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●第137話●合同討伐二日目

すみません、前後編では終わりませんでした!!

おかしいなぁ、10行程度のプロットなのになぁ……。敵スタンドの攻撃に違いない。

※136話が二つになっていたので修正しました。こちらは137話です!


ブックマーク、評価していただいた皆さま、本当にありがとうございます!!

週3~4話更新予定です。

 二日目の魔物討伐も、前日の勢いをかって朝早くから順調な進捗を見せていた。

 時折怪我人は出るものの、幸い死者を出すことなく段丘の七割程度まで討伐が進んでいる。


 引き続き遊撃部隊として動いている勇たちは、段丘の一段目谷側をジグザグに進んでいた。

 なお、昨日はルビンダ・バルシャム辺境伯が同行していたが、本日はナザリオ・イノチェンティ辺境伯が同行している。


「にゃっにゃっにゃ~」

 織姫は、先頭を行くティラミスの頭の上に乗って今日もご機嫌だ。台座となっているティラミスもご満悦である。

 台座を巡る戦いは、専属騎士全員参加による三つ巴手遊びの結果、ティラミスが射止めたものだった。

 ちなみに三つ巴手遊びは、この世界のじゃんけんだ。

 剣(人差し指一本)、盾(前倣えのように全指を揃える)、魔法(親指一本のグッドサイン)を同時に出して勝敗を決める。剣>魔法>盾>剣、という強弱の関係だ。


 勇達が先行する中隊を追いかけて、七割を超えたあたりに差し掛かった時だった。

 織姫が、魔物を見つけて飛び出していく。ここまでであれば、そのままその魔物を一閃してからすまし顔で戻って来るのだが、今回は戻ってこない。

 歩みを進めると、ラギッドスパイダーと思われる魔物の十メートルほど手前で立ち止まったまま、姿勢を低くして様子を見ている織姫がいた。


「……皆さん、一度止まって下さい」

 織姫の尻尾がへの字になっているのに気付いた勇が、馬から降りながら小声で皆を停止させる。


「ヒメ先生が警戒している時の姿勢っすね」

「うむ。唸ってはおられないから、要注意だと仰っているのだろう」

 さすがは織姫信仰の重鎮たちだ。勇と同レベルで織姫の状態を把握できるようになってきている。


 勇達が自分の近くに来たことを感じ取ったのか、織姫は更にもう一段グッと姿勢を低くすると、二回ほど小さくお尻を振ってから飛び出した。


 弾丸のように突っ込んだ織姫は、ラギッドスパイダーの前足二本を刈り取り相手のバランスを崩すと、小さくジャンプして頭部へとどめの一撃をお見舞いした。

 どさり、とラギッドスパイダーが地に伏せる。普段であればここで戻って来るのだが、今回は死骸を見たまま動かない。


 いつもと違う織姫の様子に、勇達も状況を見守る。

「「「「「えっ??」」」」」

 数秒後、全員が絶句する。


 ラギッドスパイダーの骸が、鉛色の煙と共に消え失せたのだ。


「な、何でここでっ!?」

 勇が思わず驚きの声を上げる。その場にいる全員の疑問を代弁したようで、皆一様に頷いている。


「確かにこの辺りは、完全に風化した遺跡とも呼べない遺跡はあるが……。そこから魔物が出てきたか、ここ自体が遺跡扱いなのか。

 コイツ一体だけだったとしても、今後どうなるか分からんし、他の遺跡でも同じことが起きんとも限らん。大問題だな。

 イサムよ、至急全中隊長、いや小隊長以上に召集をかけたほうがいいぞ」

 自領に遺跡があるナザリオが、真剣な表情で勇に提案する。


「分かりました。ティラミスさんは、セルファースさんにこの事を知らせてください。リディルさんとマルセラさんは下段にいるエレオノーラさんに報告、下段で討伐にあたっている隊長への招集を依頼してください。

 上段への伝令は、フェリクスさんが仕切って下さい。私は伝令の邪魔になるので、アンネと一緒にこの辺りで待機しています。ミゼロイさんと何名か護衛をお願いします。野営地に集合すると時間が勿体無いので、ここに集合させます」

「「「「「了解っ!」」」」」

 ナザリオの提案を聞き勇が早速皆に指示を出す。


「ワシも伝令に走ろう。上位貴族の騎士達にはワシや他のじじぃ共が当たったほうが良いだろう。

 お前らは一通り声だけかけてくれ。言う事を聞かないくせに、声が掛からないと文句だけは言うような奴もいるからな。ワシらが行って黙らせてくれるわ」

 ナザリオがニヤリと笑ってそう言った。

 

「ありがとうございます!当主様を使ってしまって大変申し訳ありませんが、ご協力いただけると助かります」

 ナザリオの言葉に、勇が深くお辞儀をする。

「何、この程度問題無い。重要な事案だからな。では行ってくる!」

 そう言うと、再びヒラリと馬に跨り、一鞭入れて颯爽と駆けていった。


「……とても素敵なお方ですね、ナザリオ閣下は」

 やり取りを隣で見ていたアンネマリーが呟く。

「うん。ああいう方を出来る男と言うんだろうね。見習わないとね」

 それを聞いた勇は、そう言って大きく頷いた。


 辺境伯家の当主と、話を聞いたエレオノーラまでもが直接伝令に走ったおかげで、あっという間に小隊長以上が集結した。

 状況の説明を勇が始めてすぐ、驚きの事実が判明した。

 なんと昨日のうちに少なくとも二件は、同様に魔物が消えていたにもかかわらず、現場の判断で報告が上がっていなかったのだ。


 曰く、その一匹以外消えるような事が無かったので見間違いと判断した、沢山の魔物を倒す中での出来事だったため気のせいだと思った、らしい。

 正式なレポートラインが存在しないのでお咎めは無しだが、これが軍だったら懲罰ものだろう。

 その証拠に、報告しなかった騎士の言い訳を聞いていたナザリオ達も渋い表情をしている。


「ま、ここで咎めたところで事態は好転せんよな。だったら不問にしてさっさと次の指示を出したほうが良かろう」

 というエレオノーラの鶴の一声もあって、調査部隊が結成され追調査が開始される事となる。


 本当は勇を軸にしたオリヒメ派の貴族家のみで固めたいところだったが、後で難癖をつけられるのも面倒なので、別派閥の重鎮貴族家からも選抜メンバーを出してもらう。

 オリヒメ派からはクラウフェルト家、エリクセン家から選抜メンバーを出す。

 それ以外の騎士団には引き続き魔物討伐を続けてもらい、また魔物が消えたり、少しでもおかしなことがあったら報告してもらう事とした。


「ふむ。昨日今日二日に渡って見つかったという話だったが、発見場所どうしは近いな。それも谷側に集まっているのか……?」

 遺跡産と思われる魔物が見つかった三箇所を確認した後、一人の女性騎士がそう口を開く。

「そうですね、フランボワーズさん。一段目の谷寄り、直径五百メルテくらいの範囲といったところでしょうか」

 女性騎士の話を肯定し補足する勇。

 調査隊の責任者は大隊長のセルファースとエレオノーラが務めるが、実際の調査は騎士達が行うため、指揮官には勇が任命されていた。


 女性騎士――フランボワーズは、クラウフェルト家が準決勝で対戦したフェルカー侯爵家の騎士団長だ。

 調査隊に引き込んだ二つの貴族家の内のひとつは、フェルカー侯爵家である。


 試合の時にも感じていたが、彼女は当主サミュエルに心酔しているというだけで、魔法騎士としてはとても優秀かつ真面目だった。

 今もすぐにそれぞれの位置関係を把握している。この辺りの地形はすでに頭に入れているのだろう。


「そうなると、下段から這い上がってきた可能性もあるのではないか?」

 今度は白馬に乗って白い鎧を身に纏った男性騎士から意見が出る。

「確かに……。一段目だけに出るとは限りませんね。ありがとうございますパルファンさん」

 男性騎士にも礼を言う勇。

 こちらは調査隊に引き込んだもう一つの貴族家、シャルトリューズ侯爵家で副騎士団長を務める男だ。


 反目し合う派閥の重鎮貴族家を引き込むことで、調査の中立性を保つのが狙いである。

 また、そういった思惑を抜きにしても、彼らは非常に優秀な騎士達だ。そんな彼らを調査に参加させるのは必然だろう。

 この二家以外に、クラウフェルト家とエリクセン家の騎士団で、調査隊は結成されている。


「では、上段と下段に分かれてもう少し詳しく調べてみますか。崖の部分には洞穴もありますからね、その辺りも調べてみましょう。

 フェリクスさんとフランボワーズさん達は上段を、パルファンさんとガスコインさんたちは下段をお願いします」

「はっ」

「分かった」

「了解した」

「承知した」

 いきなり指揮官に指名されただけの家格が下である勇の指示にも特に不満を表に出すことなく、隊長たちは二手に分かれて調査を開始する。

 優秀な者は、些事に囚われることは無いため物事の優先順位を見誤らないのだろう。そんな彼らを失望させないよう、勇も気を引き締めた。


 調査を開始して一時間ほど。下段側でさらに二匹の遺跡種と思われる魔物が発見された。

 これでたまたまである可能性はほとんどゼロになっただろう。何らかの理由で、遺跡産の魔物が地上を闊歩しているということだ。


 魔物はいずれもラギッドスパイダーだった。

 このエリアに通常種のラギッドスパイダーが生息していなければ、どこで湧いているのかの特定も捗るのだが、あいにくここには同魔物の通常種も生息している。

 そうなると倒してみないとどちらか分からないので、非常に厄介だ。実は今に始まった事ではなく、単に発覚していなかっただけかもしれない。


 しかし、一流の騎士達だけで構成された調査隊は流石だった。

 その後さらに二匹の遺跡種を仕留めたのだが、それらがいた場所や状態もヒントにしてついに出現ポイントを突き止めることに成功した。


「まさか土砂の中から出てきよるとは思わんかったわ……」

「そうですね。まさかモグラのように這い出てくるとは……」

 先程まさに土砂の中からもぞもぞと出てくる現場を押さえたガスコインとパルファンが苦笑する。


 湧いていたのは一段目と二段目の間で散見される崖崩れ、その一つの土砂の中からだった。

 どちらの段でも発見されたのが境の崖側に偏っていたため、崖のどこかだろうとアタリは付けていたが、まさか崖に空いた洞穴ではなく土砂からとは予想外である。

 二段目で仕留めたラギッドスパイダーの体表、ゴツゴツした岩のような外皮の間に、二段目の地面とは微妙に色合いの異なる細かな砂利や土を発見し、それと同じ色の場所を探すことでようやく答えに辿り着く事が出来たのだった。


「ん? これ、土砂崩れというより、崖の中から押し出されてるのか?」

 勇が呟く。

 土砂崩れで出来た斜面を慎重に上って、大元と思われる上部の土砂を試しに少し取り除いたところ、崖そのものが崩れている訳ではなく崖の一部に穴が開いており、その内側からこの土砂が流出しているようなのだ。


「何かの拍子に崖に穴が開いたか? そうなると……。この魔物が遺跡の魔物だった場合、崖の中にまだ遺跡が埋まっているということか?」

「その可能性が高いわな」

 状況を見たパルファンが少し考えて仮説を口すると、ガスコインが賛同する。


「これ、多分地面とかも遺跡の床だか天井だかが所々混ざってるんでしょうね。だから遺跡の中だと判定されてる、と。まぁだれが判定しているのか謎過ぎますけど……」

「そうだな……。屋根が無くても遺跡種の魔物がいる遺跡もあるからな。変則的だがここもそういった遺跡と同じなのかもしれん」

 勇がさらに突っ込んだ見解を口にすると、今度はフランボワーズがそれに同意する。その内容から遺跡探索の経験が豊富なのが分かる。


「どうしますか? 遺跡が埋まっているのであれば、時間が許す限り掘ってみますか?」

 フェリクスが勇に方針を尋ねる。

「そうですね……。放置しておくとまだ遺跡種が湧いて来る可能性が高そうですし、掘れる範囲で掘ってみましょうか。皆さんはどう思いますか?」

 勇が他家のリーダーにも水を向ける。


「問題無い」

「私もだ」

「遺跡なら掘るわな」

 三者とも異議は無いようだ。


「ありがとうございます。さて、そうすると新たな課題が出てきますね。崖を掘っていく事になりますが、どうやって掘るか……」

 方針は決まったものの、発掘するために来た訳ではないので道具が何も無いのである。

 かと言って手で掘っていたのでは全くらちが明かないレベルだ。


「小規模な爆発魔法と風魔法で掘れば良いのではないか? 威力が大きいと崖崩れの危険があるが、弱めの威力で少しずつ削れば問題無いと思うが?」

 フランボワーズから意見が出る。魔法が得意な彼女らしい意見だが、現時点では勇にも最良に思えた。


「そうですね。時間もあまりありませんし、それでいきましょうか。幸いにして、フランボワーズさんを筆頭に魔法の得意な方が多くいらっしゃいますしね」

 勇がそう言うと、他家のリーダーたちも首肯する。


「では、まずはフランボワーズさんお手本をお願いします」

「む、私からか? ……分かった。通常の二割程度の魔力で撃つが、小石が降ってくるかもしれんから少し離れていてくれ」

 勇からのオーダーを受け、フランボワーズが一歩前へ出て崖を見上げる。逆に周りのメンバーは数メートル距離を取った。


 一呼吸おいてから、フランボワーズが呪文の詠唱に入る。

『無より生まれし火球は、爆炎となって敵を打ち倒す……』


 その瞬間勇が隣のフェリクスに素早く指示を出す。

「フェリクスさん、風壁(ウィンドウォール)を」

「は。『渦巻く風よ、守れや守れ。』」


爆炎弾(ファイアブラスト)!!』

風壁(ウィンドウォール)


 ほぼ同時に、二人の魔法が発動した。


 フランボワーズの手から放たれた光球が、勇達の頭上七~八メートルあたりで、ドンッと派手に爆発する。

 続けてガラガラガラーッ、と崩れた土砂が頭上から雨霰と大量に降り注いでくる。


「ちょっ!!」

「なっ!?」

「は?!」

 予想外の事態、いや間違えれば当然起こりうる事態だが、そうはならないだろうと思っていた騎士達が驚愕に目を見開く。

 そこへフェリクスの風壁(ウィンドウォール)が傘のように発動、逃げようとしていた一同が慌ててその下に戻って来た。


 傾斜をつけて展開された薄緑色の壁が降り注ぐ土砂をガンガンと弾き、辺りがもうもうと土煙に包まれる。

 やがて土砂の雨が止むと、ユリシーズが弱竜巻(テンダートルネード)で立ち込める土煙を吹き飛ばした。


「な、なんてことしやがるっ! 殺す気か!?」

「……魔力を抑えて放つ、という話では無かったか?」

 状況が落ち着いた事で我に返ったガスコインとパルファンが一斉に突っ込みを入れる。


「……すまない。実はあまり魔力を絞るのが得意ではなくてな。いけるかと思ったのだが、やはりダメだったか」

 言われたフランボワーズは素直に謝罪する。


「やはり、ってお前なぁ……。はぁ、まあいい。それよりフェリクスよ、よう風壁(ウィンドウォール)を間に合わせてくれた。おかげで助かったぞ」

 毒気を抜かれたガスコインが、今度はフェリクスに礼を言う。

「いえ、私はイサム様の指示に従ったまでです」

「ん? そうなのか?」

 フェリクスの返答にガスコインが首を捻る


「ええ、想定していたより注ぎ込まれた魔力が多かったので……」

「む? 魔法顧問殿は魔力が見えるのか?」

 サラリと答えた勇に、フランボワーズが質問を投げかけた。


「ええまぁ。発動する時の魔力しか見えませんけどね」

「そうか。何にせよ助かったぜ。ありが、っ!? なんだ!?」

 ガスコインが勇にあらためて礼を言おうとした時だった。


 ゴゴゴゴゴ……


 地鳴りのような低い音と、細かな振動があたりに響き渡る。

 その振動のせいか、パラリ、パラリと崖から小石が転がり落ちてきた。


「何の音だ……?」

 勇があたりを注意深く見まわしていると、肩に乗っていた織姫が飛び降りた。

「フゥゥゥーーーーッッッ!!!」

 そして背中の毛を逆立て尻尾を膨らませながら、先程の崖を睨んで唸り声を上げる。


「っ!! 姫っ!? 皆さん、注意してください。何かヤバいものが来ますよっ!!」

 それを見た勇が、そう叫ぶ。一瞬の戸惑いを見せるが、そこは流石に優秀な騎士達。すぐに身構える。

 クラウフェルト家の面々は、織姫が唸った時点ですでに臨戦態勢をとり、崖から距離をとり始めていた。


 ゴゴゴゴゴ……


 音と振動が一段大きくなる。

 固唾を飲んで状況を見守っていると、ドカンッ、崖の上の方から何かが弾けるような音がした。

 音のした方に目をやると、色違いの土砂が出てきていた付近の崖が弾けて何かが飛び出してきたようだった。


 その何かは、空中でくるりと回転すると、ズザーと少し滑りながら着地する。

 飛んできたのはラギッドスパイダーだった。しかし、先程まで仕留めていた個体より一回り大きい。


「まだ打ち止めてはおらんかったか」

 ガスコインが呟き駆け出そうとしたところで、さらに崖が弾けた。

 今度は一度ではなく、ドカンドカンと崖一面が一斉に弾けていく。


 そして先程と同じように、飛び出してきたラギッドスパイダーが次々と着地する。

 正確な数は分からないが、二十匹は下らないだろう。

 それを見て全員が一斉に崖から距離を取り、魔物と睨み合う。


「……たいした歓迎じゃないか」

 フランボワーズが苦笑する。


「数が多いですね……。ひとまず前衛は二列の横陣を。後衛はその後ろで魔法の準備……、なんだ?」


 ゴゴゴゴ!!!!


 勇が指示を出し始めたところで、振動が突然大きくなった。

「シャァーーーーーッッ!!!」

 崖をずっと睨んでいた織姫が、最大級の警戒音を出す。


 ドガァァァッッ!!!!


 大音響とともに、崖が大きく吹き飛んで、巨大な何かが飛び出してきた。


 ドスン、と重量感のある音とともに、それが地面へと着地する。

 続いていた耳障りな音と振動が収まった所を見ると、目の前のそれが原因だったのだろう。


「デカいな……」

「なんだ? ラギッドスパイダーの亜種か?」

 誰かが呟いた通り、それはラギッドスパイダーの様な見た目をしていた。

 ただし大きさが段違いだ。全高は三メートルほど、四角いその身体の一辺も三メートル程ある。

 四つの目が怪しく光り、脚も四本しかなかった。


「……イサム様、アレは限定領域にいた?」

「ええ、同型と見て良さそうですね。倍くらい大きいですけどね……」

 それから目を離すことなくフェリクスが勇に問いかけると、苦笑しながら勇が答える。


 キィィィィィィ……ッ


 すると突然、甲高い音があたりに響き渡る。

 どこからだと辺りを見回すと、ラギッドスパイダーもどきの口のあたりから聞こえてくるようだった。

 そしてそれを見て勇が顔を顰める。


「皆さん魔法が来ますっ!! かなりの魔力量なので気を付け…っ」

「ニャーーーーッ!!」


 どんっ


 勇が注意を促すより早く、相手の口から細い光の帯のようなモノが勇をめがけて吐き出された。

 どんな攻撃が来るのか分かっていたのか、織姫が素早く勇を体当たりで突き飛ばしたため、どうにか被弾を避ける。

 先程まで勇が立っていた地面が抉れ、バチバチと火花が飛び散っていた。


「ありがとう、姫!」

「にゃっ!」

 素早く起き上がった勇の肩に織姫が飛び乗り、すりすりと頭を頬にこすり付ける。


「さーて、どうしたものか……」

 額の汗を拭き、織姫を軽く撫でながら零した勇の呟きが、砂煙と共に谷間へと消えていった。

週3~4話更新予定予定。

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― 新着の感想 ―
[一言] 大丈夫。某国のドラマなんか、歴史書に一行位しか無い記述を元に54話ものドラマを作り上げるんだから、それから比べたら数行が数十ページになるくらいは普通にアルアルだよ!(笑)
[一言] 報連相は大事!
[一言] 更新有り難うございます。 ヒメ、つおい……!
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