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2.神の盤面

 少し難しい話になっていたので、ここからは地球人である私の視点から話をまとめてみようと思う。


 さて皆様、異世界ものの作品はご存じだろうか?

 転生したり召喚したりだけでなく、一般的なファンタジー作品も異世界に含まれる。ゲーム・漫画・アニメ・小説・映画・童話……どんな媒体での作品でも構わない。一つでもご存じならば話が早い。

 いま私が居る星がまさにその異世界であるということだ。


 ここは恒星クロルーシュア。


 地球からすれば多元宇宙にある太陽のような存在にあたるとのこと。内側に居ると解らないが、恒星としては太陽以上だとか。ただし核融合反応ではなく、星の周りを覆っている膜そのものが光っているらしい。

 この白い空間は星の中心に近い場所で、地表のどこかという訳では無い。


 そして目の前に浮いてる黒い玉こそが、その恒星ことクロルーシュアである。


 存在が見えた方が対話がしやすいだろうということで、この黒い玉は仮初の幻体なのだとか。

 確かに地面や空間から姿が見えないままで話を聞くよりは安心する。……この黒い玉の体内に居るのか……などという余計な考えは今は置いておこう。


 この星も太陽と同じく周りには数多の惑星が廻っている。それが皆様ご存じ異世界のそれぞれの舞台となっている星ということらしい。つまり実在していた。この多元宇宙空間に。


 そしてこのクロルーシュアは太陽という存在であると同時に、新種の生物を創り、周辺の星へ卸している。

 つまり星単位の生物斡旋所を担っているらしい。


 ……正直なにを言っているのか解らないと思うが、私も何を聞かされているのか解っていないので、今は雰囲気だけで理解して欲しい。


 さて、説明の為にこれ以降は星を創る人を神と呼ぶ。単位も分かり易く人としておく。


 神は一人一つの星を創り、育てる。そして星がある程度成長したらその星から離れ、新たな星を創り、また育てる。手放した後に星が滅ぼうとも、神が離れた星に戻ることは無い。星の成長を決めるのは星に住まう生物に委ねられている。つまり神がまだいる星は製作途中ということだ。


 そして神にも多少なりとも個性が存在した。だからこそ数多の種類の星が存在する。だが困ったことに、生物を創ることが苦手な神が多かったのである。岩しか無かったり、ほぼ気体だったり……歳若い神だと球体にすることすら難しいらしい。草1本ですら創れない者も多い。

 そんな中、数多の種類の生物育成に成功している星の一つに地球がある。神からすれば練習見本として大変良い教材なのだとか。

 逆に地球にファンタジー作品が多い要因が、神が地球の生物の生態を知ろうと人々の記憶に繋がってる時があるかららしい。多くの異なったファンタジー作品を生み出している人は、それだけ多元宇宙の神に愛されているということ。だから異世界作品なのに地球によく似た馴染み深い生活様式が多く存在していたのかと納得である。知らないところで持ちつ持たれずの関係だったらしい。


 しかしその反動として人間以外の生物創造が苦手な神が増えてきていた。地球という一つの成功例に頼り過ぎたのだ。

 魔物の出ない作品やドラゴンやゴブリンなど定番しか出て来ない作品、モヤとか実体のない人外しか出て来ない作品などに触れた事はあるだろうか?

 それらの原因が神が新しく創造出来ないから、らしい。


 このままでは似た星しか生み出されず、星の成長や発展が頭打ちになりかねない。

 そこで少しだけでも手助け出来ないかと考えた結果、このクロルーシュアで生物を代わりに生み出し、必要とする星へ卸しているという訳だ。


 さて、ここから私がこの星に呼ばれた理由に繋がる。


 話が長いと思うが最初だけだから聞いて欲しい。


 星の発展を願うなら環境も生物も新たなものを常に生み出さなくてはならない。だが生み出す者が一人だと限界がある。

 そこでクロルーシュアは考えた。様々な星の数多の種族に手伝って貰えば良いのでは、と。

 選ばれるのは完全ランダム。あらゆる星を対象に、存在が確立している生物が寝たり気絶したりと意識を手放した瞬間、こちらの星で用意された器に繋がる。

 つまり私がいま入っているこの球体である。

 繋がってみないとどこの星のどんな種族なのかが解らない。繋げたはいいが突然暴れられたり彷徨われても困るので、まずは無難な球体にしているらしい。お互いの本来の姿も見えない方が恐怖心や敵対心も薄まるとのこと。流石に意思疎通が困難な者は即強制帰還させているらしいが。

 繋がった者は夢幻者と呼ばれ、残ると決めた者には希望に沿った身体を与えられる。この星が球体が住人とかいう世界ではなかったことに安堵したのは内緒にしておこう……。


 やるべきことは【生物を創製すること】。


 言い換えれば、異世界作品によく出てくるような人外……いわゆる魔物を創るのを手伝って欲しいということだ。


 絵でも文章でも記憶でも、自分が楽なやり方で構わない。思いついた時に創製した生物の情報を提供するだけで良い。

 ちなみに生物の定義は命や魂の有無ではない。それは地球とか一部の星だけの定義なのだとか。星によっては肉体を持たなかったり、寿命などという概念すら無かったりする。「生きている」という定義そのものが全く違ったりするのだ。この辺は地球しか知らない私にはさっぱり解らないのだが、特に理解しなくても良いらしい。地球人らしい生物を創ることも貴重なのだとか。そうでなければあらゆる星の住人と繋げる意味がないからと。

 創り出す造形は自由。植物などでも構わない。

 だが、実際に立体として造形出来るのはクロルーシュアだけ。夢幻者がどれだけ設計しようとも、勝手に造形出来ない。勝手に出来てしまうと未完全な有象無象を増殖させてしまうだけだとか。……過去になにかあったようだが触れないでおこう。

 名前や属性を付けるのも自由。だが必要な部分だけ欲しがったり、星の命名規則に合わせた変更を申し出たりするので、自分が創った通りのまま他の星へ渡る事は稀らしい。既に存在する生物の改良版も可能で、歴代を含めると細菌類だけで数千種類存在するのだとか。随分多いと思ったが、スライムやキノコがこれに含まれるらしく妙に納得してしまった。


 創製する生物は見た目や生態などの基本だけで構わない。星によって属性や魔法の在り方も変わってしまうからだ。星に合わせた属性付与や量産するのは卸し先の神の仕事である。

 例えば、魔物の異常発生イベント時には重宝されているのだとか。確かにその場限りの使い捨て用にはお手軽な調達法だ。

 もちろん凝った一点ものも取り扱っており、一点ものは契約した星にしか卸されない。いわゆるオーダーメイドである。これは細かな注文が付いてくるので、主にクロルーシュア本人が製作する。私たちには締め切りもノルマもない。気軽に思いついたままを創れば良いらしい。

 人型は足りているので必要は無いが、創るのは構わない。ただし注文がつくことは極稀である。地球という見本があっても創ることが出来ないなどと、自ら無能であると言っているようなものなので、流石に神としての矜持に関わるのだとか。


 ……神様も大変だな。


 以上がこの星のことと、私たちが呼ばれた理由らしい。

 ……異世界にまで仕事で呼ばれるとは思っていなかった、というのが真っ先に浮かんだ感想である。

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