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第20話 ただこの辺で見たことないスライムだし

第20話掲載させて頂きました。


20話まで来ることができました。

ブックマークされている方ありがとうございます。

これからも面白い話が書けるよう努力していきたいと思いますのでお付き合いよろしくお願いします。

年末年始は出張により、投稿期間が乱れるかもしれません。

その際はこちらのスペースにて、お知らせいたします。

「よーっし!青のポーションできたわよ!」


 奥からリナさんの声が聞こえる。

 ちょうどお昼を回った頃かな。俺はカウンターを立ち奥に行く。


「お疲れ様です。あ!結構な数作ったんですね。」


「そうよー。最近青の低級ポーションが良く売れるもの。これだけあれば大丈夫でしょう。」


「そうですね。棚に並んでるのがざっとあと10本くらいなんで、全然十分です!」


 リナさんが作った低級ポーションは20本くらい。

 ポーションは大体1か月は持つそうなので、ポーションを廃棄することになることはないだろう。

 念のため各ポーションには製造日を瓶の蓋に記載するのが決まりだそうだ。


「今作ったポーションは明日棚に出しましょう。後で今日の日付書いておいてもらえるかしら?」


「分かりました。お昼終わり次第書いていきますね。」


「うん。お願いね!さ、お昼に行きましょ!」


 リナさんはエプロンを脱ぎ、腰にベルトを巻く。

 リナさんは裏で調合やポーションを作る際は必ずエプロンをしている。

 エプロンも猫のシルエットが描かれており、可愛い。

 リナさんがつけていることもあってリナさんも可愛い。


 俺もベルトをして、スライムの入ったバスケットを持つ。

 店を出て扉に掛かっている看板を眠っている猫の絵にする。

 リナさんが施錠をして、スライズへ向かう。

 リナさんの店からだと歩いてそんなに時間はかからない。

 店を出て路地を歩いたら、スライズが見える。


 中に入るとそイエルムがいつもの様にテーブルの上ですやすや寝ているのが目に入る。

 そしていつものように美味しいパンの香りがする。

 バスケットもなぜか揺れている。こいつもパンの香り分かるのかな?


「あらあら!リナちゃんとスイト君!待ってたわよぉー。」


 アイナさんがいつものようにニコニコしながら迎えてくれる。

 そして俺が手に持っているバスケットに目が行く。


「この子がリナちゃんが朝言ってた子ね!私も朝から気になって気になって…確かにこの辺のスライムと色が違うわねぇ…それに私も見たことない子だけれど…本に載ってたような気がするわ。」


「まだテイムした訳じゃないんですけど、なんか懐いてて。ただこの辺で見たことないスライムだし、何を食べるのかとか、どういうスライムなのか全く分かんなくて…」


「あたしも見たことなくて、アイナさんなら何か分かるかなーって思って。一応乾燥させた薬草と朝に採取した薬草は食べなかったわ。その代わり、チゴの実とブルの実、それに焼き菓子は食べてたのよ。あとは水と紅茶を飲んでたわ。」


「なるほどねぇー…確かに今言ったものを与え続けるわけにはいかないわよねぇ。チゴの実とブルの実だって冬の間は採れないもの。」


 うーん…とアイナさんも考える。アイナさんも見たことがないスライムと言っていたが、そんなに珍しいスライムなのだろうか。


「とりあえず二人ともお腹減ってるでしょう。ご飯にしながら考えましょう。セットでいいわよね?」


 俺もリナさんもはいと頷く。リナさんはいつものようにパンを6個ほど取り、俺はリナさんおススメの香草入りのパンと、スープに合う白いパン。そして木の実が乗ったパンの3個を取る。

 スライズのパンは一通り全部食べたがどれも美味しい。

 最近では、香草入りのパンとスープに合うパンともう一種美味しそうなものの3つを俺は食べるようになった。

 なんだかんだお腹が減るし、美味しい物を食べるというのは幸せなことだ。

 …前世ではただただお腹が満たされれば良かったけれどこちらの世界に来て、やはり食に対する意識も大分変わったんだろうなぁ。

 むしろ前世が何かに取り憑かれたように働いていたからだろうか。今の生活をしながら前世の生活を振り返ると少し怖くなる。


 パンを取り、席に座っているとテーブルのイエルムが起きた。

 俺の前に来るので撫でてあげると満足そうな顔をしている。

 イエルムと遊んでいると、アイナさんが紅茶を2つとコップに麦茶のようなものを持ってきてくれる。

 そして何やら器のようなものを2つ今日は持っている。


「これがリナちゃんと私の紅茶でー…スイト君はこれよね。で、こっちの器なんだけど、うちのイエルムやリフルも同じものを使っているのよ。私からスイト君とスライムちゃんへのプレゼントってところね!」


 スライムはバスケットからぴょんっと飛び出し、横に置かれた容器をじーっと見た後、プルプル揺れている。

 お。気にいったのかな?


「アイナさんありがとうございます!良かったなー。専用の容器だぞー。」


 俺がそういうと俺を見たあと、アイナさんの目を見てぴょんぴょん跳ねている。

 お礼を言っているのだろうか?こいつは言語を理解できているのかもしれないな…


「あらあら!賢い子ねー。よしよし。私達もご飯にしようかしら?グランー!ご飯にしましょー!」


 アイナさんはスライムを撫でながら厨房の方へ向かってグランさんを呼ぶ。

 するとグランさんはトレイにスープが入った容器を持ってテーブルにやってきた。


「リナ、スイトいらっしゃい。そうなると思ってだなー…これはリナの分、これはスイトな。今日はポンドキングのメイト煮だ。」


 目の前の赤いスープ。メイトというのは野菜の一種で前世だとトマトに似た野菜だ。それの煮込みだろう。そのメイト煮の中には大きな白身魚の切り身が入っている。これがポンドキングだろう。


「こいつが朝言ってたスライムか?確かにこの辺のスライムの色ではないな…ま、とりあえず飯でも食ってからゆっくり話すとしようか。」


「そうしましょう。イエルムは私が預かるわね。この子には…うーん…少し温めたミルクでもあげましょうか。イエルムもリフルも好んで飲んでいるから恐らく大丈夫だと思うわ。」


 アイナさんはミルクを先ほどの器に入れてくれる。

 アイナさんが着席した後、俺とリナさんはいただきます!と言いメイト煮を食べる。

 しっかり煮込まれて濃厚なメイトの甘味と酸味が程よく、ポンドキングには香辛料等で下味がつけてあるのか癖になる辛味でスプーンが止まらない。また他の野菜もしっかり煮込まれて味が染みていて美味しい。

 そしてこれが香草入りのパンにも、白いパンにも合う。木の実のパンは木の実が香ばしく意外にもメイト煮に合う。あぁ…食べるって幸せだなぁ…

 ふとスライムを見るとスライムもミルクを飲んでいるようだ。

 ミルクも飲めるんだな。というか今のところ薬草以外はすべて食べたり飲んだりしているが…


「ふぅー美味しかった!ごちそうさま!」


 あれ?リナさんのパン6個くらいあったはずだけど…もう食べたのかな。

 スライムを見るとスライムもミルクを飲み干している。

 俺も3つ目のパンを完食し、メイト煮も完食する。あぁー美味しかった。

 

「ごちそうさまでした!メイト煮美味しかったです。」


「ポンドキングはこの辺では良く食べられる魚の魔物だな。大きいし、淡白な白身魚は色々な料理に合う。頭も骨も良い出汁が出るんだよ。」


「あらあら。この子、ミルク全部飲んじゃったわね。水だけじゃなくミルクを飲ませてあげても良いかもしれないわ。」


 確かに栄養価はミルクの方が水よりも遥かに高いだろう。その辺も考えてみるか…

 あとは食べる物だな…


「イエルムとリフルは何を食べてるんですか?」 


「スライムって基本なんでも食べるわよ。リフルは森で出会った子だから元々薬草とか木の実は食べてたわ。今では野菜が好きね。イエルムはなんでも食べるわ。イエルムはパンが大好物よ。余ったパンとかあげると喜んでるもの。」


「という事は基本的にスライムはなんでも食べるんですね。その上で育った環境によって異なると。」


「そうねぇ。イエルムも苦い薬草は食べないし、リフルは動物や魔物の肉は食べないわね。」


「やっぱり魔物によって好き嫌いがあるんですかね…」


「魔物というよりかはスライムじゃないか?おおよそ種族によって食べるものは決まってくるしな。グライアのようなサイレントウルフは肉しか食べないしな。もっともグライアはフードを調合したらそれも食べるようになったが。」


 確かに種族によっては肉しか食べない魔物だったり、植物しか食べない魔物等もいるだろう。

 前世であればライオンが草を食べているところは想像つかないし、馬が肉を食べているところも想像つかないしなぁ。


「獣系の魔物の食料はある程度想像つくが、スライムは解明されていないしな。この辺にいるスライムでも川に入って食事を摂るのもいれば、森で植物を食べるものだけで2種類いるわけだし。」


「そうねぇ…イエルムとリフルだけでもちょっと違うものね。あ!イエルムが食べてるフードがあるからそれを試しにあげてみましょう。朝食べたといっても木の実と焼き菓子だけでしょう?」


 おぉ!それはありがたいな。もし食べるようなら調合とかも聞いておきたい。

 確かに食事というほど食べさせてあげれていないな…お腹がいっぱいになっているということはないだろう。


「すいません。試しに頂いてもいいですか?」


「気にしないでいいのよぉ。イエルムも寝てたからご飯まだだしね。器借りてくわ。」


 アイナさんはイエルムを抱えながら奥へ下がっていく。

 俺はミルクを飲み干したスライムを膝の上で抱え撫でている。

 撫でているとぷるぷる心地よさそうに揺れている。


「しかしまぁ…バイトラビット3匹に襲われてたんだよなぁ。」


 ふとグランさんが零す。


「バイトラビット3匹も同時に出てくるの初めてでしたよ。それにスライムを襲っているのも初めて見ました。」


「バイトラビットは雑食だからな。とはいえスライム食ってるとこは見たことないが…あとは3匹で現れたってのも気になるな。番で2匹ってのはたまにあるが…まぁこいつに関係してるのかもしれんわな。」


 確かに冒険者でなおかつテイマーのアイナさんとグランさんが分からない事があるのか…

 でも、スライムに詳しいアイナさんも分からなかった事だし、それほど珍しいスライムなのかもしれない。


「おまたせー!これはそっちのスライムちゃんの分ね!あと奥からスライムについて詳しく書かれている本を持ってきたわ。確かこの本にその色をしたスライムの事が書かれていたような気がするんだけれど…」


 アイナさんはイエルムを頭に乗せ、両手に器、脇に結構厚みのある本を持ってくる。

 俺は器を受け取り、スライムの前に置く。するとスライムは相変わらずじーっと器を見つめた後、フードを食べだした。

 イエルムもスライムに気づいたのかアイナさんから飛び降りスライムを見ている。


「あー。良かったわー。これでとりあえずは食料については大丈夫そうねぇ。チゴの実やブルの実はおやつとして与えればいいと思うわ。イエルムもご飯を先に食べようねぇ。」


 そう言ってスライムの隣にいるイエルムに器を置く。イエルムも食事を取り出した。


「アイナさん何からなにまですいません…フードの調合を教えてもらってもいいですか?」


「いいわよー。それかある程度多く作った方が私も楽だし、当分はお代は貰うけれど、譲ろうか?」


 当面は譲ってもらったほうが助かるかな。確かに料理とかも多く作った方が安上がりだし…お言葉に甘えてしまおう。


「すいませんがお願いします。あと1日にどれくらい与えればいいかも教えてください。」


「イエルムは大体朝昼晩で器擦り切れるくらい与えているわよ。それに飲み物はミルクを与えているわ。食べる量はスライムによって違うけれど、それくらいなら少ないってこともないでしょう。」


 朝昼晩に1食ずつ…と。そしてミルクか。帰りにリナさんに頼んで寄って行ってもらおうかな。

 スライムを見ると器に入っていたフードも空っぽになっている。良く食べる子なのかな?

 イエルムも食べ終わったようで、2匹のスライムはお互いをじーっと見つめているが不意に逃げるイエルムをスライムが追いかけだした。


「あらあらー。イエルムと仲良くなれたみたいね。この子賢くて人懐っこいのねぇ。」


 あれは仲良く遊んでいる…ってことでいいのか。なんにせよ友達ができたようでなによりだ。

 俺は本を1ページずつ捲って、特徴が合うスライムを探している。

 あーこいつでもないし、このスライムでもないし…というかスライムの種類多すぎるだろ…

 うーん…あ、もしかしてこいつか?


「こいつ…このスライムかも…」


 そこには、目の前でイエルムを追いかけるスライムに特徴が似通ったスライムの事が書かれていた。

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