第23話 ハルが珍しく低めの鳴き声で鳴いている。
第23話掲載させて頂きました。
閲覧してくれている皆様、あけましておめでとうございます!
今年もよろしくお願いします。
前々からお伝えしていた通り、自分で言うのもあれですが、出張にて多忙を極めております。
23話になりますが、短めになっていることをご了承ください。
恐らく期間的には1月5日頃まで忙しい予定ではありましたが、伸びる可能性も出てきました。
少しずつ書き溜めてはおりますが、1月中旬までは不定期投稿になるかと思います。
安定した投稿に戻る際にはまたこちらかX(旧Twitter)の方でお知らせしますのでよろしくお願いします。
池の周りをぐるっと一周し、小川沿いを歩く。
池の周りでは魔物が現れなかったな…
「池には魔物がいなかったですね。」
「あぁー…池には水中に魔物がいるからスライムは池の周りにはいないわね。人間にしてみれば脅威にはならないけれど、スライムなら丸飲みにされるわ。」
そうリナさんが言うと俺の前を歩いていたハルがピシッと固まる。
やっぱり人の言葉が理解できるのか…
ほら大丈夫。小川には魔物はいないからな。安心していいぞ。
「ピー…」
ハルはなぜか少し怖がっている。もしかして池に飛び込もうとしていたのだろうか…
「大丈夫だぞー。いつか強くなって色んな魔物も倒せるといいな!」
「ピー…ピッ!ピッ!」
ハルは俺の言葉に反応しぴょんぴょん力強く跳ぶ。
相変わらず元気だなぁ。そしてやる気だ。
毎日こうやって跳ぶ練習や、体当たりの練習をしていたら、そのうち俺より高く跳べたり、体当たりで木を倒すこともできるようになるのかな?
アイナさんのところのイエルムやリフルはどうなんだろうか?今度聞いてみよう。
数十分歩いていると、見慣れた道に出る。
あー。ここに出るのか。という事はここを左に曲がればゴトウッドか。
なら、あとは小川沿いに歩いて行くだけだな。
目の前を歩いているリナさんも真っすぐ歩いて行く。
また少し歩いて行くとリナさんが立ち止まり、俺の横に来る。
「スイト!バイトラビットよ!」
目の前を見ると黒いバイトラビットがいる。
お。黒か…黒のバイトラビットは灰色のバイトラビットに比べ数が少ないらしく毛皮はギルドでちょっぴり高く買い取って貰える。
…ハル後ろに下がってきなさい。あなた朝バイトラビットにボコボコにされてたでしょうが。
「ピィー…」
ハルが珍しく低めの鳴き声で鳴いている。
うーん…ビビってる感じではないな。むしろ、やったるぞ!!って感じがする…
「…ハルに任せても大丈夫ですかね…?」
「うーん…ハルちゃんはやる気ね…任せてみて危なくなったらスイトが助けてあげなさい。一応あたしも用心しておくから。」
「分かりました。…ハル!無理はするなよ!無理だと思ったら下がれ!」
ハルはピッ!と鳴くと目の前のバイトラビットをじっと見つめる。
バイトラビットはタッタッタッとハルに体当たりをする。が、ハルはそれを避ける。
おぉ。ちゃんと避けれるのか。
そして避けた後すぐバイトラビットに向き直り胴体目掛け、体当たりをする。
ドンッと小さい音がしたが、バイトラビットはまだピンピンしている。
ハルを見るとまだ大丈夫そうだ。
ハルはバイトラビットとの距離を取り、じーっと見ている。
そしてバイトラビットはまた体当たりを仕掛けハルは避ける。そして胴体目掛け体当たりをする。
それを5回程繰り返しただろうか。バイトラビットの動きが鈍くなってきている。
外傷はないものの内臓にそこそこダメージを喰らっているのじゃないだろうか。
動きの鈍くなったバイトラビットは必死にハルに体当たりを仕掛けるがひらりと避けられている。
ハルは胴体が狙えるような体勢を作り胴体に目掛け体当たりをする。
そしてバイトラビットが立っているのもやっとのように見えた時、ハルは同じ様に胴体へ体当たりをする。
それが決定打になったのかバイトラビットは動かなくなった。
リナさんは動かなくなったバイトラビットに近寄り、死んでいるのを確認した。
「うん!ちゃんと倒せているわ!頑張ったわね!ハルちゃん!」
「ピッ!ピッ!」
おぉ!バイトラビットを倒したか!朝はあんなにボロボロになってたのに…
1対1なら負けないんだな。
よーし…頑張ったな。俺はハルを撫でてあげる。
ハルは興奮しているのかいつもより激しくぷるぷる震えている。
「しかしこの子本当に賢いわね。攻撃を避けつつ有利な体勢を取って、相手の急所を攻め続けていたわ。」
確かにハルはバイトラビットの体当たりを避け、隙が出来て胴体に攻撃が可能になったら体当たりを仕掛けていた。
ガッツリ体当たりし続けていたら相手には噛みつきもあるので負けていたかもしれない。
朝は1対3だったので凌ぎ切れなかったが、1対1だと凌いで有利になる展開を伺っていたのだろう。
もしくは朝に噛みつき攻撃も喰らって、それを喰らわないように距離をとっていたのかもしれない。
冷静に対処した結果、バイトラビットに勝てたのだろう。
「本当に頑張ったなぁ…偉いぞ!ハル!」
「ピッ!ピッ!ピッ!」
ハルは褒められて満足げだ。
ハルは賢いし鍛えればどこまででも強くなれそうだ。俺も頑張らないと…
「さ、倒したバイトラビットだけど…もうすぐ家だし、帰ってから処理しましょうか。」
リナさんはハルが倒したバイトラビットを片手に取り、歩き出す。
―――また数十分歩いていくと、先に小さな橋が見えてきた。あの橋を渡ればもうすぐリナさんの家だ。
道中、3体程スライムにも出会ったが、今は帰り道で明日明後日は店はお休みなので、スライムは倒さない。
…が、ハルはスライムを見かけるとスライムに向かってガンガン体当たりしていた。
同種だと思うんですけど…関係ないのかな…しかもしっかり2発ぐらいで倒している。
「ピッ!ピッ!」
…ハルは満足げだが…いいのかな…
「リナさん。スライムって自分から攻撃を仕掛けないんじゃ…」
「うーん…ハルちゃんの性格なのか…だけどハルちゃんは賢いからなぁ…恐らく体当たりの練習がてらスライムに体当たりをしてるんじゃないのかな…?」
どうなんだろうか…かといって無駄にスライムを倒してもなぁ…敵対しないわけだし。
「ハルー。スライムは倒さなくても大丈夫だぞ?バイトラビットだけ倒すようにしようか?」
と、ハルに提案する。ハルはピーッ?と鳴く
え?なんで?と言っている気がする。うーん…なんて説明すればいいのだろうか。
「ハルちゃん。スライムはねー。必要なスライムと不必要なスライムがいるの。だから必要なスライムが現れた時だけ倒してもらえるかな?」
リナさんがそう言うとハルはピッ!と鳴く。理解できたみたいだ。
リナさんは返事をしたハルをニッコリ笑って撫でている。
このお転婆娘め…
「ハルちゃんは良い子ねー。さぁ行きましょう。」
リナさんは歩き出しその後ろをハルがついていく。そのうち道を覚えたらハルを先頭に歩かせてもいいかもしれないな。
そして小さな橋を渡り、木々を抜け、リナさんの家に着く。
「ふぅ。着いたわねー。ハルちゃん、ここがお家よー?」
木でできた門扉を開けるとハルはぴょんぴょんと庭を歩き回る。
満足したのか、俺に近寄ってきた。
俺はハルを持ち上げ、頑張ったなぁーと声をかけながら撫でてやる。するとハルは満足げに俺の目をみて震えている。そしてぴょんっと跳ね、俺の頭の上に乗る。
やっぱり頭の上が好きなのね…
リナさんは玄関に歩き鍵を開ける。
その後ろを俺とハルはついていく。
「ただいまー!っと!じゃあ部屋に帰って着替えたらまだ日は出ているしお茶にしましょう。着替えたら庭のテーブルに集合ね!」
リナさんはそう言い自室に戻る。
よし俺も着替えてお茶の準備するかなー。
ベルトを部屋に掛け、ハルをベッドの上に置き、家で着る服に着替える。
着替え終わったのが分かったのか、ハルは俺の胸へ跳ねてくるので、俺はキャッチする。
するとあっという間に頭の上に飛び移る。
頭の上に乗るのにも慣れてきたなぁ…
そして俺はリビングに出てキッチンへ向かいお茶の準備をする。
今日はこれでいいかな?
俺はスッキリと爽やかな匂いのする茶葉を用意する。
ティーポットとティーカップを温めながら、鍋でお湯を沸かす。
ハルはお湯の熱気があまり好きじゃないのかピィー…と小さく鳴いている。
お茶の準備ができたころ、リナさんは自室から出てきた。
「あ!今日はこの茶葉なのね!ちょうどそんな気分だったのよ!スイトは分かってるなぁー。」
リナさんはそう言って褒めてくれる。
良かったー…リナさんの嬉しい顔を見るとつい俺も気分が上がる。
美人の笑顔って武器だよなぁ…俺に耐性がないだけなのか?どーせ賢者ですし…
ちょっと考え落ち込むが、やっぱり毎日この笑顔がやっぱり嬉しいし気分が上がるのは事実だ。
「もう準備できますからねー。外で待っててください。」
「わかったわー!お菓子の準備だけしておくわね!ハルちゃん一緒に来るー?」
ハルは俺の頭を降り、リナさんに抱かれ庭へ行く。
やっぱり熱気が嫌だったかな?
俺はお茶の準備をし、ティーポットとティーカップをトレイに乗せ玄関を出る。
トレイにはいつもと違い、ミルクが入った器とチゴの実が乗っている。
ハル用の飲み物とハルのおやつだ。




