第48話 この娘は普段からお転婆でしてね…
第48話掲載させて頂きました。
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「皆様。良くおいで下さいました。」
透き通った気品のある声が俺達に話しかけられる。
声の主は恐らく目の前の女王蜂…クイーンビーなのだろう。
しかし大きいな…俺が助けたクイーンビーは大きさ60センチ程。だが、目の前にいるクイーンビーはそのクイーンビーの倍ほどの大きさだ。
「話は門番から聞いております。どうぞお寛ぎください。」
目の前のクイーンビーに言われ俺達は地面へと座る。
クイーンビーの両隣には槍のようなものを持った2匹のソルジャービー。俺達の横にも両隣並ぶように5匹ずつソルジャービーが横並びに並んでいる。
そして門番…と言われたのは恐らく1匹のぬめぬめむしだろう。ぬめぬめむしが門番…
しかし、このクイーンビーは俺達の言語を話している。
「私が皆様と同じ言語を喋っているので驚かれるかと思いますが…歳を重ねるとこのようなこともできまして…お気になさらずに。まずは、娘を助けて頂きありがとうございました。」
クイーンビー…まさに女王という感じだから女王蜂でいいか。女王蜂は俺達に向かい一礼をする。
「俺はグランと言う。一応人間界ではモンスターテイマーという職業についている。一応この4人でのリーダー…代表をやっている。冒険中に倒れていたので一晩保護をしたんだが…」
「私はアイナと申しますわ。私もモンスターテイマーでグランの妻をやっております。で、私のパートナーのイエルムとリフルですわ。」
「ピィ!」
「ピー!」
「あたしはリナ。パーティの一員よ。」
「俺はスイト。リナさんの親戚です。モンスターテイマーになりたてで…こいつがパートナーのハルです。」
「ピッ!」
俺達4人は女王蜂に軽く自己紹介を、パートナーがいる俺とアイナさんはパートナーの紹介をする。
「すみません。私から挨拶すべきだったのですが…私はエマリール。と申します。聞けばスイトさんとハルさんに助けられたとか…どうもありがとうございます。」
女王蜂…いやエマリールさんは俺とハルを見てにこりと笑い礼をする。
まぁ確かに俺とハルが今回の件で一番動いた…のかな。
「エマリール…ということはこの森の女王と呼ばれているのはあんたなのか…」
グランさんは驚きつつもエマリールに問う。この森の女王?蜂だけじゃなくて?
「そうですわね。とは言えこの森と言うと些か語弊がありますが…この森の虫系の魔物と言いますか。を統べているのは私ですわ。」
「そう…でしたか。失礼な発言をしてしまい申し訳ない。」
「いえ、お気になさらず。見たところによるとあなた方は世界樹の木陰の住人。そして娘の恩人でもあります。どうか畏まらずに。」
グランさんとエマリールさんのやり取りが終わる。グランさんが敬語を使っているところをみると、相当に偉い方…なのだろう。
「兵士によると、河原までの道のりにて襲われていた痕跡があり、ビッグフロッグ4体の亡骸の痕があったとの報告がありましたが、詳しくお聞かせ願いますか?」
アイナさんとリナさんが俺に視線を送る。
俺が代表して話せってことか。
俺は河原を歩いていたら何かがビッグ2匹にやられていたこと。そのビッグフロッグを倒し、ハルの治癒魔法で回復をし、野営地にて保護したこと。一晩明け元気になって話を聞くとここに案内すると言われたこと。を思い出し話す。
その間にエマリールさんはうんうんと頷いている。
「スイトさん。この度は本当にありがとうございました。恐らくお付きの兵士はビッグフロッグにやられてしまったのでしょう。さすがにこの娘でもビッグフロッグ4体を相手にはできませんわ…」
エマリールさんは落ち込みながらそう俺に語る。それでも若いこの娘が4体を相手にしながら2体も倒せられるとは…と驚いていた。
「この娘は普段からお転婆でしてね…他の娘と違い巣から出ては他の魔物に攻撃して…そのおかげもあってか、他の同い年ぐらいのクイーンビーと比べても戦闘力は頭一つ抜きん出ていて…」
そうなのか?さっきは俺の横で優雅に紅茶を飲んでいたが…クイーンビーを見ると、そっぽを向いている。恐らく図星だろうな。
「しかしお付きの兵士を失ったのはお悔やみ申し上げます。で、俺もグランさんに聞いたところによると、新しく生まれたクイーンビーは巣を出る際にお供を連れて新しい巣を作る。と聞いていたのですが…お供のソルジャービーがいないと何かと問題があるんじゃないかと思いまして。」
俺はエマリールさんにそう問う。ただグランさんから聞いた話ではあるし、グランさんは魔物について詳しい。だが、クイーンビーの生態についてや、ソルジャービーについては知らないこともある。なので、これの質問が正しいのか間違っているのかは分からないが…
「ええ。仰る通りですわ。この娘はお転婆でしたが、それでも可愛がられていました。そして気が知れるソルジャービーをお供に付けたのですが…この娘も無念だったでしょう。」
「ビッ…」
エマリールさんの言葉にクイーンビーは少し悲しい表情をする。まぁ仲間の、それも気が知れる仲間がやられたんだ。悔しい訳がない。それで2体ビッグフロッグを倒したもののさすがにあとの2体は…というところだろう。
「しかしこの娘の…そしてお付きの者の無念も、スイトさんとハルさんが倒してくれたことによって多少は晴れたことでしょう。重ね重ねありがとうございました。」
またエマリールさんに丁寧にお辞儀をされる。それほどの事をしたのか…まぁ、でもお礼を言われるというのは素直に嬉しいことだ。
「さて、そろそろ話を進めたいのですが…お前達。この方達は信用できる方々です。下がって良いわ。」
エマリールさんは口調を変え護衛のソルジャービーを全員下げる。
そして、門番と言われていたぬめぬめむしもソルジャービーに抱えられ、広間の入口から出ていく。
「ふぅ…どこから話しますか…実は先日の長雨でビッグフロッグが行動範囲を拡げておりまして、色々なところにある巣の兵士がやられていると聞いている次第でして…」
なるほど…ソルジャービーの天敵はビッグフロッグだ。なおかつ、行動範囲が拡がったおかげでやられている個体も増えているということか。
「なのでこちらから兵士が足りなくなった巣へ兵士を送っていたのですが…私がクイーンビー達の長であり、足りなくなった兵士の補填をするのも私の務めではありますが、こちらの兵士を減らし過ぎて警備を疎かにしてしまい、私がやられてしまえば、森の蜂達が混乱に落ちてしまうという事もあります。」
なるほどな…森の蜂達、虫達の女王であるエマリールがやられては、次の長を決めるのに混乱を招き戦争まで起きてしまう可能性がある…という事かな?
王が没してしまったら次の王を決める。そこで色々争いが起きるのは人間も一緒だ。
「そして敵はビッグフロッグだけではありません。失礼ながらあなた方人間も脅威になり得るのです。」
確かに、グランさんがソルジャービーのあとをつけて巣を発見してハチミツを採取する。と言っていたな。まぁその前に撒かれるか撃退されると言っていたが…
「まぁ兵士達は追い払うか撃退をしますが、巣が見つかってしまった場合、ビッグフロッグよりも脅威になり得ます。」
ビッグフロッグはソルジャービーを餌として見ており、巣には恐らく無関心だろう。
しかし人間はハチミツが貴重でそれを求めている。
もし、巣が見つかってしまえばその巣はもちろん、クイーンビーやソルジャービーもやられてしまうだろう。
「じゃあなんで俺達は今、エマリール…様とこうやって話せているんですか?」
グランさんがエマリールさんに問う。
確かにクイーンビーやソルジャービー等の蜜蜂族にとってビッグフロッグだけでなく人間も脅威になるんじゃないだろうか。
「エマリールで構いませんわ。やられていたこの娘を助けて頂いたんですもの。普通なら何かに利用したり、売り飛ばされていてもおかしくありませんわ。むしろ、それが普通の人間の行動でしょう。だけれど、このようにこの娘をこの巣まで送って頂けた。それだけで私は感謝をするに値すると思っています。それに4人共世界樹の木陰から来た…という情報も受けております。他地方でしたらまだしも、世界樹の木陰の住人がそうしてこちらまで来られたんですもの。それだけで信用に値しますわ。」
世界樹の木陰の住人だから…って凄いな。それだけで信用されてしまうのか。
というかある程度はエマリールさんに筒抜けなのか。これも森の女王たる所以なのだろうか…
「まぁ私は森の女王エマリールです。この界隈の色々な情報はここに集中しますのよ。それに…ある程度の冒険者ならば、私と兵士でどうにかできるでしょう。」
なるほどなぁ。クイーンビーもソルジャービーも恐らく賢い種族なのだろう。それでいて単体ならばビッグフロッグさえ凌駕してしまう戦闘力もあると。
「ただラッキーだったのは…皆様モンスターテイマーであったという事でしょうか。魔物の知識もあり理解がある。他の冒険者に比べ、私のお話も頭に入れていただけるのではないか。と。」
俺達4人のうち3人はモンスターテイマーだ。まぁ魔物を仲間として一緒に旅をしている。なのでまだ魔物の話などに対して寛容だ。そもそもクイーンビーを保護している時点で、危害は加えられない。と思われていたのかもしれないな。
「それにこの巣に足を踏み入れた人族はあなた方が初めてではありません。私の遥か何代も前、それこそ私も幼少の頃におとぎ話のような感じで聞いたのです。先祖が招き入れた人族は世界樹の木陰のモンスターテイマーだったと。」




