第122話 はい!行ってきます!
スライズで皆と昼食を摂り、冒険に参加することになってから2日後。冒険当日になった。
あの後、再度マイクスさんが店へやってきて、3人でスライズへ。
そこで今回の主な流れと、最初の街への順路が決定した。
9人いるものの、さすがに数が多く経験を積むのに効率が悪いということで二手に分かれ、東へ進む。
東に進むと言うよりかは世界樹を中心に反時計回りで進むと言った感じだ。
そして最初の目的地はイースルーウッドの町。
世界樹の木陰には4つの街があり、一番栄えているのがゴトウッドだそうだ。マルスーナへのアクセスも近いので便利だし、強い魔物も出ないので、商人などが簡単に訪れることができるからだそうな。
イースルーウッドの町からはまだ決まっていないが、なんの問題もなければ反時計回りに進む。
野営も経験させたいということでテントなどの用意も必要になる。
道中ダンジョンが見つかるかも知れないのでその辺は臨機応変に。とのことだった。
そして今回はハルとロゼリールがついてくると言っていたが…ハルはともかくとしてロゼリールはついて来て大丈夫なのか?12日も巣を空けることになるが。と聞いたら、ロゼリールは元気よく返事をしてきた。
まぁ問題はなさそうか…後ろではソルジャービーがやれやれ…って感じでしょげているので大丈夫じゃないかもしれない。
そしてもう1匹。ネルモルが今回は参加することに。なんか興味津々で付いて行きたい!と目をウルウルさせていたので、聞いてみたら二つ返事で付いて行くことに。
なので、急遽薄ピンクの布を用いてルーリアさんにネルモルのマーカーを作ってもらうことに。
「ネルモル?珍しいわね…1日あれば簡単なものなら作れるわ!」
という事で、半ば強引ルーリアさんに作ってもらう事に。
それを出発前に受け取りに行くと話がついている。
というか…結構な大所帯だが…大丈夫だろうか?
フードの方は予め、アイナさんから購入しているが12日間、3匹分のフードとなると結構な量だ。
飲み物のミルクは約3日間分くらい用意。足りなくなったら訪れる予定の町でも購入できるそうなので、たくさんは持って行かない。
まぁ、量を持って行って腐らせるのももったいないしなぁ…
「スイト!そろそろ出ましょ!」
リナさんに促され、家の鍵をかけゴトウッドへ歩く。
俺とリナさんが歩き、ハルは俺の頭の上、後ろからロゼリールが飛び、ネルモルはロゼリールとなにやら楽しそうに話している。
しかし、ネルモル連れてきて大丈夫だったかな。戦闘面でどれほどの力が出せるか俺は把握できていないが…
リナさんいわく筋は良い。らしい。それにやる気もあり、その辺の魔物には負けないだろうとのこと。
うーん…リナさんが言うなら大丈夫だろう。
1時間ほど歩いてゴトウッドの街へ。
相変わらず元気なバルトックさんに挨拶をし、ゴトウッドの街へ入る。
リナさんのお店が1週間ほど休みをもらうと一昨日の帰りに話したら、その日の翌日。つまりは…昨日に常連さんが常備薬や、いつも処方してもらっている薬を買いだめに来た。恐らくバルトックさんが冒険者や街の人らに言っておいてくれたのだろう。
なので昨日はこちらの世界に来て一番忙しかった。俺以上にリナさんも大変だっただろうな…
「さ。お店に寄って今日のためのポーションを取りに行きましょう。」
今日の為に準備したポーションが大量にある。マイクスさんいわく、リナさんが製造したポーションはどれも高品質らしい。
なので今回の冒険にあたってマルスーナのギルドとして買い取り、何かあれば使用。余った分はマルスーナに持ち帰り、宣伝も兼ねて、ギルドで冒険者に販売するとのこと。
1週間店を空けることを考えても、十分な申し出だったように思う。リナさんも二つ返事で了承していた。
店に入り、大量かつ様々なポーションを空のポケットに詰め、店を後にし、ルーリアさんのお店へ。
「スイトちゃん!出来てるわよー!」
お店へ入ると俺を見るや否やルーリアさんは薄ピンクのリストバンドのようなものを渡してきた。
「すいません。急なお願いで…ありがとうございます。」
「気にしなくていいのよ!ネルモルは穴を掘る魔物だからハルちゃんやロゼリールちゃんのものと比べて強度の高い素材になっているわ!恐らく腕に巻いておけば外れる心配もないのよ!」
この短時間で色々考えて制作してくれたルーリアさんに感謝だ。
お代は銀貨2枚だそうで、もちろん対火魔法の効果も付与されている。
テイムモンスターではないが…ロゼリールの友達だからな。一応マーカーはいるよなぁ。
俺はしゃがんでネルモルの左腕…左前脚…?にリストバンドを取り付ける?
キツくないか?と思ったがネルモルは喜んでいるのでサイズはぴったりだろう。
「うん!ちょうどいいサイズね!まぁ伸縮する素材で作っているから多少の伸び縮みは大丈夫だと思ったわ!じゃあ気を付けていってらっしゃいね!」
「はい!行ってきます!」
ルーリアさんに別れを告げ、待ち合わせ場所である東の門へ。
東門から出るのは初めてだなぁ。
俺達が到着すると、スライズの2人を除く、マルスーナ組が揃っていた。
「マイクスさん。おはようございます。みんなもおはよう!」
「うむ。スイト君おはよう。よろしく頼むよ。リナさんもよろしくお願いします。」
「はい!えーっと…これがマイクスさんに頼まれてたポーション類で…」
「ふむ…うん。確かに。全て揃っているね。リナさん。代金は冒険が終わり次第でも大丈夫ですか?」
「えぇ。いつでも大丈夫ですよ。」
マイクスさんも身長が高く、イケメンだし爽やかでスタイルはいいがガッチリしている。男の俺が見てもイケメンだ。それにギルド長という役職。非の打ち所がない男だ。
それにリナさん。もちろん綺麗だし、スタイルも良いし…身長だって女性にしては高い。
マイクスさんと並んでいるとお似合いのカップルに見える。
「スイトー。どうしたの?」
俺がぽけーっと2人を見ていると後ろからミリーが話しかけてくる。
「いやぁー…美男美女があーやって話してて絵になるなぁ…って。」
「あはは!そうだねー。リナさんも綺麗だもんなー。私だってリナさんに憧れちゃうもん。」
ミリーはミリーのままで良いと思うが…
元気でいつもにこにこしてて、いるだけで周りの空気を和ませてくれる。そういう雰囲気を持った人というのはなかなかいないと思うんだが…
「今回はハルちゃんとロゼリールちゃんと…この子は?」
ミリーの後ろから声をかけてきたフロル。
あぁ、まだ皆にネルモルの話をしていなかったか。
「この子はネルモル。ロゼリールの友達だよ。」
「へぇー。ネルモル…初めて見るわ。」
ネルモルは、フロルに向かってぺこりとお辞儀をする。意外にネルモルも賢いのかもしれないな。
もしくはロゼリールと一緒にいて、作法を学んでいるのか…
「ははは。私はフロルよ。よろしくね。ネルモル。」
フロルはしゃがんでネルモルに挨拶をする。
「もぃ!」
ネルモルは上機嫌にステップを踏んで返事をした。ネルモルも鳴くのか…
「しっかしよ。スイト。小さいながらも結構鋭い爪だな。」
ネルモルの特徴。小さい身体に似合わない長く鋭い爪。
話によるとこの爪で穴掘りをして、基本地中で暮らしているらしいが…
「ふむ。今回の探索では、ダンジョンに潜る可能性もある。ネルモルは穴掘りのスペシャリストだから、ダンジョンにも詳しいかもしれないな。」
そう。ダンジョンは地下にだんだん進んでいくものとリナさんに教えて貰った。
ネルモルも基本は地中で暮らしているし、穴掘りやトンネルに関しては専門といってもいいし、もしかしたらダンジョンの事も何か知ってるかも…ということでネルモルに聞いたら当たり前だ!と言わんばかりに自慢げに返事をしてきた。
なので今回ダンジョン探索にはネルモルの力が大いに役に立つかもしれない。
「あらあら。皆おはよう。早いわねぇ。」
アイナさんとグランさん、それにグライアと背に乗ったイエルムとリフル。
これで全員揃ったな。
ハルはイエルムの姿を見つけるとぴょんぴょんと跳びグライアの背に乗った。
ロゼリールは各々のテイムモンスターにネルモルの紹介をしている。
「うむ。これで全員揃ったな。ではここに9人いるが2つのグループに分かれて行動しようと思う。」
マイクスさんが全員揃ったのを確認し、そう告げる。
さぁ、俺の長い時間をかける冒険。それとダンジョン…まだ見ぬ冒険が始まろうとしている。




