第108話 うーん…分かんないけど…なんだかんだ頼りになるのよね。
ガーショを採集した俺達は…と言っても俺は採取できなかった訳だが…
とにかく、4人とテイムモンスターを連れ歩き出す。
次の目的はキンカの実。場所については橋の手前の花畑。俺とミリーが出会った場所だ。
「花畑の横を歩いていると逆側にキンカが生っていたのを見た覚えがあるんだ。大きさも色もキンカの実で間違いないと思うけど…」
実物を見ていないのでなんとも言えないが、3人共キンカの実を知っているようなので大丈夫だろう。
しかし森に入るとここらよりも強い魔物が出る。主にドリルボアとビッグフロッグだが。
「2人は良く森へ行くの?」
ミリーがヘイルとサリオに問いかける。
ミリーは花畑に良く行くと言っていたし、道中ドリルボアやビッグフロッグに遭遇することだってあっただろう。まぁその時はピグミィが相手をしているはずだけど。
「うーん…まぁたまに。かな?普段は森とは逆に歩いて行くことが多いかな?」
「そうだな。林の中でイートラットを難なく狩れるようになれば、世界樹の木陰とは反対方面に歩いて、森の中で経験を積むってのが、マルスーナの冒険者の流れって親父が言ってた。」
なるほど。それがマルスーナ出身の駆け出し冒険者にはリスクが少なく効率的にレベルが上げられる…ってことなのかな?
となるとミリーはやはり特殊なのか…そもそも今までは冒険者ではないしなぁ。
「そうなんだねー。私は冒険者じゃなかったからなぁ…でもピグミィを連れて花畑には良く行ってたんだ。そこでスイトと出会ってねー。」
「途中で色々な魔物には遭遇しなかったのか?」
「遭遇することもあったよ!でもピグミィがやっつけてくれるんだ。ねー?」
「ぶぃー」
ピグミィはさも当たり前の事のように答えるが…そもそもピグミィは戦闘とかの経験ってあるのか…?
ずっとミリーと一緒にいて牧場の手伝いをしていたのであれば、ほぼなさそうなものだが…
「でも俺達が小屋の中にいる時、外で相手してたのはロゼリールとミリーとピグミィだよね?ピグミィって実際の戦闘とかってしたことあったの?」
俺は疑問に思った事を率直にミリーに聞く。
ハルとロゼリールの成長も著しいが、ハルは毎日なにかしら練習をしていたし、イエルムを師として魔法も学んでいた。
ロゼリールは言わずもがな…出会った頃からそこそこの実戦経験はあるし。
「うーん…分かんないけど…なんだかんだ頼りになるのよね。ねー?」
「ぶぃー」
うーん…ピグミィの謎のひとつだな。まぁでも心強いミリーの相棒には間違いはない。
まぁミリーとピグミィは長い付き合いのようだし、何かしら毎日コツコツとレベルアップしてたのかもしれないしな。
「ところでヘイルとサリオは?マイクスさんが言ってたけど若手では優秀な冒険者だって聞いてたけど。」
「はっはっは!ギルド長がそう言ってたのか!っつっても俺達も毎日クエストをこなして、バオールと特訓して…って感じだな。他の奴らもほぼ大差ねぇと思うが。」
「僕もヘイルとクエストをクリアしてたまに戦略の事を考えたり…まぁ、状況を想定した練習なんかもしてるけどね。あの時こうしておけば効率的だったんじゃないか…とかね。」
ヘイルもサリオもクエストをこなし各々考えて冒険に備えているって訳か。
ヘイルとバオールは体を動かし、サリオとガウリスは戦略などを立てて効率化…か。テイマーによってテイムモンスターの成長が変わってくることも大いにあるかもしれないな。
「スイトはどーしてんだ?」
「俺?俺は…そうだなぁ。」
ハルはゴトウッドへの道すがらスライムを倒したり、バイトラビットを倒したり…を毎日してるし、スライズに行ったらイエルムやリフルと色々話したり、グライアを交えて遊んだり…
ロゼリールに至っては普段はお留守番だから日中なにしてんだろうな?まぁ巣を作ったり、気分転換にその辺ふらふらしてそうだと思うけど…
「結構自由にさせてるんだね…」
うん。2人の話を聞いた後だと結構自由気ままにさせてるんだなぁ…と自分でも思ったが…
無理に練習させるのもあれだしな。
2匹が考え、それを戦闘で実践する。不足しているところがあれば俺が補えればいいし、意思の疎通が出来れば不測の事態でも対応はできるし、そのおかげなのか元々賢いからなのかは分からないが、ハルもロゼリールも個々で考え実行できるしな。
いざとなればしっかりと連携を組むことも可能だろう。それが今回の林の中の一件での収穫だ。
あとは連携も意思の疎通も精度を上げていけば…と俺は考えている。
俺にできる事。今は2匹が戦い俺はサポートに回る。現状これが最適だろう。
その為には俺もより一層テイマーとしての質を高めなければならないし、実戦で色々と学ばなければならない。俺自身も今回の林の中の一件で何をやるべきか俺なりに明確に考えられた。
まぁ、無事成功に終わったわけだが、下手したら失敗していた可能性も大いにあるからなぁ。
「まぁスイトは森から来たから大丈夫だし、俺達も森には入り慣れてる。ミリーも花畑に行けるって事は心配はないな。」
まぁ森に出て好戦的なのってドリルボアかビッグフロッグだしな。4人いれば万全も万全。問題はないだろう。
「しかしドリルボアとかビッグフロッグはどうにかなるとしてよ、しびれバエがなぁ。」
「そうだね。群れで現れるし…めんどくさいったらありゃしないな。」
俺達しびれバエに出会ってないんだよなぁ…エマから貰った『友好の印』がある。その効果か、ロゼリールがいるからなのか…なんにせよ弱いが群れてなおかつめんどくさい相手と戦わないで済むのはラッキーだ。
なんだかんだ話しながらマルスーナの街から歩いて分かれ道に到着する。
振り返ると丘の上に建物が見えている。
冒険者ともすれ違ったしな。旅慣れているような人から若者の冒険者まで。様々な人がいた。
「よし!じゃあ森に入っていくとするか!花畑まではすぐだし、キンカの木もその辺りだからな。」
ヘイルが歩き出し森へ入っていく。
ハルは俺の頭の上に、ロゼリールは左斜め後ろを飛んでいる。
俺も周りを警戒しつつ歩いてはいるが、索敵能力に関して言えばハルが一番長けている。
「しかしあれだな。俺とサリオは…というか街のテイムモンスターを連れている冒険者は同じような道筋を辿って冒険者になっていくが…テイムモンスターの育成とか関わり合いってこうも違ってくるんだな。」
街の冒険者達も大まかな道筋は一緒だが、細かい部分。テイムモンスターの育成に関しては100人いたら100人違ってくるだろうし…
その上で俺とミリーみたいなテイマーは異質ではあるしな。
「ヘイルの言う通りだね。ミリーやスイトを見ていると全く違うんだなぁ。って思うし、街のテイマー達も細かい部分で違ってくるしね。そのテイムモンスターの特徴を生かして上手く育成しているテイマーもいれば、伸び悩んでいるテイマーもいる。ガウリスとバオールだって同じバウという種別だが性格も戦闘スタイルも違ってきているしね。」
確かバウは初心者にも育てやすいテイムモンスターだって言ってたな。賢く従順だから、テイマーに合わせた成長をしていくのだろう。
テイマーもテイマーで方針を定めて育成はしていくと思うのだが。
…となるとうちのハルやロゼリールは…?育成方針とかないし…
サリオが自由にさせているって言ったのはその点だろうな…
「色んなテイマーがいるってことよね。私はピグミィに守ってもらってばっかりだからなぁ…冒険に出るなら私も頑張らなきゃだねー。」
俺も経験はない方だがそれ以上にミリーは戦闘経験がないからなぁ。なんならこないだの林の中での一件が初めてくらいか。
俺達に比べ、ヘイルやサリオは冒険にも出ているし、戦闘経験もあるはずだ。2人から学べることも絶対にあるだろう。
色々話して、考えたりしながら歩いていると右手に花畑が。
今日も晴れているので薄暗い木々の間から見る花畑はより綺麗に見える。
「花畑が見えてきたな。ってことは左側を見ながら歩いて…お!あったぞ!スイトあれがキンカの実だ。」
ヘイルが指を差す先を見ると黄色い小さな実が生っている。
あれがキンカの実か。これをある程度…10個くらいでいいか。採取して、リナさんのおつかいミッションはクリアってとこだな!
世界樹の木陰に帰るまでにやることはやり終えられそうだ。あとはゆっくり帰るだけだ。




