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●第11話●魔法とは?

 昼食後、早速勇の部屋で魔法に関するレクチャーが行われていた。

 ちなみに、年頃の娘が男の部屋に入って良いのかとニコレットに確認したのだが、全く問題無いとの事だった。


「こちらが、水の初級魔法の呪文が魔法語で書かれた本になります。

 通称”呪文書”と呼ばれていて、何の魔法の何級のものなのかを繋げて呼びます。

 今回のこれは、水の初級呪文書、ですね」

 

 アンネマリーが持って来てくれたのは、装丁のしっかりした1冊の本だった。

 まだ印刷技術が発達していないのか、写本のようだ。相当値が張るに違いない。


「以前にも簡単にお話ししましたが、魔法を使うための手順は3段階です。

 1段階目が、魔力を集中させること。

 2段階目が、使いたい魔法の結果をイメージし、魔力の質を変化させること。

 そして最後の3段階目が、呪文を唱えることでイメージを具現化、魔法として発動させることです。

 この順番を守れば、魔力さえあればひとまず魔法は発動します」


「なるほど……」

 以前にも聞いたが、プロセス自体はそこまでややこしいものでは無い。

 集中させる、とか結果をイメージする、とか、抽象的な内容が多いので、そのあたりの難易度は不明だが。


「では、各段階について、もう少し詳しく説明しますね。

 まずは1段階目です。

 魔力は体内に万遍なく流れていて、これを使って魔法を使います。

 しかし、魔法として発動させるには、魔力を一定以上の濃度に集める必要があるんです。

 伝説の大魔導士のように、体に流れている状態でその濃度があれば別ですが、普通はそんな濃度はありません。

 なので、魔力の流れをコントロールして、魔力を一か所に集めてやる必要があるんです。

 集める場所は何処でも良いのですが、少なくとも最初は、一番わかりやすい手の平に集めるのが良いと思います」


「ああ、だからアンネマリーさんは顔の前に手をかざしていたんですね」

「その通りです。その後に発動させる時も、どこから発動させるかイメージする必要があるので、大体の方が手ですね。

 余談ですが、伝説の大魔導士は体中から魔法を発動させていたらしいですよ」

 なんだそれは。体中から火の玉やら電撃を飛ばすとか、もはや兵器だ。

 伝説の大魔導士とやらは、どうやらとんでもない輩だったらしい。


「次に2段階目です。

 これは、以前にイサム様の能力(スキル)の調査をした時にやった部分ですね。

 使いたい魔法のイメージが明確に出来ると、魔力の質がそれに必要なものに変換されます。

 ウォーターボールであれば、水の魔力と言った具合ですね。

 この変換が出来ないと、魔法を発動させる魔力にならず、魔法は使えません」


「大事な所ですね。

 ちなみに、何故イメージするだけで魔力の質が変わるのでしょうか?」

「それは残念ながら分かっていないのです。

 魔法だけでは無いのですが、エーテルシアの歴史には最低千年ほどの空白がある事が分かっています。

 魔法は、その空白前に理論が完成したものらしいのですが、空白以前の魔法に関する資料は、ほとんど残っていません。

 なので、我々が知っているのは千年の空白後の魔法のみなのです。

 空白後の魔法研究は、ほんの少しだけ残っていた資料と予測を頼りに、手探りで行われて今に至っています。

 もっと乱暴に言うなら、“良く分からないがやったら出来た”事の積み重ねですね」


「そうだったんですね……」

 驚きの事実だった。かなり魔法が浸透しているので、てっきり高度な魔法学が出来ているかと思ったのだが…

 まさかの習うより慣れろだったとは。


「では、最後の3段階目ですね。

 この本に書かれているような魔法語で、使いたい魔法の呪文を唱えます。

 唱えた呪文と、イメージにより変換された魔力が一致したら、魔法が発動します。

 2段階目まで出来れば、3段階目は呪文を覚えるだけなので大丈夫だと思います。

 まぁ、普段使っている言葉とは全く異なるので、ちょっと覚えるのが大変かもしれませんが……

 ちなみに、この魔法語の発音に関する資料だけが、奇跡的に空白の千年前の遺跡から発掘されたのです。

 それが無ければ、恐らく私達が魔法を使うことは出来なかったと思います。

 とは言え、資料が残っていたのはあくまで発音に関してのみで、どんな意味なのかはほとんど分かっていません。

 複数の同系統の魔法に同じフレーズが出てくるので、恐らくこれは水を表しているに違いない、と言うレベルで一部予想されていますが、確かめる術が今のところ無いので……」


「なんと…呪文は音を丸暗記する感じなんですね。確かにそれは覚えるのが大変かもしれませんね……」

 お互い苦笑しながら首をすくめる。

 驚きの事実その2だ。まさか呪文もただの丸暗記だったとは。

 せめて寿限無くらいに意味があってくれれば、覚えるのも楽なのだがなぁ、と益体も無い事を考え、何気なく呪文書をめくった。

 これが呪文書か。確かに発音がこの国の共通語で書かれている。

 その下に、魔法語が書かれているが…?


「……。すいません、アンネマリーさん。

 この共通語の下に書いてある文字が、魔法語なんですよね??」

「はい。そうなります」

「なるほど…」

 呟きながら、勇は穴が開くほど呪文書を見入ったまま動かない。


「ど、どうされましたか?」

 心配してアンネマリーが尋ねる。

「うーーーーーん……。驚かないでくださいね。

 アンネマリーさん。私多分、この魔法語の意味が分かります……」

「えっ!?」

 頭をポリポリ搔きながら言う勇に、絶句するアンネマリー。


「はははー。能力(スキル)のせいですかねー」

 乾いた笑いしか出てこない。

 しばし空気が停滞する。

 数秒後、停滞した空気が爆発した。


「な、な、なんですってーーーーーっっ!!!???」


 後に”お嬢様史上最大音量”と語り草になる、アンネマリーの大絶叫だった。

今日中にあと2話アップ予定

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― 新着の感想 ―
魔力の集中のさせ方によってはグルグルの「但し魔法は尻から出る」になるのか
[良い点] 「未知なる古代語の翻訳能力」 これだけでもとんでもない希少能力ですよね。 魔法の研究機関からすれば相当な役職や報酬を用意してでも囲いたい存在になってしまった。 何しろ千年もの技術空白を一…
[良い点] 魔法システムが段々わかってくるところですね。
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