04 捜索 ※王子side
王子side
◆◇◆◇◆
「見つかったか?!」
「いいえ。まだ……」
舌打ちが出そうになる。
何をやっているのだ!と怒鳴りたくなるのをこらえる。
何故、彼女を見つけられない?
やり場のない苛立ち。
今の私は握る拳を机に打ちつけることしかできない。
捜索を任せた兵がおずおずと言う。
「恐れながら、殿下。ご令嬢が無事だとは思えません。もう……」
「いいや、彼女は無事だ。生きている」
「そうはおっしゃいますが……」
「探してくれ。もっと下流まで範囲を広げろ。
……ドレスは脱いでいたし、髪も切っていた。着替えて、平民に紛れているのだろう。
彼女を見たものがいないか。周辺の全ての家々に彼女らしき女性がいないかあたってくれ」
「……はっ」
彼女の捜索隊を出して七日目だ。
「もう諦めるべきだ」という兵士らの言い分はわかる。
だが、彼女は生きている。
生きているのだ。
王子という立場でなければどこまででも、自ら彼女を探し歩くものを―――
しかし今の私は兵士らと同じだ。
彼女がどこにいるのか、わからない。
何故、彼女がどこにいるのかわからない?
こんなことは初めてだ。
《今まで》は彼女がどこにいてもすぐにわかったのに……
こんなことになるならあの宴の日
彼女の手を離したりするのではなかった。
いや……強引に引き止められるものでもなかったが……
彼女の、はじめての拒絶。
彼女の、激しい拒絶。
思い出すだけで胸が痛い。
だがそれも仕方がない。
「まさか彼女にも……過去の記憶があるとは……」
《過去を知っている》と匂わされてはじめて知った。
《今までの彼女》は何も言わなかった。
だから全く気が付かなかったが……
いつからだ?
彼女は《いつから》の記憶がある?
まさか……
彼女にも……全ての記憶があるのか?
何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も
何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も
生きた記憶が。
背中にぞくりと冷たいものが走る。
だが……それは後だ。
彼女を見つけてから聞けばいい。
彼女を見つける方が先だ。
どこにいるのだ
いったいどこへ行った?
ああ、早く見つけださなければ。
私の《番》。
唯一無二の私の《番》。
何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も
何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も
どれほど生まれ変わっても
狂おしいほどに求めるのは彼女だけ。