表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
42/165

6

いつもお読みいただきありがとうございます!

 訓練場の一角にある小屋に入ると、早速老人は指示を飛ばし始めた。


「オウムを全隊に送る。文章はこれだ」


 地図が壁中に張られ、五人が慌ただしく動いている。壁の地図を眺めていると老人が戻ってきた。


「さて。人間の小娘よ」

「エーファです」

「人間の小娘のエーファよ」


 どっかりとイスに腰を下ろす。どうあっても小娘は譲らないんだ。


「人間の女はもっとか弱くて依存体質なのかと思っておった。とんだじゃじゃ馬じゃ。竜王陛下の命令ならどこかへ入れないといかん」


 ケンカ売られてますかね。


「先ほどの魔法に反抗的な態度。そして面倒なことにマクミラン公爵家の倅の番か。どこが欲しがるかの。やれやれ引退間際にとんだ爆弾を抱え込んだものじゃ」


オウムを抱えて外に走り出た部下であろう人物が、オウムを空に放っている。

老人は書類仕事に取り掛かり始めたので、放置されたと感じたエーファは所在なさげに立っているエーギルに声をかけた。


「あの地図の赤いバツ印なに?」

「変異種らしき魔物が目撃された場所だ、黒は大型の魔物の出現場所」

「多すぎじゃない?」

「疑いだからな。目撃情報が間違っている場合もある」

「ふぅん。森ってどのくらいの大きさなの? これで全部?」

「そうだ、四方200kmだな」


200kmか。時間はかかるけど、風魔法で脱出できないわけでもない距離だ。


「ギデオンの代になってから死んでないと聞いたけど、魔物被害ってけっこうあるの?」

「それは……」

「あの倅は二年前に隊長を継いでここ最近は番探しに行っておった。ほぼカイン任せじゃ」


言いづらそうなエーギルの代わりに老人が答える。


「二年ほどじゃそれほど死なん。スタンピードもないんじゃから」


 そんな会話をしているとバサバサとオウムたちが帰ってくる。


「戻りが早いな」


 メガネを取り出して足に括り付けられた手紙を読んでいる。


「あの方はどういう方なの?」

「参謀部隊のトップだ。フクロウの鳥人でレガロ・メフィスト閣下だ」

「もうすぐ引退?」

「本人は引退したいらしい」


 賢そうな風貌や音があまりしない動作は確かにフクロウなのかもしれない。


「へぇー、あぁ魔法のことだけど。いつ伯爵家に行けばいい? 天空城に行くスケジュールは明日以降に決まるから空き見てみる。分かんないなら手紙でも書いてよ」

「いや、でもギデオンが……」

「別に伯爵家に知り合いに会いに行くのにダメとは言わないでしょ。言うの? まさかマルティネス様を監禁してないでしょうね」

「セレンティアはあまり部屋から出たがらない。まだ声も出ないからな」

「じゃあ問題ないでしょ。ダメと言えばギデオンの器が小さいことが証明されるだけよ」

「ギデオンはお前を思い通りでにできないことでかなり苛立ってないか? ギデオンの隊にも入らず、天空城にも何度も行くんだ。あのくらいの暴走は番を見つけたての獣人や鳥人にはままあるが、続くと厄介だぞ」

「さっき閣下に視野が狭くなってたって謝ってたし大丈夫じゃないの?」

「入隊も天空城行きも竜王陛下の決定だから従うとは思うが……あまりギデオンは刺激しない方がいい」


 刺激するなって言われても。もう散々しているような。


「刺激するとなんかマズイの?」

「人によってはな」

「マルティネス様の足を折った人が言うと説得力あるぅ」

「番に対する激情を抑え込むには相当な理性が必要なんだ」

「ふむ。ほとんどの隊が断ってきたの」


 閣下の机にはいつの間にか手紙の山ができ、肩や頭には帰ってきたオウムが乗っている。


「カンベン! カンベン!」

「マホウイラネ!」

「ニンゲンマニアッテル」

「チョットメンドウミキレナイ」

「リュウジンコワイ~」


 片言でオウムたちが喋る。


「魔法いらないってどういうことよ」

「ドラクロアでは竜人以外はしょぼい魔法しか使えないからだ。さっきのギデオンだってそんな感じだっただろ。魔法よりも力が絶対という考えだ。魔法には依存しないということだな」

「喜べ。小娘。一隊だけ、お前を受け入れてもいいという隊があった。十三隊だ」

「十三隊って?」

「戦闘部隊の嫌われ者だ」

「つまり戦闘部隊ってこと?」

「コヨーテ獣人とハイエナ獣人で形成される戦闘部隊だ。オオカミを目の敵にしておる隊でな、最も危険な地域に行く部隊じゃ」

「ギデオンのところやライオン・ヒョウ・トラの獣人部隊はエリート部隊だ」


 近衛とそれ以外みたいな感じ?


「魔法だろうが人間だろうが戦闘能力が欲しいらしいぞ。ま、無理だったら帰って来て参謀部隊でオウムたちの餌やりじゃな」


 え、それじゃあ森に出づらいじゃない。


「行きます」

「じゃあそう返事をしておこう。ギデオンに文句はワシに言えと伝えておけ」


 あ、今気づいたけど。前髪焦げてる。あの魔法使う時は結界張らないとだめだな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ