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第6話 復讐事後!!

「さて、これからどこに行こうか?ちびっ子。」


「ちびっ子はやめてください。私はエリースです。それよりも‥‥‥、決まって無いのですか?」


「‥‥‥ひゅー、ひゅー。」




 改まった私達だったのだが‥‥‥、目の前に亜人がいるとなるとつい殺したくなってしまうため師匠にはフードを被ってもらった。


そして私はこれから向かう場所を訪ねたのだが‥‥‥、師匠がこんなことを抜かしやがったので絶賛キレてます。



 だから口笛するのをやめてください師匠‥‥‥。ちびっ子呼びの怒りも相まって殺したくなります。



「もう一度聞きます。決まってないのですか?師匠。」


「ヴァンさんだって!」


「これだから亜人は。狐汁にしますよ。」


「愛称で呼んでもらいたいのにそこまで言うか!?普通!!一応、前の世界では師匠だったんだよな!?

俺!!うう‥‥‥、絶対にお前に俺たちのこと好きになってもらうからな!!」


「はあ‥‥‥、ヴァンという名の汚い亜人。どうして決まっていないのですか?あなたが私の村によったあ

とどこに行く気だったのですか‥‥‥?」


「くっ‥‥‥。罵られながら憐れみの目で見られるのってとてもツライな‥‥‥。

えっとな、本当はこのあとお前の言う『亜人』の国がここらへんにあるから、そこで商売をしようと思っていたんだがな‥‥‥。

お前、あれだろ?まだ亜人の村になれないだろう?商売しに行ったら『ワタシ大量殺戮しちゃいました〜』、なんて洒落にならないからな‥‥‥。ここら辺は人族の国の真ん中だしな。

なら、まずは近くの街によってから、東のほうに向かって行こうと思う。東には俺の伝手が多いしな。それでいいか?」


「‥‥‥」




 師匠は‥‥‥、亜人だ。嫌いだ。憎い。



 でも、私を想うその心がけは評価してやってもいいかな。


旅に出るにも師匠の助けがあるから楽だし。地図がないからどこに何があるか全くわからない。


だからこそ、自称商人の師匠が必要となってくる。



「分かりました。《《ヴァン》》。その方向性でいきましょう。」


「おお!愛称呼び!!俺との距離、近づいたか!!」


「勘違いしないでください。この旅は仮のものです。『村から逃げたかった理由を知る』ことができるまでです。本格的に一緒に旅をするとは決めていません。心の距離はびくともしていません。依然、あいたままです。それに私は亜人が嫌いです。ですがまあ、あなたのその心意気は買いました。」


「はは‥‥‥、なんかちびっ子‥‥‥、冷たくなったな‥‥‥。それに本当にお試しなのかよ‥‥‥、あれは勢いっていうか‥‥‥。俺はマジで旅の仲間になるのかと‥‥‥。」




ショックを受けたような様子のヴァンになんだか後味が悪‥‥‥、くなんかない!!


だ、だって亜人がショックを受けただけだよ!?そんなの動揺するのはバカ!



でも‥‥‥、これが今の世ではダメなんだっけ‥‥‥。亜人と仲良くしないと‥‥‥。それで神父様が‥‥‥、あう‥‥‥。




でもでも!亜人は憎い‥‥‥。



っていうか、なんでまだちびっ子呼びなの!?私にはエリースという立派な名前が‥‥‥。




「ちびっ子?何百面相してるんだよ。」


「な、なんでもありません。あと、ヴァンには話したと思いますが私が時間を巻き戻した方のは『勇者』に

復讐するためです。」


「ああ‥‥‥。旅云々で忘れていたけど、そういえばそうだったな。」




今のうちに私の目的をはっきりさせておかなくてはならない。



旅に気をとられて復讐できないんじゃ時間を戻ってきてまできた意味がない!


私は確実に勇者を殺さなきゃいけない‥‥‥。



「そうです。そして私はこの勇者を殺したいんです。勇者は年を取ればとるほど化け物のように強くなっていきます。できれば小さい頃のうちに、‥‥‥殺しておきたいのです。最初はそれを諦めていましたが、私が旅をするなら別です!あそこにたどり着いたらきっと私は目的を果たせられる‥‥‥!!勇者の出身の村に寄ってほしいのです!」


「‥‥‥すまないが、それはできない。」


「っ!?なんで!!」




 私をそこに連れていけばいいだけだ。


そうしたら私は、私は!!あの敬愛なる勇者サマを殺すことができる!この手で!!


私に優しかった村を滅ぼしたあの人を!!この手で!!




「聞いていましたか!?私の話を!!勇者は殺したんです!!お母さんを!!隣に住むおばさんも!!長老も!!皆!皆!皆殺しにするんですよ!?あと7年後に!!そんなのを見過ごすと!?私を育ててくれた村を知っていながら滅ぼさせるなんてそんなことはできない!!‥‥‥それともあなたには、できるのですか?故郷が滅ぼされるのを黙ってみていることが。」




 思わず号哭を発すると師匠ははんっと鼻で笑ってから語りだした。



「俺の故郷?あんなクソなとこ、俺は黙って滅ぼさせるがな‥‥‥。まあこれは関係ないな。すまん。お前があの村を愛し愛されたことはお前の話からよく分かる。だがな、よく聞けちびっ子。お前は復讐してからそのあとの人生をどうやって生きるんだ?」


「復讐の、あと‥‥‥?」




 そんなこと、考えもしなかった。


勇者に殺されてからここまでに至るまでの時間が短かったということもあるが、ただ『憎い勇者をこの手で殺してやりたい』。ただそれだけだった。


復讐の、あとなんて、そんなことを悠長に考えるなんて無駄だ。




そういう思いが一番の理由だろう。


何故なら勇者が強すぎるからだ。勇者は認めたくはないが特別に神様に寵愛されたかのような才能の持ち主で、すべてのことが達人級にできるのだ。



少しでも勇者の実力がないうちにでも殺したい。どうやって残酷に殺すか。



それらのほうが大事だ。




「少なくとも、それを疎かにしている時点で俺はその村へ行かせようとは思わない。何回妖術を使ってもお前を止める。」


「‥‥‥」



 妖術は強力すぎる。


寿命を削るからか、魔術でも『教会』の技をもったとしてもできないことを可能にする。それは‥‥‥、理解している。


実質無理というわけだ。




「お前は勘違いをしていないか?」


「何を、間違えていると?」


「お前の両親は、いや村の人達は生きている。そしてその『勇者』とやらが大量の殺人を起こさない可能性もある。」


「っ!」


「考えてみろ。前のときは俺はお前のいや〜な師匠だったんだろう?俺が獣族であることや女であることを隠していた。でも今はどうだ?俺とお前はこうやって向かい合って対等な立場で話している。俺の秘密も話した。お前の時間が巻き戻る前では讃えられていた『人族至上主義』は今の世の中ではありえないことだ。つまり巻き戻る前で起こり得なかったことが今普通に起こるんだ。」




 勇者が、何もしない、世界。



 勇者が存在しない世界。それが今の時間だ。


 そんな世界で勇者が私達の故郷をわざわざ滅ぼそうとするだろうか‥‥‥?



 そう、言いたいの?




 __やめてよ!そんな話聞きたくない!!



 私は、勇者を!!殺さなきゃ!!




「‥‥‥っうるさい!!」



 イライラしてグチャグチャして‥‥‥。気がついたときには魔術を発動していた。



「おい!?ちびっ子?」


「うるさいうるさいうるさいいいい!!」




 正確には、『しようとしていた』




「おい!?くそったれ!!なんでまた魔力暴走が!?ちびっ子!?」


「うう‥‥‥。」




 ******




「ぅあ‥‥‥。ここ、は‥‥‥。」


「よう、ちびっ子!起きたか!」




 ああ、そういえば今ヴァンと旅を‥‥‥。



目を覚ますとすっかり夜になっていた。


焚き火をしていたのかパチパチという音が静かな音が聞こえた。草原だと火は危ないんじゃないのかと思っていたら下には土ばっかりのようだ。どうやら下にある土を掘り返したらしい。



私は草のあるところに寝かせられた。




「ちびっ子はやめてください。」


「はいはい。ちびっ子。」




 ‥‥‥イラってした。



「ところで何故私は魔力暴走が収まっているのですか?」


「ん?ああ。妖術でちょちょいともらったのさ。」


「ごめんなさい。」


「謝ることはないさ。」


「‥‥‥ごめんなさい。」




 でも流石に自分の不祥事で妖術を使って寿命を縮めたのに謝らないなんてことはない。




「はは!ちびっ子はおもしれーな。」


「な!何がですか!?」


「だって嫌いな亜人にも敬語使ったり、律儀に謝罪したり‥‥‥。」


「それは癖で‥‥‥!」


「それでも偉いよ。」



ふっと笑うその笑顔が少し苦しげに見えたのは気のせいだろう。だってヴァンは次の瞬間には普通の笑顔だったから。




「なんで魔力暴走したのか心当たりがあるか?」


「私、ついヴァンに魔術を使おうをしたのですが思うようにいかず‥‥‥。」


「おいおい‥‥‥、物騒な話だな‥‥‥。やめてくれよ‥‥‥。俺を殺す気かよ。」


「はい。」


「恐ろしい女‥‥‥。」




 身震いをしたかと思うと、すぐに姿勢を正してヴァンは真剣に話し始めた。




「今までの状態を考えると‥‥‥、どうやら魔術を使おうとすると魔力の暴走が起こってしまうみたいだな。魔術障害ってとこだな。」


「そうですね。家でヴァンに魔術を使おうとしたときも魔力の暴走が起きましたし‥‥‥。」


「‥‥‥お前が魔術障害で良かったよ。」




魔術障害__、何かしらの原因が合って魔術を使えない病気のことを指したはずだ。




そうか‥‥‥、私、魔術障害になったのか‥‥‥。



ろくに魔術を使えないなんて‥‥‥。しばらく自分の右手を握って開いてと無意味に動かした。


時間を巻き戻した代償、なのかもしれない。



「どうやらお前は俺についてくるしかないみたいだな。どんだけ魔術のことを知っていたとしても魔術障害が治らない限りは魔術は無理だろう。理由とかは分かるか?」


「多分、時間を巻き戻したことが原因かと‥‥‥。それで大量に魔力が増えて身体がついてこないのかも‥‥‥。あなたは禁呪と勘違いしていましたが。」


「気のせいじゃないか?この俺様が自殺のために禁呪を使ったなんてちびっ子に聞いてないぞ!」


「‥‥‥」



語るに落ちるとはこのことだ。私は『自殺のために』なんて一言も言ってない。




「まあ!お前は俺についてくるしか方法はない、というわけだ!問答無用で連れてくぜ!ふはははは!!いいか?ちびっ子!俺が主導権を握っているんだぜ?だって俺しか街への行き方や食料を持ってないんだからな!」


「そのようですね。真に遺憾です。あなたを殺したいぐらいには。」


「お、おい‥‥‥?う、嘘だろう‥‥‥?」


「本当ですよ。戦争のときに刃物の扱いが必要になってくるときがあったので、そこそこ短剣とかなら使えますよ?前の時間ではそれで何人か亜人を殺しましたから。もちろん刃がなくたって、拳でもいけますよ?」





汗をたらりと流したヴァンには申し訳ないけど、これは本当だ。


巻き戻る前で亜人の暗殺者に幾度か狙われたことがあった。人族の宿で襲われることが合ったので、一々魔術を繰り出すよりは周りの被害の少ない刃物を使うことにしていたのだ。


もしものときを考えて拳でも相手を殺れるように訓練した。



「‥‥‥ちびっ子に絶対服従します!偉そうなことは一切言いません!」


「よろしい。」



最後までお読みいただきありがとうごいます。

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