第130話 3人で進んでいくってなんだか新鮮だねぇー。
更に黙々と歩いて行くと先には橋が架かっているのが見えた。
橋に差し掛かり、橋の上を歩いて行く。
歩きながら橋を観察しながら歩いて行くと木造だが、馬車などの往来もあるからか頑丈な造りがされている。
十数メートル程ある橋を渡り切ると、ベンチなどが置いてある舗装された小さな広場になっていた。
屋台が数軒並び、そちらから良い匂いが…ここで休憩している冒険者も何名かいる。そして荷馬車が多く止まっており、冒険者よりも商人のような人達が多くみられる。
この場所はゴトウッドからマルスーナの境にある広場と同じような役割を持つ施設なのだろう。
グランさんがベンチに腰かけたので俺達も座る。各々のテイムモンスターも座ったり伸びたりしている。
「ここはイースルーウッド領の休憩地だ。この先を1時間から1時間半ほど進めばイースルーウッド。それに川上と川下へと道が繋がっている。」
グランさんは道の先を指を指しながら俺達に説明をしてくれる。
川上を見ると先は小高くなっているように見え、道が狭まっており、川下はなだらかな舗装された道が続いており、馬車も走っている。
道幅はイースルーウッドへの道と川下の道が同じくらいで舗装もされている。
それに比べ、川上へと続く道は若干細くなっており、舗装もされてはいない。が、草などが生えておらず土が見えているのでこれが道となっているのだろう。
人々の動きを見ても、ゴトウッド方面やイースルーウッド、川下への人に対して川上方面は人が全く歩いていない。
「で、だ。今は昼過ぎで、マイクス達のグループとイースルーウッドで合流するにはまだ4時間ほど時間があるんだ。道中もっと手こずったり、時間に余裕を持ったことも理由としてあったんだが…」
「この川上の道に向かって歩いて行くと1時間ほど歩いて行くとアンジュという小さな村がある。時間的にも余裕があるし、川沿いに出る魔物は種類が異なる。そこに行こうと思うんだが。大丈夫か?」
俺達3人は顔を見合わせるが、ミリーとサリオの表情からは疲れなど一切感じられない。
俺達はグランさんの意見に頷く。
「よし。じゃあ10分程休んで、向かうとしよう。道中変わった魔物も出るかもしれないしな。それでだ。俺とアイナは一番後ろを歩くから3人で編成を決めてみてくれないか?ここからアンジュまでは1本道だからな。そんなに気を遣わなくてもいいはずだ。」
「さぁ。どうしようか?僕は先頭にはハルとピグミィを配置するのは確定だと思ってるんだけど。」
敵の気配を察知できるのに長けている2匹を先頭か。
実際俺もそれを考えていたので俺は了承する。
「じゃあその後ろにそれぞれのテイマーの俺とミリーが最適かな?」
「そうだね。それがいいだろう。で、ミリーの横にはネルモルを配置、その後ろに僕とガウリスが並んで進んでいこう。後方からのサポートは任せてくれ。」
実際この配置が一番良いように思えるな。
敵の気配を察知できて、戦闘要員としての役割も果たせるハルとピグミィ。
ミリーを中心に俺とネルモルでサイドを固める。これはミリーを守るためでもあるが…
そして後方から戦況を見つめ、柔軟に動くサリオと素早さでカバーができるガウリス。
現状これが一番かもしれないな。
俺もミリーも納得し、立ち上がって編成を組む。
「グラン先生。とりあえず僕達はこれで行こうと思います。」
「うん。悪くないな。じゃあ俺達は後ろからついていくから。行ってこい!」
グランさんの声と共にピグミィは歩き出す。
ピグミィの後ろを俺とミリー、それにネルモルが。最後尾にはサリオとヘイル。
遠くにはグランさんとアイナさん達が歩いている。
「3人で進んでいくってなんだか新鮮だねぇー。」
真ん中のミリーはにこにこしながら言う。
確かに今まではグランさんが先頭で、戦闘になり次第、各々が順番に戦闘をしてきた。
が、今からは3人で考えながら進まなければならない。新鮮ではあるが気が引き締まる。
「ピッ!」「ぶぃ」
ハルとピグミィが草むらを見つめ敵を知らせる。
俺達は身構え指示を出す。
「サリオ、ミリー。方向的にネルモルが一番近い。任せていいか?」
「あぁ。」「うん。」
2人の了承を得て、俺は敵の出現を待つ。
ガサッ!
と出てきたのはバイトラビットだ。まぁ慣れた敵ではあるが、ネルモルに指示を出す。
「よし。ネルモル。倒せるね?」
「もぃ!」
「やり方は任せた。好きなように戦って!」
指示を出す…とはいえ敵はバイトラビットだし、実際ネルモルがどういう戦い方をするか分からない。洞窟内では石を投げて敵を倒していたが…
バイトラビットは足を溜め、ネルモルに照準を合わし突進する。が、ひらりと躱すと同時に、ネルモルはバイトラビットの勢いを利用し、鋭い爪でバイトラビットを切り裂く。
突進したバイトラビットはそのまま倒れて勢いよくザザーッと滑る。
横たわり倒れたバイトラビットは全く動かない。
ててて…とネルモルが近寄りこちらを見てこくりと頷く。どうやら一撃で仕留めたようだ。
ネルモルの合図を確認し、バイトラビットへ近づく。バイトラビットの側部には鋭い爪の跡が深いひっかき傷のような状態で残っている。
臓器にもダイレクトでダメージがあるからか、少し息はあるもののバイトラビットは瀕死の状態だ。
ナイフで留めを刺し、解体していくが…
解体しながら見ていると傷は深く、肉も小さなブロックに。そして傷を負った側の皮はネルモルの爪の跡でボロボロだ。
うーん…これは反対側しか利用できないか…まぁ皮はギルドに持って行こう。肉は細切れになった分は俺達で処理して…と。よし。これで完了だ。
「ファイア」
小さい火を放ち内臓を燃やし、骨だけにする。これで処理も完了っと。
「ネルモル凄いな!良く頑張ったね!」
普段戦闘などしたことないと聞いていたが…リナさん達の修行の成果だろうか?非常に鮮やかに仕留められた。
ただ、バイトラビット等の際には皮がダメになるので、多用はできないか…
「凄いな…ネルモルがこれほどとは。」
「凄いねー。ネルモルちゃん。」
サリオとミリーが感想を述べる。
サリオは純粋に驚いているし、ミリーはしゃがみ、にっこり笑いながらネルモルを撫でている。
ネルモルはミリーに撫でられ、目を細め気持ちよさそうにしている。
「ただ皮が…なぁ。」
「まぁ…バイトラビットなんかの時には他の戦法を出せないか聞いてみた方がいいんじゃないかな?」
褒められているネルモルに聞こえないようにサリオとこそこそと話す。
しっかり一撃で仕留めたのにケチをつけたくはないが…バイトラビットに対して、威力が大きすぎた。
そうじゃなくても爪での攻撃は皮にもダメージが入ってしまう。ギルドに売る事を考えるとその辺の手加減も必要になってくるか。投擲もできるみたいだし、小さい石ころなんかもこの辺には落ちているからできそうなもんだが…
まぁ、敵を倒した後の素材は別として、バイトラビット程度なら一撃で仕留められることは分かった。これは十分戦力になるだろう。
そして俺達はまたピグミィ達を先頭に歩いて行く。
道幅が狭くなり曲がりながら、草むらや木々等が先ほどよりも生い茂る。そして徐々に上り坂になっている気がする。
しばらく歩いて行くと川沿いに出た。そこを歩いていると…
「ピッ!」「ぶぃ」
今度はハルとピグミィが川の方を見て鳴く。
川から現れるとなると…まだ出会ったことのない魔物の可能性が高いが…
俺達は身構え、武器を構えた。




