第133話 さすがグランとアイナだ。
さて、アンジュの村を満喫し、出入口へと戻る。
全員集合しており、俺達はまたハルとピグミィを先頭に歩き出す。
グランさんの話ではイースルーウッド領の休憩地から、1時間ほどでイースルーウッドに着くそうだ。
まだ明るいし、時間も丁度良い時間に到着しそうだな。
――――
さて、特段イレギュラーもなく、イースルーウッドに到着。
川沿いでなければこれと言って見たことのない魔物も出なかった。
バイトラビットやスライム、グリーンゼリーとゴトウッド周辺で見ている魔物と遭遇したぐらいだ。
俺達は門番に氏名とライフカードを提示し、タグを受け取り街へと入る。
「さて、ここがイースルーウッドだ。」
街に入ると地面は石畳で舗装され、色々な店舗が並んでおり、多くの人が行き交いしている。
だけど、規模はゴトウッドより小さく感じるな。
「マイクス達とは今日泊まる宿屋に集合の予定だ。先に受付を済ませてから合流しよう。」
そう言ってグランさんは歩き出す。
俺達は後ろをついて行き、周りをキョロキョロと見ているが…宿屋や酒屋、食事処なんかが軒を連ねている。
この辺りは宿泊者向けの区画なのだろうか?ゴトウッドもおおよそ施設によって街が整備されているしなぁ。
そんなことを考えているとグランさんは大通りから路地に入っていく。
道幅は狭くなるが、それでも小さな居酒屋のような場所が見られ、路地に入ると民家もある。
やはり、大通りは客の目に着きやすいってのもあるからか、店舗が並んでいるが、路地に入ると民家もちらほら見られる。
そこはゴトウッドと違うところかもしれないな。
ゴトウッドは民家は民家の区画。店舗は店舗の区画とはっきり分かれている。
「さぁ着いたぞ。今日の宿はここだな。」
目の前には質素ではあるがなかなか大きい建物。これが今日の宿か。
そういえば俺って宿に泊まるのは初めてだなぁ。
「そういえばスイト君は宿って初めてよねぇ。」
「そうなんですよ。この間ソロでマルスーナに行った時はテントとミリーの家に泊めさせてもらいましたし、アイナさん達と行った時もテントでしたしね。」
「そういえばそうだったな。ミリーとサリオは?」
「僕は基本テントで野営が多いですが…そういえば僕も初めてだな。遠出はしてませんでしたし。」
「私は初めてです!」
「そうか。なら色々と教えることもあるな。とりあえず受付を済ませてゆっくりしながら話そう。」
玄関口でずっと話すのもあれだしな…俺達は宿に入っていく。
宿に入るとまず目の前にカウンターが。これが受付か。受付にはおじさんが1人座っている。
右手には階段、左手には広々とした場所にテーブルが多くならんでいる。これが宿屋か。
「はい。いらっしゃい。ご予約は?」
「あぁ。マルスーナのギルドで取ってあるはずだが…そうでなければマイクス・ギーダルか…」
「マルスーナのね。えーっと…6名って聞いているけど、1人足りないようだね?」
6名?あぁ、アイナさんとグランさん。それにリナさんは急遽参加になったしな。予約が間に合わなかったのかな。
それに各々のテイムモンスターもいるが…
「実は3人増えてね。残りの4人はもう少ししたら到着するが…部屋はいっぱいかな?」
「いや、部屋は空いているが…1人部屋は埋まっててな。数人2人部屋になっちゃうけど、大丈夫かい?」
「それなら大丈夫だ。料金は後から来るものが払うんで、あっちで待たせてもらっても大丈夫かな?」
「あぁ。構わないさ。」
「すまない。じゃあ少し待たせてもらうよ。」
宿屋の店主に了承を得て俺達はテーブルへ座り一息つく。
その間に、グランさんから宿屋の説明を受ける。
宿屋にも色々と種類があり、テイムモンスター可か不可か。テイマーにはこれが一番ネックになる。
ギルド等に行けば紹介をしてもらえるそうだが、当日となると部屋が埋まっている可能性もあるらしい。
なのでテイマーの俺達は訪れるであろう街に着き次第、宿屋での寝泊まりを考えているのならギルドへ行き、宿屋の確認と確保を優先した方がいいと言われた。
まぁ、最悪ギルド横か近くに、野営スペースがあるので野宿でどうにかなるが…
あとは食事。夕食と朝食が出るところがほとんどだが、食事つきとなると別途追加料金が発生する。
食事の質に関してはピンキリで当たりはずれがある。どうせなら美味い食事にありつきたいものだが…こればかりは運になるなぁ。
自炊用のキッチンがある宿屋もあり、今日泊まる宿はキッチンが使用可らしい。
そもそも自炊用のキッチンがある宿屋は食事の提供をしていないところもあるらしく、この宿屋がそうらしい。その分値段はお手頃なので、料理ができる冒険者はこういうところを探して利用する。
まぁ街の規模に比例して宿屋の数も変わってくるので、条件に合った宿屋がない場合もある。とのこと。
またギルド御用達の宿屋など、色々と細かいところは細かいらしい。大きな街になると女性専用の宿屋などもあるとか…まぁ、これは俺が冒険に出て自分の目で確かめた方が早いかな。
もしかしたら俺にぴったりな宿屋だってあるかもしれないし。宿屋選びも冒険者として冒険の数をこなして…といったところかもしれない。
しかし、一番はやはりテイムモンスターが泊まれるかどうかだな。今後冒険に出た際は真っ先にチェックしなければいけないだろう。
グランさんのためになる話を聞いていると玄関の扉が開き、そちらを見てみるとマイクスさんを先頭にリナさん達が後ろからやってきた。
フロルとヘイルはこちらに気づき、手を振っている。リナさんも俺をみてにこにこしながら手を振っている。4人ともなんら問題がなさそうで良かった。
リナさんの後ろ、最後に入ってきたロゼリールは俺の姿を確認すると、一直線に飛んできた。
見るからにロゼリールも元気そうで安心だ。むしろ元気が有り余っているように見えるが。
ロゼリールもひとしきり俺の周りを機嫌良さそうに飛んだあと、ネルモルの元へ。2匹で何やら楽しそうに話し始めた。
「いやぁ早かったね。さすがグランとアイナだ。」
マイクスさんが受付を終え、こちらのテーブルへとやってくる。
その後ろにはパーティを組んだ3人。フロルはミリーの隣に、ヘイルはサリオの隣に、リナさんは当たり前のように俺の隣へと座る。
「スイトお疲れ様!どうだった?」
「リナさんが攻略したっていうダンジョンにも行きましたし、時間が余ったのでアンジュの村にも行きました。それにネルモルも活躍して…」
「へぇ!あのダンジョンにね!そこに寄ってアンジュの村にも行ったのね。大分スムーズに進んだのね。あの子も頑張り屋さんだもの。ハルちゃん達との訓練も必ず参加してたし、それに器用だしね。」
リナさんは目線をネルモルに落とし嬉しそうに話しているネルモルを見てにこにこしている。
ネルモルも頑張ったもんなぁ。初めての戦闘とは思えないくらい、無駄のない動きに見えた。
ミリーはフロルと、サリオはヘイルとそれぞれ起こった出来事について話をしている。
道中ルートも違ったからなぁ。お互いの話は新鮮で興味深いものだ。
アイナさんとグランさん、マイクスさんも道中の事を話しているようで、アイナさんは相変わらずだが、グランさんとマイクスさんは真剣な表情で話をしている。明日や今後の予定を決めているのだろうか…?って、リナさんは会話に入らなくていいんだろうか?
「さぁ、みんな。聞いてくれ。」
グランさんとのやり取りが終わり、方向性が決まったのだろうか。マイクスさんが立ち上がり、こちらに話しかける。
俺達も会話をやめ、全員マイクスさんを見る。
「とりあえず本日の予定だが、ギルドに向かう。道中獲得した素材や肉などを買い取ってもらおう。そして戻り次第夕食にしよう。その後は自由行動のつもりだ。だが、街の外には出ないようにね。出る際は私かグランの許可を得るように。」
「「はい!」」
「俺は残って晩飯を作る。みんなでギルドに行ってこい。美味しい晩飯作って待ってるからな。」
今日の食材は大量のバイトラビット。それに…スネークイールだ。バイトラビットは食べ慣れているが、スネークイールはどんな味がするのだろうか?楽しみだ。




