13 狂気 ※王子side
彼女を私のもとに連れてきたものの、満足に会える日はなかった。
何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も
何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も
転生を繰り返してようやく手に入れた
ひと時も離れていたくない《番》。
―――すぐにでも彼女が欲しいのに。
父王の許可
まず婚約者候補から始まる妃教育
結婚式に至るまでの準備
そして多量の執務
―――二人きりになりたいのに。
部屋には何人もの侍女
それが嫌ならドアを開けての
わずかな面会時間
舌打ちが出そうになる。
だが仕方がないと心を鎮めてきた。
今の私はこの国の王子だ。
王子が妃を迎える手順
それらはどれも必要なことだ。
彼女と一緒になるために。
彼女と結ばれるために。
そう思い、こらえていたら行われたのが《妃探しの新たな宴》―――
怒りでどうにかなりそうだった。
妃だと?
何を言っている。
私の唯一無二の《番》。
私の妃は彼女しか有り得ないのに。
もう手順など知ったことか。
もう我慢などするものか。
そう決め彼女の部屋を訪ね見たのは男の姿。
彼女の髪を掴んだ男の、手。
私の中で何かが外れた。
気がつけば男を斬りつけていた。
躊躇うことなく剣を振り下ろした。
「汚い手で彼女に触れるな」
私の《番》。
彼女に触れて良いのは
彼女を見て良いのは
私だけだ。
のたうち回る男が彼女の足元にいることすら不快でどけた。
ふと見れば彼女のドレスには男の汚い血がついている。
私は彼女に謝った。
「すまない。ドレスを汚してしまったね」
汚れたドレスなど今すぐ脱がしてしまいたい。
だがその時間すら惜しい。
彼女を抱きしめた。
ああ、彼女が腕の中にいる。
そして……香り。
彼女の香りと私の香りが混ざり合う。
ああ
とけてしまいそうだ………
――― ひとつになれないのが口惜しい ―――
「…………殿下。――殿下っ!」
うるさい邪魔な声。
見れば私の護衛だ。
のたうち回っていた男を助けている。
その目は信じられないとでも言うように開かれ
「どうしてこのようなことを!」と言う。
どうして?
何故わからない。
「その男が彼女に危害を加えたからだ。良い機会だ。皆に言っておこう。
彼女を傷つける者を私は決して許さない。髪の一本、爪の先ひとつでもだ。
―――よく覚えておけ」
護衛の侍女の
その場にいた者、全ての顔が蒼白になった。
私は満足し笑った。
皆、よくわかったようだ。
「………殿下……」
彼女が私を呼んだ。私を見ている。
―――くらくらする。
その瞳に酔う。
そうだ。
私だけを見ていてくれ。
その瞳に他の誰も映さないでくれ。
私の《番》
二人だけでいたい。
君さえいれば他には何も誰もいらない―――――




