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第117話 言ったわね!

さて、ティーセットを洗い再度カウンターへ座る。

 えーっとなになに…


『スイト・イーガマック様

おかわりはないでしょうか?実は7月の3、4週目を利用して12日間、そちらに伺おうと思っております。つきましては、私マイクスと、今後の勉強も兼ねて私、ミリー、フロル、ヘイル、サリオの計5名で伺おうかと思っております。宿の方はこちらのギルドの方で手配いたしますが街の案内などをお願いしたいのですがよろしいでしょうか?良き返事が頂けることを願っています。 PS.美味い店もチェックしていただけると助かります。 マルスーナギルド長 マイクス・ギーダル』


 なんと。来週マイクスさんが来ると。しかもミリーとヘイル、サリオを連れて4人で。


「リナさーん!これを…」


「なになに!?どうしたの…」


 薬の調合やらポーションの製造やらをしているところ悪いがリナさんに手紙を見てもらう。

 まぁ2週まるまる滞在するって言ってるしな。初日かどこかで案内することになるだろうが…


「へー。なるほどね…後でゆっくり考えましょう。それに…ギルド長のマイクスって人とアイナさん達面識あるみたいだし…明日スライズ行った時にでも話しましょうか?」


「そうですね。一応予定では再来週になっているので明日の夕方にギルドに返事を出しても十分余裕あるでしょうね。」


「そうね。そうしましょう。」


「久しぶりにミリーと会うのも楽しみだなぁ。ヘイルとサリオにも。」


「へぇー。私も楽しみだわ。そのミリーって子と会うの!どんな子かしらねー…」


 なんかつめたーい感じでリナさんが俺に言う。常々言ってるけどなんにもないのに…


「だから…ミリーは友人であってそれ以上でもそれ以下でもないですって…」


「へぇー。でも友人から恋人になるってことが普通よねぇ。」


「もう…!それ以上はないです!神に誓います!」


「言ったわね!帰ったらルナリスにスイトがそう誓ってたって言うわよ!」


「なっ!?」


 あかん。本物の神様がいたんだった…まぁあのつるぺた女神にそんなどうこうする力なんてないとは思うが。

 しかしなんでリナさんはそうもムキになるのか…女の人は分からない。まぁ俺のスキル不足かもしれないが。


「もう…本当にないですから。たまには信用してくださいよ…」


「そりゃーあたしだって男の影なんてないけれど女ですもの!それにスイトは同居している男の子よ?気にはなるわよ!」


 どーゆーこっちゃ…

 まぁ確かにこっちにきてからずっとリナさんとひとつ屋根の下で暮らしているし…

 別に俺に恋人ができたらダメな理由でもあるのかな?こっちでは女の人と話す機会も多いし、ぶっちゃけ前世なんか非にならないくらい顔立ちはいいし…味わえなかった恋愛をしたいのだが。


「逆にスイトはあたしに恋人ができたらどう思うのよ?」


 どう思うってそりゃー…うーん…


……


 なんか嫌だな。考えただけでなんかもやもやする。


「上手く言葉に言い表せられないですけど…うーん…なんか嫌です。」


「でしょ!?あたしもそういうことなの!」


 納得はできないが…リナさんに恋人ができたとして、俺がここを出ていくのはもちろんだし、リナさんの薬屋は?俺は解雇されるのかな…

 まぁその辺はしょうがないとして、単純にリナさんが別の男と楽しそうに歩いているのを想像するとなんかもやっとする。


「まぁ…でもミリーは本当にただの友達です。この前も言いましたけどそれ以下でもそれ以上でもないです!」


 俺はまっすぐリナさんの目を見て言う。

 リナさんは俺の語気の強さと真っすぐに見られてか少したじろいでいる。


「ま…まぁ…ずーっとスイトはそう言ってるものね。」


「えぇ!そもそもが俺って前世で恋愛どころか女性と話す機会すらなくて免疫ゼロでこっちに転生してきたんですから…」


「まぁ…確かにそうよね。最初はあたしにもよそよそしかったし。」


「でもずっとリナさんといて、女性にも慣れてきて…一緒に手繋いで寝たりとかする時もドキドキしましたし、そういうこと誰とでもするって訳でもないし…リナさんだから受け入れたというか…」


「あーもう!分かったわ!信じる!信じるから!あたしまで恥ずかしくなってきたじゃない…」


 やっと信じてもらえたか…

 実際もしリナさん以外の人に一緒に寝ましょう?と言われても断るんだよなぁ。

 リナさんだから良いというか…うーん。説明しづらいな。


「というかなんだかんだ言って良い時間ね。片付けをして帰りましょうか。」


「え?もうそんな時間ですか。確かにアレイラさんも来てましたしね。じゃあさっと片付けちゃいますね。」


「うん。お願い。あたしは裏を片付けとくから。」


 まぁ表を片付けるといったってこじんまりとした店内だし、商品の整頓、床などの掃除は毎日欠かさず行っているから、やることはないんだけどな。

 まぁ、ハルを起こすくらいか…


「ハルー。帰るよー。」


「…ピッ?」


 大体いつも一言かけただけでハルは起きる。

 ハル目当ての常連さんが来た時もハルは寝起きの機嫌が悪いという事もなく対応してるし。

 日常生活で、ハルが機嫌悪そうな時を見た事がない。


 さ、ハルも起こしたし、何か不備も…うん。ないな。後はリナさんだけだ。


「リナさーん。終わりましたよ!」


「うん!こっちも終わったわ!帰りましょ!」


 リナさんの方も片付いたようだ。

 裏にはリナさんが調合するポーションの材料や、中には乾燥させて使う薬草などもあり、独特な匂いがするのだが、決して嫌な臭いではない。


 俺達は店を出て、いつものように帰路に就く。

 道中ではいつものようにバイトラビットが向かってくるがハルがそれを一蹴。

 晩御飯のおかずが一品増えました。


「ビッ!ビビッ!」

 

 イーガマック家に着き、庭へ入ると巣からロゼリールが出迎えてくれる。

 ずーっと不思議には思っているのだが、何か気配とかで察知してくれているのかな?

 今までそんなことはなかったし、大丈夫だとは思うが不審者などが現れたら、恐らく威嚇したり牽制したりしてくれるのだろうか?

 今日はロゼリールが出迎えてくれたが、何か郵便物などがある時はソルジャービーが手紙などを渡してくれる。

 家の警備だったり、郵便物などを預かってくれていたりとロゼリールや蜜蜂族は非常にありがたい。


「はい。ただいま。何か変わったことはなかった?」


「ビッ?ビビッ!」


 うん。いつも通りらしい。

 この後俺とリナさんは家に入り、部屋着に着替えたら俺は夕飯づくり。

 ハルはロゼリールの巣へ遊びに行ったり、リナさんが訓練をつけてもらったりする。

 最初はハルとロゼリールが何やらリナさんに訓練をつけてもらっていたようだが、今ではソルジャービーとネルモルが参加し、4匹で学んでいる。

 ソルジャービーはさておき、ネルモルは学ぶ必要はあるのだろうか…?

 まぁ本人は興味津々で参加して、何やら楽しかったらしいのでそれから頻繁に参加している。


 料理を作り終え、庭に出ているみんなを呼びに行くと今日は訓練をしていたらしく、全員が庭に揃っていた。


「リナさんお疲れ様です。晩御飯できましたよー。」


「うん!ありがとう!みんな素直でやる気があってね!あたしも教えがいがあるんだー!」


 何の訓練をしているか分からないが、身にならないことはリナさんは教えてないだろう。

 ハルもロゼリールもそれくらいの分別はつくだろうし。


 俺はハルやロゼリール、ソルジャービーとネルモルの身体をタオルで拭き、家に上げる。

 俺が冒険から帰ってきた日以来ソルジャービーとネルモルも一緒に夕飯を取るようになった。

 ソルジャービーもネルモルもフードが美味しかったらしく、それからというもの毎日夕飯に参加している。

 その対価としてなのか、ソルジャービーとネルモルは木の実やら、色々なものをたまに俺にくれる。

 木の実も有益なものばかりで、ネルモルは地中を掘っている際に見つけたものを持ってきてくれる。

 まぁそんなことをしなくても、俺はソルジャービー達やネルモルは仲間だと思っているから気にしなくていいと言ったんだが…彼らの気が済まないらしい。


「ふぅー今日も美味しかった!ごちそうさま!」


「いえいえ、お粗末さまです。」


 晩御飯を食べ終えると、洗い物をし、俺とリナさんはティータイムだ。

 ロゼリールの巣にいる魔物達は挨拶をし、皆で巣に帰る。

 ハルは一緒について行ったり、俺の周りを楽しそうにピョンピョン跳んだりと自由にしている。

 今日はロゼリールの後ろをついていったのでロゼリールの巣に行ったあと、そのまま部屋に戻りおやすみだ。


「ふぅー。今日も1日お疲れ様だったわねー。」


 食後は決まって俺とリナさんでのティータイム。この時間が一番落ち着くんだよなぁ。


「いえいえ、リナさんもお疲れ様です。」


「最近薬やポーションの売れ行きがいいのよね。スイトとハルちゃん効果かな?」


 俺がいるから女性客が増えたとリナさんは言ってたしな。それにハルを構ってくれるお客さんも増えてきている。

 俺とハルがリナさんのお店にいい影響をもたらせているなら良い事だ。


「そう言ってもらえると嬉しいです。リナさんのお役に立ててるってことだし。」


「ふふっ。スイトもハルちゃんもあたしの家族みたいなものだから…もちろんロゼちゃんも、ロゼちゃんのとこの子達も。数か月で本当に賑やかになったなぁー。」


 俺が来てまだ1年どころか半年も経ってないからなぁ。

 リナさんはずっと一人暮らしだって言ってたし、急に俺のテイムモンスターが2体にそのテイムモンスターの巣の魔物が3体…確かに一気に賑やかになった。

 それでもリナさんは嫌な顔せず…それどころか、楽しそうな表情をしてくれている。

 リナさんがテイムモンスターに理解があって本当に良かったと思う。

 一緒に住んでいるのがリナさんじゃなければ、今頃ハルやロゼリール達とどこかに家を借りて住んでたのかなぁ?


「さ、お茶も美味しかったし寝ましょっか。…ねぇスイト今日…」


「分かりました。後でお邪魔します。」


 あの日から、冒険から帰った日から変わった事。

 それは週に何度かリナさんと一緒に寝ている。

 まぁ週に何度か寝ていたら俺も慣れ…てくるわけがないんですわ。えぇ。

 やっぱり全然慣れません。

 リナさんは家族って言ってくれているけど、今の関係ってぶっちゃけ家主と居候だしなぁ。


 俺は寝る支度をしてリナさんの部屋へ。

 枕は相変わらず自分のものじゃないと寝れないからなぁ。枕だけ持って…と。リナさんの部屋の扉をノックして…


「おじゃましまーす…」


 リナさんの部屋に入り、静かにベッドに入る。


「はーい。いらっしゃーい。」


 最初はリナさんもぎこちなかったがやはり慣れてきてる…のかな?俺は慣れないけど…


「いいなぁー。リナさんは緊張しなくて…」


「あら…スイトはまだ緊張してるの?」


「えぇもちろん。ほら。」


「あはは!凄い汗!」


 俺はリナさんの手を握る。やっぱり緊張しているからか手汗が凄い。

 やっぱりまだまだ緊張しますよ…それに、ムラムラもするし…だって年頃の男の子ですもの。


「さぁー明日もあるから少し話して寝ましょっか…」


「そうしましょう。えへへー…リナさんの匂いだぁー。」


「もう!バカ!ほんとに緊張してるのかしら…」


 俺は布団に顔を埋めて、感想を述べるが…リナさんはちょっと怒ったように俺に言う。

 さすがに初日よりかは緊張はしていないが、それでもまだまだ緊張はする。

 だが、これくらいの冗談は言えるようになったし、眠りにつくこともできる。

 ただ…少し変態っぽいのが良くないところだろうか。

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