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第24話 分かりましたか?賢者様?

第24話掲載させて頂きました。


お伝えした通り、1月の始め頃は出張により、1話を執筆する時間が取れない現状となっています。

毎日少しずつではありますが執筆をしておりますのでその間は投稿が不定期になることをご了承ください。

執筆が完了次第随時更新をしていきますので時間も不定期になるかと思いますがよろしくお願いします。

 俺が玄関から庭に出るとリナさんが座って、ハルはテーブルの上でリラックスしている。

 …あれ?見たことある人が…


「あら?お久しぶりですわね。元気でしたか?」


 ルナリス・フラウディア…だっけか。

 俺をこの世界に呼び寄せた一人だ。

 というかなんでこんなとこにいるんだ?女神じゃなかったっけ?


「スイト、申し訳ないけどカップをもう1つ持ってきてもらってもいいかな?戻ってきてから詳しいことを話すわ。」


「あ!私のカップはピンクの花が描かれているものですわ!」


 この女神ちょくちょくリナさんの家に来てんだな。専用のカップて…

 あれ使わないでってリナさんに言われてたけどルナリス専用のカップってことだったのね。

 俺は台所に戻り、ピンクの花が可愛らしく描かれているカップを温める。


「そういえば、懇意にしてもらってる人の所に転生する。って言ってたよなぁ」


 それがリナさんのことなのかな。なんにせよ詳しい話は後でってリナさん言ってたし、とりあえずカップを持って行こう。

 俺は再度玄関を開け庭のテーブルに向かう。

 リナさんとルナリスはなにやら話していたようだが、俺の姿が見えると話を中断した。

 ハルはミルクを飲んでいる。チゴの実は2個用意したはずだが、もう1個しか残っていない。


「スイトありがとう。スイトも掛けてね?」


 リナさんに促され、リナさんの隣に座る。目の前には綺麗な女神。


「やっぱりリナの家の茶葉は最高ですわね。あ!このお菓子も好きなんです!ちょっと持って帰ってもいいかしら!?」


 …喋らなければ綺麗な女神。が目の前に座っている。

 天界?でいいのかな…で会った時もちょいちょい地が見え隠れしてたけれども。


「この子はルナリス。…ってあたしより前に会ってるわね。あたしとルナリスがスイトをこの世界に、いやあたしの元に送ったのよ。」


 あぁ。やっぱり懇意にしている者ってリナさんのことだったのか。


「そういうことですわ。詳しいことはリナから聞いていますよね?」


 ルナリスは飲んでいた紅茶を置き、俺に言う。


「えぇ。別のところに転生するところをリナさんとルナリス…様が俺の魂を保護して、リナさんの元に送られた…と。で、恐らく俺が前世で殺されたのは本来の転生先の者の手先とリナさんから聞いています。本来転生するはずだった場所に転生したら、人族にも魔族、その他の種族にも大きな被害をもたらす可能性があるとも。」


「そうですね。被害は出ますが最終的には恐らく人族が勝利し、人族が支配する世界になる可能性が高い。と言っておきますか。なので争いが起き、人族も被害を出すには出すけれど、魔族や他種族は駆逐される…と言ってもいいのかもしれませんね。」


「それを妨害するためにルナリスが魂を保護し、あたしが匿う。っていう手段を取ったのよ。」


「なるほど。つまりは俺が本来の転生先に転生した場合、人族を救う救世主、"勇者"みたいなものになると。」


「勇者と呼ばれるのは間違いないと思いますわ。救う…と言うのは語弊があります。スイトさんを召喚しようとしていたものは、人類以外を淘汰するのを目的でスイトさんを召喚しようと思っていたんですもの。」


 それを阻止するためにリナさんとルナリスは俺の魂を保護しここに召喚したという事か。

 勇者…かぁ。呼ばれてみたかった気もするが、今の生活は今の生活で凄く充実しているからなんとも言えないな。

 多分俺にはこっちの生活の方が性に合っている気はするけれども。


「恐らく『悪い魔族から、人類を救うために勇者として魔王を討伐せよ!』なんて言われていたでしょう。スイトさんのいた世界には魔王も勇者も存在はしていないですが、ゲーム等で勇者が魔王を討伐する旅に出る…というゲームもありますし。」


 確かに。前世の記憶の通り、そんなことを言われたらその気になって、勇者として旅に出そうだ。

 しかしリナさんやルナリスが言うこの世界では魔王も勇者もいるが、魔王は絶対悪ではないという事か。


「確かに、悪い魔王を勇者が討伐する旅に出る…そんなゲームはありましたし、人気でしたね。実際俺も好きでよくやっていましたし。」


「そうです!あのゲームは"悪い魔王"を倒すゲームです。実際ゲームの魔王は悪い魔王ばかりでしたしね。ただしこちらの世界は違います世界を滅ぼす。とか、世界を手中に収める。とかそういう魔王はいません。"魔族の王"だから"魔王"と呼ばれている者しかいません。」


「ルナリスの言った通りよ。ある人族の一部が"勇者"を立てて魔族を滅ぼし、世界を人族のものにしようとしているの。そしてスイトの特性に目を付けた…って感じだと思うわ。」


 俺の特性か…

 〔経験値共有 50%〕〔特技共有 20%〕〔能力上昇 5%〕だな。あと〔賢者のコツ〕…か…


「リナの言った通り、スイトさんの特性〔経験値共有 50%〕〔特技共有 20%〕〔能力上昇 5%〕これらは使いようによっては恐ろしい特性ですわ。仲間が増えれば増えるほどスイトさんはすぐに強化され、経験値を爆速で上げられる。恐らく、軍を一つ二つスイトさんのパーティに組み込めばその軍の勢力の5%の能力上昇…ですからね。〔賢者のコツ〕は相手方は誤算でしたでしょうが。ぷぷっ」


 ん?今俺馬鹿にされたよね?目の前のクソ女神に…

 しかし、ルナリスの言う通り大量の軍勢下に俺を組み込めばその兵士の5%分能力が上昇するんだもんな。そしてその軍勢の倒した敵の経験値の50%が俺に入る…凄い速度で強化されるだろう。

 確かに勇者に匹敵する人間兵器になれるよなぁ。


「となると、無理にでもリナさんとそこの女神が俺を無理にでもリナさんの元に召喚した理由も分かりますが…」


「まだスイトは世界樹の木陰のしかもゴトウッドしか見たことがないでしょ?人族というのは他種族を蔑んだり、見下したりする人が少なくないわ。ゴトウッドは皆良い人ばかりで、他種族を下に見るということはしないもの。」


 やはり、ゴトウッドが例外で他の地域では種族間でいざこざがあったりするわけか。

 前世でも上司と俺みたいな関係や、学生時代にはカーストもあったしなぁ…どこにでもそういう人間はいるってことだよなぁ。

 目の前のルナリスの評価もダダ下がりだし、俺もそういう人間なのかも。

 いや、このケースはルナリスが俺を馬鹿にしたからか。うん。


「ゴトウッドは人族以外にも色々な種族の方が生活してますもんね。街を歩いていると、色々な種族の方を見掛けますが、種族間のいざこざがあるようには思えません。」


「ゴトウッドだけでなく、世界樹の木陰はフラウド教の教えが浸透してますもの。それに世界樹の木陰では他種族を蔑んだりするような行為をした者こそ距離を置かれますわ。」


 ルナリスが言うには、フラウド教は生きとし生ける種族は皆平等。むやみやたらな争いはしてはいけない。という教えが根本にあるらしい。


「そして私が、フラウド教で崇められている女神ですの。分かりましたか?賢者様?」


 いちいち一言余計な女神様だな…

 フラウド教の教え。というのもあるだろうが土地がそうさせる面も多いのだろう。

 脅威となる敵もいないし、自然も豊か。人々も安心して暮らせる土地だ。


「リナさん。本当にルナリス様がフラウド教で崇められてるんですか?にわかには信じられないのですが…始祖じゃなく、何代目とかですよね。」


 俺の発言にルナリスはドキッとして顔が引きつっている。あー図星だな。

 こんな口の悪い女神が崇められて良い訳がない。


「あはは!まぁその通りね。フラウド教は人類も魔族も他種族もみな平等という教えがあり、それこそ世界樹の木陰は代々フラウディアの家系が継いでいってるわ。まぁそれでも先代がルナリスを指名したのだからそれなりに優秀よ。それなりにね。」


「そうですわ!それなりに優秀ですのよ!…ってそれなりってなによ!?」


「口が悪いのが欠点ってことですね。納得しました。」


 俺はそう言い紅茶を啜る。あぁ美味しい。

 ルナリスは納得していない表情をしているが、まぁいいだろう。知ったこっちゃない。


「しかしその先代に認められた由緒正しい宗派の当代の口の悪いつるぺた女神様が地上に降りてくるものなんですか?」


「誰がつるぺたですって!?」


 ルナリスは座っていた椅子から立ち上がり俺に言う。

 散々、賢者だの馬鹿にされた仕返しだ。

 今ので寝ていたハルがビクッと起きてしまった。どうやら寝ていたらしい。

 ハルは俺の膝の上に逃げるようにして乗った。


「ルナリス落ち着いて!ルナリスがからかうからスイトも言い返すのよ…フラウド教の女神は世界樹の木陰なら降りてこられるわ。まぁでもしょっちゅう降りてくるのはルナリスくらいかしらね…」


「えぇ…まぁ、リナは地上で信頼のおける唯一の存在ですわ。それに良き友人だとも思っていますから。だから貴方の事もリナになら任せられると思ったのですよ。それにここは世界樹の木陰。他者の干渉はたとえ他の神でも無理ですわ。」


 他の神ですら干渉を許さない…それほど世界樹の木陰というのは特別な場所なのか。

 それなら、横取りした俺の魂の安全も確約されているという訳か。


「代々世界樹はフラウディア家の管轄ですから。他の神の介入は禁じられていますのよ。まぁせいでかフラウディア家が他の地域に降り立つ事は他の神からの反感を買うので禁じられてはいますけれど。しかしそのおかげか、世界樹の木陰内では争いや紛争などは一切起こりませんけれどね。」


 世界樹の木陰はある種独立している。ということか。

 そしてフラウドの教えが第一であるから、他種族間との争いもないと。

 うーん。なかなか特殊といえば特殊な場所なのかもしれないな。


「そして、スイトさんが召喚される場所だったところに転生をしてしまうと、さすがの世界樹にも被害が及ぶ可能性がある。という危険性が高かったので、リナに匿って貰った。という側面もありますわ。」


 確かに俺もそのまま召喚されてたら、人類が世界を掌握する為の手駒にされるところだったかもしれなかったのか。

 その点はルナリスに感謝。匿ってもらったリナさんにも感謝だ。


「しかし俺が今ここにいるからと言ってまた懲りずにそいつらは新しく勇者を召喚してしまいますよね?」


「そうね。またスイトのように召喚する可能性もあるけれど…召喚の魔術は何度も何度も簡単にできるものでもないのよ。何十年という期間で大人数の魔術師で行われるものだわ。」


「…その召喚を1人でしたリナさんって実は物凄く凄い人なのでは…?」


 俺は率直な疑問をぶつける。

 今の話を聞いて、リナさんのことを凄いと思うのは当然のことだ。


「まぁそこは私の力もありますが…リナは恐らくスイトさんが思っている以上に凄いですわよ。」


「んー…まぁ…そうね。まぁその辺はおいおい…ね。」


 なんかリナさんが濁したなぁ…まぁでも平等を根本とする宗派の女神様が信頼している人物だ。悪い人じゃないのは確かだ。それはここでの生活で重々分かっていることでもある。

 

「しかし一歩間違えれば争いに参加して利用されていたなんて、思えばぞっとしますね。ましてや勇者と言われて魔王討伐ときたら前世の記憶からだと当たり前の使命だと思ってしまいますし。」


「まぁ人族からして力のある魔族や、身体能力が人族より長けている他種族は脅威でしょう。それに人族に世界を人族中心に…と野心を抱く人族がいるのも分かりますが。フラウド教はそれをよしとしません。それにリナもそれを望んでいないですから。私はスイトさんの前世を見ることもできますが、前世にはそういう人間も多々いたでしょう?人族とはそういう者がいるのはどこも一緒なのかもしれません。」


「そのせいか過去に迫害を受けて、人族を敬遠する種族もいるわね。」


 そうか。やはり人種的な差別みたいなものもこの世界にはあるのか。

 どうやら俺の知っている魔王と勇者の物語とは全く違うものだという認識で良さそうだ。


「しかし人族が皆そのような者という訳ではありません。現にゴトウッドの街ではそのような者はいないでしょう?私は人族も魔族も他種族も皆平等で、平和な世界を築きたいのです。」


「あたしも全くの同意見なの。あたしはゴトウッドのような差別も争いもない平和な世界を望んでいるわ。」


 確かに各地で争いや紛争が起きているとは聞いたけど、それがなくなってゴトウッドの街のような日常が送られるならそれに越したことはない。

 しかし人族が世界を掌握しようとしているのは分かったが…

 魔物はどのようにして生まれたのだろうか…

 人族が生み出した訳はないとしたら魔族や別の種族だと思うのだが…

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