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第34話 "感謝"と"信頼"

第34話掲載させて頂きました。


当初の予定を変更して、毎週月水金の18時に掲載を予定しております。


ブックマークも10件を超え、評価をつけて頂けた方もいるようです。本当にありがとうございます。

レビューや評価、感想などを頂けると今後の創作意欲に繋がります。

またご指摘や、こうした方がいい等、助言も頂ければなと思います。よろしくお願いします。

 ビッグフロッグを退治して、俺達は更に歩いて行く。

 道中ぬめぬめむしがいるくらいで他の魔物には出会わなかった。

 そして2時間くらい歩いただろうか。前世では2時間も歩きっぱなしだと相当疲れているだろうが、そこまで疲れてはいない。

若返っているっていうのもあるが、身体能力も前世に比べ間違いなく向上しているからだろうか?

 道なりに歩いていくと横道がありそちらを歩いて行く。10分くらい歩くと、広場のような場所に出た。が、冒険者や人はいない。


「よーし!着いたぞー。早速テントを張るか。」


 グランさんが立ち止まりそう言った。

 ここが今回の目的地なのだろうか?

 広場と言っても、小さな公園くらいの広さだ。4人で野営をするのなら丁度良い広さではある。

 そして長い事色々な人が使っていたのだろう。石を組んだかまどの跡や、ベンチ代わりの丸太などが残っている。


「ここはあんまり人が来ないスポットなのよねぇ。だけれど冒険初心者やレベルの低い冒険者はここを利用する人がいるわ。ゴトウッドからでもマルスーナの街や村からも野営の練習や冒険の練習をするには距離的にもちょうどいいもの。」


 確かに出る魔物も脅威にはならないし、俺のような冒険初心者でも1人だと危険かもしれないが、3,4人のパーティならばさほど危険にさらされる事はないだろう。

 そして、ゴトウッドからなら途中の広場まで2時間、そこからこのキャンプ地まで2.3時間と野営の練習をするには、距離的にも周囲の魔物的にも丁度いいのだろう。


「さ!スイト、テント張るわよー?」


 リナさんは持ってきたテントを広げながら俺に言う。

 そうだ!夜はリナさんと一つ屋根の下…もとい一つテントの中で…

 まだ夕方頃だってのにドキドキしてきたぞ。なんせ女の子と二人きりで寝るなんて、今までなかったんだし…

 あれ?というか俺ってこっちの世界に来てからずっとリナさんと一つ屋根の下だったんじゃないか?まぁでも部屋別だし…考えてなかったがそれこそ一つ屋根の下。だ。

 まぁでもリナさんからしてみれば保護者のようなもんなのかなぁ…


 色んなことを悶々と考えながらテントを張っていたがすぐに張れてしまった。

 おぉ。こうやって見るとなかなか大きいな。

 中に入ると5メートル四方くらいの空間が出来上がっている。

 これなら2人とハルでもゆったり寝れるだろう。

 …もっと狭かったら…と妄想してもどうせ俺にはなんにもできないんだろうな。賢者ですし。はい。


 さて、テントを張り終わりふとハルの姿を探すとイエルムとなにやらまた話しているようだった。

 本当に仲が良いなぁ。イエルムの面倒見の良さには頭が上がらない。


「おぉー。テント張り終わったか。よし。まだ日が沈むまで大分あるから散策するもよし、休憩するもよし。火が沈むまで自由行動にしようか。」


「ならあたし森の中散策して、薬草や木の実でも採ってこようかな。」


「あ!リナちゃん!スイト君借りてもいいかしら?」


 アイナさんはリナさんに向かってそう言う。


「あたしはいいけど…スイトは?」


「俺も何していいか分かんないんで…アイナさんがそう言ってくれるなら付いて行ってもいいですか?」


「そうね…いいわよ!気を付けていってらっしゃい。」


「あらあら。じゃあちょっと借りて行くわねぇ。まぁ何するって訳でもないけれど、とりあえず水を汲みに行こうかなって。それに…」


 アイナさんはスライム達を見る。イエルムはハルに色々教えている。リフルはすやすや寝ている。


「あの子達ずっとあんな感じでしょう。一緒に連れて行った方がいいかなぁって。それに自分で言うのもあれだけど私の戦い方を教えてあげられればなぁって。」


「確かに。俺はグライアがいるが、スイトはまずハルとの呼吸を併せることが大事だな。その点アイナはイエルムやリフルと一緒にいるから何かスイトのヒントになるかもしれない。俺はテントで休憩して、荷物番でもしてるから2人で行ってきてもいいぞ。」


 そうだな…アイナさんはスライム使いだし、何か学ぶ事も多いかもしれない。やはり一緒に付いて行って何か身になる事があれば儲けものだ。

 それに、ハルもイエルムと一緒の方が勉強になるしな。


「そうね。アイナさんから色々教わってきなさい!じゃああたし行ってくるわね!」


 と言うとリナさんは森の中へ入っていった。


「リナさん1人で大丈夫なんですか?俺リナさんが戦っているとこ見た事なくて…」


「あらあら。リナちゃんは大丈夫よぉ。ほんっとに強いんだから!」


「あぁ。多分俺とグライアでも敵わないかもしれないぞ。というか昔はいつもソロで活動していたんだ。しかもこの界隈なら心配事はないだろう。」


 アイナさんとグランさんが言うなら大丈夫なんだろう。

 しかし…グランさんとグライアの戦いを見てたがグライアでもリナさんに勝てないのか…

 リナさんどんだけ強いんだろう…


「じゃあ、スイト君行きましょうか。グラン。荷物よろしくねぇ。」


「おう。気を付けて行ってこいよ。」


「すいません。じゃあちょっと行ってきます。ハル!行くぞ!」


「ピッ!」


 俺とアイナさんはそれぞれ水を入れるバケツのような物をそれぞれ持ち森の中へ入っていく。

 先頭にはイエルム。その横にハルが並び、2匹の後ろを俺とアイナさん。そして俺の頭の上に乗っているリフルだ。


「ごめんねぇ。スイト君疲れてないかしら?」


「全然平気ですよ。それに水を汲みにいかなきゃいけなかったんですし…」


「それなら良かったわぁ。スイト君はこの子達の戦いを見て何か感じたかしら?」


「そうですね…率直に連携がとれていると思いました。」


「そうねぇ。この子達は本当に頑張ってくれているわ。だから私も頑張らないとって思うのよぉ。ただ…世間ではスライムは弱い魔物っていう認識が多いわ。」


 やはりそうなのだろうか。俺も前世のゲームではスライムは強いイメージはない。それに、最初に倒した魔物もスライムだ。


「だけどこの子達は良くやってくれているわ。それに…強かったでしょう?」


「はい。イエルムもリフルも自分のできる事をしっかりやっている感じでした。」


「スライムの事は解明されていない事が多いわ。だけれど最弱ってのは嘘よねぇ。ちゃんと向き合って高め合っていければイエルムやリフルのように強くなれるわ。それに…」


「それに…?」


「スイト君とハルちゃんだって強くなれるわ。だから経緯はどうあれ同じスライムを扱うテイマーの先輩として教えられる事は教えていきたいのよねぇ。」


 グランさんもそうだが、アイナさんも色々教えてくれる。俺は今なんと恵まれた環境で生活しているのだろうか。

 リナさんももちろんだが、この2人にも感謝してもしきれない。


「ありがとうございます。俺もアイナさんとイエルムやリフルみたいな関係がハルと築ければいいなぁ…って思ってます!」


「あらあら。そう言われると逆にちょっとくすぐったいわねぇ。けれどスイト君。スライムは解明されていないことが多いわ。事実、ハルちゃんの事だって色々な文献にも載ってなかったでしょう?」


 確かに、文献では名前しか分からなかった上にルナリスからは回復魔法が唱えられて魔力量が多い。それしか分かっていない。

 故に今後ハルがどう成長するか分からないが、イエルムからスライムブローと光の魔法を教わっている。ハルが成長するのも俺次第…になるのかもしれない。


「ハルがイエルムから光の矢を教えてもらってましたが…練習すれば色々な魔法や技が使えるようになるんですかね?例えばリフルが火魔法を覚えたりとか。」


「無理とは言い切れないけど、得意不得意はあるわねぇ。リフルは草木に関する特技が得意だけれど、恐らく火魔法は苦手でしょう。イエルムの光の矢も教えてもらっていたようだけどねぇ…」


「魔力量とか魔法の素質があるとか…ってことでしょうか?」


「うーん…一概にはなんとも言えないわ。例えばグライアは魔法は使えないけれど、色々な特技が使えるの。獣族とスライム族では身体能力的にも全く変わってくるし。やっぱり種族等にもよると思うのよねぇ。」


 確かにそれはそうだな。スライムに牙や爪や足はもちろん無い。が、グライアにできなくてイエルムやリフル、そしてハルにできることだってある。

 ハルには光魔法の素質がある…ってことなんだろうか?


「その中で同じ種族でも覚えられる魔法が変わってくるってことですかね…要するにその魔物の素質みたいな。」


「そうねぇ。そうだと思うわ。まぁリフル、グリーンゼリーは植物には相性がいいわ。それでもちゃんと育ててあげないとダメよ?でももしかしたらイレギュラーで火魔法とかの素質がある子もいるかもしれないわねぇ。」


「種族種族に特徴があって、得意不得意もおおよそ決まっていて、他の魔法が使えるっていうのは嬉しい誤算…って感じになってきますね。」


「そう思って間違いないと思うわよぉ。だけど野生の個体はイレギュラーで別の魔法が使える。って話は聞かないわねぇ。この辺で言うとドリルボアが回復魔法だとか、ビッグフロッグが光魔法だとか。もしかしたら素質がある子もいるかもしれないけれどそれはテイマーや環境によるんじゃないかしら?」


 テイマーが育て、それに環境か。

 確かにイエルムがいなければハルはスライムブローの強化や光魔法は習得できてないだろうな。


「他種族の魔物もそうだけれど、スライムって本当に色々な可能性があると思うわ。私はこの子達スライムが好きだからスライムのテイマーをやっているのよ。確かに総合的に見たら弱い種族かもしれないわ。だけれど、イエルムだってリフルだってこんなに強くて可愛いんだもの。その成長が見られるのが楽しみなのよねぇ。」


 ハルだって最初はバイトラビットにやられていた。だけれど数日で仕留められるようになっている。目に見えて強くなっているんだ。

 そして光魔法も唱えられる。

 ハルの成長は非常に楽しみだし、どんな成長を遂げてくれるか想像すると楽しいしワクワクする。


「そうですね。ハルも最初はバイトラビットにやられていましたが…今ではあの通りです。」


「そうだったわねぇ。スイト君はどう?ハルちゃん育てて楽しいかしら?」


 アイナさんの問いに俺は即答で、


「もちろん楽しいです。楽しいですし、俺もこのままじゃいけないな…と思うこともありますが…」


「あらあら。良いじゃない!スイト君自身がそう思えるってのは大事な事よぉ。ただそういうテイマーが今は少ないのよねぇ…お互いを高め合うパートナーじゃなくて、魔物をただただ従えてる。下に見ているテイマーが多いのよ。」


 アイナさんは出会った頃からその件を憂いていたなぁ…

 そんなことじゃテイムした魔物が可哀そうだし、恐らく100%の力も出し切れないだろう。そしてなおかつ信頼関係なんてあったもんじゃないだろう。

 魔物も生き物でもちろん道具でなければ下に見るということもあってはならないとは思うが…


「出会ってからアイナさんはずっと言ってましたもんね。まぁ何かしらの力関係で優位に立ってテイムするってのが主流って言ってましたし、そういう思考になるってのも分からなくもないですが。」


 俺は否定するわけでなく、思ったことをアイナさんに言う。

 確かにポピュラーなテイム方法が弱らせてテイムの術をかける方法。

 この"弱らせて"ってのがミソなんだろう。この時点でテイマーの方が力関係的には強い訳だ。それを"従える"のは間違いではないし、"従う"のも普通の事かもしれない。

 ただ俺が思うのは"テイマー"であるという事だ。テイマーは魔物がいなければ生計は立てられないはず。

 俺は主従関係ではなく高め合う関係、パートナーでありたいと思う。

 だってハルがいなければ1人で生活できないかもしれないからだ。

 ハルがいるから生活できる。ってことに今後なるだろう。ならテイマーが生計をたてられているのは他でもないテイムした魔物だ。

 魔物がいなければテイマーとして、冒険者として生活はできないだろう。

 感謝すること、信頼することはあれど、こき使ったり、下に見る。という事を俺は今後する気もないし、しないだろう。

 それをアイナさんに伝えると、


「…スイト君はいいテイマーになれるわ。私が保証する。仲間への感謝と信頼。これは絶対忘れてはダメよ。もちろん私もこの子達に感謝しているもの。」


 アイナさんはスライム達を見ながら微笑んでいる。

 

 アイナさんとイエルムとリフル。グランさんとグライア。

 出会いやふれあい方は違えど、共通しているのは"感謝"と"信頼"。

 これを忘れていないテイマーが一流のテイマーなのだろう。

 俺もアイナさん達とはもちろん出会いは違う。

 それでも俺もハルに感謝している。

 俺もテイマーとしてその2つを忘れず、一流のテイマーにならなければいけない。 

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