回っているハチミツは恐らく蜜蜂族同意の元での採取でないのだろう。


「それでも色々とクイーンビー達は対策を取ってますのよ。例えばこの巣ですと、他の出入り口は人族や他の魔物が入りづらいところに設けてあります。皆さんが入ってきた唯一の出入り口ですが…少々大きな木がありましたでしょ?あれトレントなのです。」


 トレント。グランさんの話では木に擬態した魔物ということだが…


「トレントは色々説があって木に擬態している魔物。もう1つは木に魂が宿ったものと言われております。トレントは色々種類がありますが、どの個体もスピードは遅いですが動けるのです。」


「なるほど。蜜蜂族の巣の出入り口付近にトレントを置いて侵入する冒険者や魔物に奇襲をかけるという感じか。」


 グランさんは納得したように頷く。

 確かにこの巣の出入り口の大きな木。トレントには誰も気づいた様子はなかった。俺はともかくとして他の3人が気づかないのだから並みの冒険者では無警戒だろう。


「あたし達は気づいていたけれど…ロゼリールちゃんの合図でトレントからぬめぬめむしが降りてきた時に、あー…ロゼリールちゃんの知り合いなのかな?とは思ったわね。それに襲ってくる気配がなかったし。」


「そうだな。それにあのトレントが敵対するならロゼリールが教えてくれるだろうしな。」


「リフルも何も言わなかったものねぇ。襲ってくる気配があるトレントには真っ先に反応するのに、なにも反応しなかったものねぇ。」


 …なんだ。気づいていないのは俺だったのか…

 俺もいずれ危険を察知したり、擬態している魔物を発見できるようになるのだろうか…


「まぁ。2人は鋭い観察眼をお持ちなのね。隣でスイトさんが落ち込んでますが…まだテイマーになって日が浅いのでしょう?経験を積めば見えてくるものは必ずありますわ。」


 エマがにっこり笑ってフォローを入れてくれる。

 そうだよなぁ…この2人とアイナさんと俺を比べたら経験値は雲泥の差だ。俺も早く追いつけるようになりたいが…今は焦る事ではない。とエマは言ってくれているのだろう。


「それにロゼリールが心を許しているんです。自信を持ちなさいな。ただの冒険者ならこの娘もついて行く気にならないでしょう?」


「ビビッ!」


 今度はロゼリールが俺の正面に飛んできてニッコリ笑う。

 ロゼリールは蜜蜂族の跡取りで、俺はそのテイマーだ。経験を積む…には時間を要するが、少なくとも認められている。ならばロゼリールの為にも自信を持たなければ。


「エマさん、ありがとうございます。ロゼリールも…頼りないかもしれないけどよろしくな。」


「ビッ!」


 ロゼリールは大きな声で返事をする。エマはうんうん頷いている。


「話を戻すが…という事はトレントとも交流があるという事だよな?」


 グランさんはエマに向かって問う。

 確かに蜜蜂族との友好の証を持っていたら敵対する他種族には襲われることがなくなるとエマは言っていた。

 トレントは擬態をしているらしいし、現に俺は気づかなかった。今後1人で冒険をした際に、不意打ちを喰らうことも大いに考えられる。


「えぇ。トレントとは共存の関係にありますわ。なので先ほどお渡しした友好の証を持っていれば、トレントに襲われることはないでしょう。むしろ…」


「むしろ?」


「あなた方のお役に立ってくれるかもしれませんわね。中には実をつけるトレントもいますし。」


 なるほど。実を分け与えてくれるかもしれない。という事か。

 それに襲われる可能性がゼロというのは非常に安心できるな。


「まぁ!トレントの実は普通の木の実に比べ栄養価も味も段違いで良いのよ!危険を冒さず譲ってもらえるならありがたいわね!」


「リナさんはお薬屋さんですものね。トレントの実は良質な薬の材料になるかもしれませんものね。」


 トレントの実は味、栄養価、効能どれも普通の木より良いのか。

 ただ欠点はトレントに襲われるかもしれないってことで。


「敵対するトレントなら攻撃しても構いませんわ。ただ…この巣のように私達一族の巣を守ってくれているトレントや友好の証を持っていることで、お役に立ってくれるトレントもいるかもしれません。そのトレントには危害を加えないようお願いします。」


 トレントのいる場所には蜜蜂族の巣があるかもしれない。ということか。

 確かに門番がいなくなって手薄になってしまったら、蜜蜂族も危ないもんな。

 俺達3人はもちろん分かった。と頷く。


 さてお茶もなくなったし…まだ話が続きそうなのでおかわりでも用意しようかな?

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