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第151話 そっか!じゃあ今日からお友達です!

 どうもお久しぶりです。ハルです。

 今、私達はトラップモンスターっていう強大な敵と対峙する…そのためにまずは私が先発で、ロゼリールさんは私のサポート。先手を撃たれたらできる限り攻撃を躱し、後ろのロゼリールさんに任せて、私に注意が向いている間にガウリスさんが持ち味のスピードで隙をつき、相手に的を絞らせずに、対処する。っていう感じで戦闘を進めていく。らしいです。


「ハル。お主1人で大丈夫なのかの?」


「どういう攻撃を仕掛けてくるか分からない以上私が一番すばしっこいんですもん。それから対策を練れば良いでしょう。」


「ふむ…だがしかしの…」


「ロゼリールさんは私の後方から支援をお願いします!隙をついてどーんと!」


「承知した。が、洞窟内では火属性の魔法は使ってはいけないと言われておるしの。水弾を撃つかの。」


「よろしくお願いします!で、ガウリスさんは…相手が私に攻撃してきたら、隙をついて攻撃。私とガウリスさんで相手を翻弄しましょう。なんにせよ相手が動き次第作戦開始。です。」


「了解。まぁハルばかりに危険が行くのは心許ないが…できる限りのことをしよう。」


 とはいえ、実はガウリスさんより私の方がすばしっこかったりするんですよ。

 ロゼリールさんも飛んでいるとはいえ、ここは洞窟内。天井はそこまで高くないので、相手の攻撃手段次第では避けきれるかどうかといったところでしょう。先手を取るのは私が最適なんですね!ふふん!


「ハルちゃん!頑張ってー!」


「はーい!任せてください!やったりますよぉ!」


 後ろではネルモルちゃんが応援してくれています。ネルモルちゃんも一時は落ち込んでいましたが、とある夜にどこかへ出かけて、朝になったら元気になっていました。スイトさんが何かしたんでしょうね。やるなぁー。スイトさん。


 2人には『私に攻撃してきたらそこから作戦開始』と伝えました。

 ですけどね。もしかしたら、これは戦いにすらならないかもしれません。

 私はロゼリールさんやネルモルちゃんと違い、魔物がいるかどうか気配を感じ取れます。これはスイトさん達も分かってるんです。

 グライア師匠も、だからハルは先頭に置かれていることが多いんだぞ。って言ってました。

 確かに私は周囲の魔物をいち早く見つけることができます。グライア師匠には負けるけど…

 でもそれだけじゃないんです。敵意があるかどうかも分かるんです。

 で、目の前のトラップモンスターでしたっけ?スイトさんはミステリボックスって言ってましたが、箱の中身…

 多分同族です。同じスライムな気がします。

 そして敵意というよりこちらを警戒している…そんな感じがするんです。


 そりゃ敵意があったら私も同族とはいえ仕方ないです。やったりますよ。やったりますけど…

 敵意のない同族となると。ね。話し合いで解決したいってところではあるんです。


 え?じゃあ今まで狩ってきたバイトラビットやファミリーバットなんかの魔物は敵意があったかって?

 …えぇ、ありましたとも!バイトラビットはなんも考えず突っ込んでくるし、ファミリーバットだって隙あらば命を狙ってきます。

 大体、そもそも私はバイトラビットに殺されかけてましたからね。あ、あれは私も悪いのか…


 …ともかく!敵意がない相手をわざわざやっつけるっていうのはなんかこう…私は好きじゃないんです。ましてや同族ですから。

 なので2人には『私が攻撃されたら作戦開始』と伝えました。攻撃されたら仕方ないですもんね。

 悠長なことやってたらこっちがやられちゃいますもん。


 さて、私はゆっくりとミステリボックスに近づいていきます。うん。今のところ大丈夫そう。

 ぴょんぴょんと跳び、一定の距離に来たところで話しかけます。


「初めまして!私ハル!多分…だけどあなたと同じスライムです!」



……



 返事がありません。敵意はありませんが、やはり警戒は解かれていない様子…

 確かにこっちは私達全員で8人。かたや向こうは1人です。警戒を怠らないのはさすがです。というか警戒を解く方がおかしいか…


「ハル。大丈夫そうかの?」


「大丈夫です。私に任せてください!」


 歩みを止め話しかけるもののなんのアクションもないままだったからか、ロゼリールさんは心配そうに声をかけてくれます。

 が、私は更にゆっくりとミステリボックスに近づいていきます。

 近づくにつれ、ミステリボックスも徐々に警戒心を高めているのが分かります。私はギリギリのところで止まり、またミステリボックスに話しかけることにします。


「大丈夫です!あなたが何もしないなら私も攻撃はしないし、みんなもなにもしてこないように言っておいてあります!だから…少しお話しませんか?」


「…ほんとに何もしない…?」


 箱の中から小さな声が聞こえたかと思うと、ちらっと…みんなには分からないくらい少し箱が開きました。


「はい!私はハルって言うの!ゴッデスティア?っていうスライムです!」


「ほんとだね…真っ白で綺麗だね。それに見たことも聞いたこともないスライムだ…」


「ありがとうございます!あなたの名前は?」


「私は…名前はないんだ…でも冒険者とかにトラップモンスターとか、ミステリボックスって呼ばれているの…」


 まぁ野生の魔物ですし、名前がないのも当然っちゃ当然ですか…


「そうなんですね。昨日は人を襲っちゃったんですか?そんな大怪我をさせるような感じは私にはしないんですけど…」


「だって…怖いじゃない。」


「怖い?」


「えぇ…私に近づく人は嬉しそうに箱を開けてくる…それか、あなた達のように警戒してじりじりと仲間をいっぱい連れて私を倒そうとしてくるか…」


「私達も最初はあなたを倒そうとしていました。だけど…私はあなたが同じ種族だと思ったんです。だから話し合えるんじゃないかって。」


「そう…ね。こんなに敵意とかなく近づかれたのも初めてなの。だから少しびっくりしちゃってるけど…不思議と嫌な気分じゃないんだ…その…あんまりお喋りする機会ってなかったから…」


 結構引っ込み思案な子で憶病なのかもしれません…だけどこうやって近くで話してる分には悪い気はしませんね。

 確かに、暗いところでじっとして、静かに暮らしているのに急に襲われる恐怖。それを排除した後に徒党を組んで大勢で自分を討伐しようとする冒険者。逆の立場だったら怖いし、どうにかしたくもなります。


「そっか!じゃあ今日からお友達です!」


「…お友達?」


「そうです!お友達です!あなたは話せばわかってくれるし…私のマスターだって話せばわかってくれます。すっごい優しいんですから!」


「お友達…かぁ…ずーっと1人だったから…なんだか不思議な気分だなぁ。でもハル…ちゃんとなら仲良くできるかも…それにマスター…ってあの男の人?なんか心配そうにハルちゃんを見てるね…」


 ふとスイトさんの方を振り返ると真剣な眼差しで私を見ながら身構えているのが分かります。

 やっぱりスイトさんは優しいなぁ。大事にされているっていうのが分かると嬉しくなりますね。


「そうです!スイトさんって言うんです!みんながあなたが危険な魔物って言ってたから…多分私の事を心配してるんでしょう。それに予定とも違ってますし…」


「やっぱり…私を倒そうとしてハルちゃん達は来たのね…」


「最初はそうでした。けど…こうやって話そうって思ったのは私の独断ですよ!現にロゼリールさんも、ガウリスさんも何もしてこないでしょう?」


「そういえば…そうだね…どちらかと言うと2人ともハルちゃんを心配してる気がするもの。」


 ロゼリールさんもガウリスさんも、この場は私に任せて何時でも飛び出す準備は万端!って感じですね。本当にロゼリールさんは頼りになりますし、ガウリスさんも頼れる方です。最初に会った時よりも生き生きとしてますしね!


「えぇ!皆さん優しくて、頼りになる味方ばっかりなんです!」


「いいなぁ…ハルちゃんは毎日楽しそうね。私はここは暗くて静かで落ち着くけど…なんだかハルちゃんがちょっと羨ましいなぁ…」


「じゃあスイトさんに聞いてみましょうか?」


「え…?」


「だってどうせ私達が話し合って見逃しても、すぐに新しい冒険者の人たちがあなたを倒しに来ます。それに…せっかくこうやって知り合えたんだし、もう会えないのは寂しいじゃないですか。」


「うん…まぁそうだよね…でも…私がついてってもいいの…?」


「私は構いません!ちょっとロゼリールさん!いいですか?」


「なんじゃハル。我は口出し無用と思いじっと我慢しておったのじゃが。」


「ロゼリールさんはこの子がついて来てもいいですよね?」


「うむ。話を聞いておる限り悪い輩ではなさそうじゃしの。まぁ我々が良くてもスイトがなんと言うか。じゃが…」


「まぁスイトさんなら大丈夫です。そんな悲しいこと言う人じゃありません!」


 実際にここで私達が見逃しても別にこのミステリボックスを討伐しに来る冒険者が現れるでしょう。

 話を聞いているとしっかりとした冒険者の方々が討伐隊を編成する様子ですし…遅かれ早かれこの子は討伐されます。存在も分かっちゃってるし、被害も出ちゃってるし…


「そうじゃの。だがしかし、我々の言葉を理解できるアイナ殿がここにはおらぬ。誰か使いに行ってもらいたいものじゃな。」


「そうですねぇ…雰囲気で意思の疎通はできるんですけどね。あぁもどかしい!私もスイトさんとお喋りしたいのに!よーし…ちょっと待っててくださいねー…」


 そう言って一旦私はミステリボックスさんから離れて皆さんの元へ。

 無傷で帰ってきた私を見て安堵しつつも不思議そうに私を見つめるスイトさん達。えーっと…よし!

 私は地面にスライムのシルエットを描き、リナさんの近くでぴょんぴょんと跳び跳ねます。


「うむ。ハルは何かを我々に伝えようとしているようだが…」


 そうです!マイクスさん!スライムの女性。と私は伝えたいのですが、4人はなにやら考えている様子。

 よーし…今度は…サリオさん、マイクスさん、スイトさんの前に立ち身体をふるふる横に振ってみることにします。

 スイトさんに嫌だったり違ったりするときはこうやってジェスチャーしてって言われてましたから。

 そして最後にリナさんの前に立ちぴょんぴょんと跳び、身体を縦にふるふると動かします。


「スライム…の絵…それにリナさん…あ!アイナさん!?」


 おぉー!さすがスイトさん!正解です!私は『そう!』と鳴き、ぴょんぴょんと跳び跳ねます。


「で、アイナさんを呼んでこればいい…のかな?」


 私は再度『はい!』と鳴きます。よしこれでアイナさんはスイトさん達に任せて…と。

 私はそれまでミステリボックスさんとお話でもしてましょうかね…


「なんじゃ。ハル。我もあの娘と話してみたいぞ。どれ、我が行っても大丈夫であろう?」


「もちろん!だけどミステリボックスさんは結構憶病な感じだから…気をつけて下さいね。」


「失礼な!それくらい弁えておるわ!新たな仲間になるやも知れぬ者に失礼なことはせん!」


 なら…大丈夫ですかね。お喋りするにしてもたくさんいた方が楽しいですし。


「ハルちゃん。その子大丈夫…なのよね?私もお話したいなぁーって。」


 ロゼリールさんの後ろでこそこそしていた、ネルモルちゃんもこの子が気になってる様子です。

 というか、スイトさんはネルモルちゃんはテイムしないんですかね?もう十分に私達の大事な仲間であり、友達だと思うんですけど…

 ま、それはスイトさん次第ですね。とりあえずアイナさんの到着を待つとしましょう!

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