第1話 教会訪問!!
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『あんた、今日はおかしいわ!』というお母さんのお言葉によりお医者さんの真似事をしている長老のところへ行った。
もちろん異常なしと言われた。その結果をお母さんは怪しんだ。
‥‥‥お母さん!?信じて!!エリースは変な子じゃないよ!!
「ねえ、あなた。大丈夫かしら?この子‥‥‥。」
「長老が大丈夫って言ったなら大丈夫さ。心配しなくても俺の子だ。すぐ元通りさ。このぐらいの子なら多
少おかしい行動することぐらいあるさ。な?エリース。」
「あ、ああ。うん。そうだよ。エリース元気元気ィ!!」
そしてあまりにも怪しんだお母さんがお父さんだという男の人を入れた家族会議を始めた。
『はじめまして』なのにこんなに親しげに話しかけられても困る。誰あなた、みたいな感じなのに。
「念の為、教会に行って神父様に見てもらいなさい。」
マミー!?大丈夫だって!!
「まあ、それは‥‥‥、そうかもな。」
パピー(?)も少し思うところがあったらしい。う〜ん。やっぱり知らない人を見ている目っていうのはわかってしまうものなのかな?
「じゃあ、わかった。いってくるよ。お母さんもお父さんもこれから仕事でしょ?1人でいけるから大丈夫。」
「途中で遊んでいたら怒るからね?」
「大丈夫大丈夫。」
流石に中身17歳だから大丈夫!とは言えなかったけどそれでも10歳の私でも信じてほしいと思った。
それに私は悲しきかな、村に友達という友達がいなかった。というのも同年代の子が全然いないのだ。残念すぎる。
だから途中で遊ぶのは絶対ないと言い切れる。だから信頼してよマミー!!
それなのに心配そうなお母さんから帽子を受け取って怪しまれないように元気よく家から出発した。
それにしてもお父さんってあんな顔なんだ‥‥‥。
私が旅に出る前にお母さんにお父さんのこと聞いても悲しそうな顔しかしないからお父さんがどんな人か分からなかった。
死んだ旦那のことを思い出すにはまだ時間が欲しかったのだろう。それなのに私は無神経にそんなことを聞いて‥‥‥、私は後でずっと後悔していた。
初めて見るお父さんはなんというか‥‥‥、普通の人だった。優しそうで純粋そうな普通の人。
お母さんは結構強気な人だからお似合いかもね。実際に仲良さそうだし。こうやって見てみると。
お父さんがいるって悪くないかも‥‥‥。ふふっ。
時間が巻き戻る前のお父さんは私が生まれて半年が経ったあと、デモン狩りにでかけたっきり帰ってこなかった。
デモンは普通の動物より少し大きくて人間を(色々な意味で)喰らうのが好きな生き物だ。
それに大量に発生するから村に危害が加わらないように定期的に村の男の人たちで倒す。
倒したら少なくないお金がもらえるし、自分たちの安全を守らなくてはいけないからよく村の人達はデモン狩りをしてた。
‥‥‥でも、当然犠牲になる人はいる。お父さんがその一例だ。デモンにお父さんは食われてしまった。
そんなお父さんが時間を巻き戻してみたらいることが不思議で仕方がない。
でも『時間』を操る術なんて聞いたことない。多少のエラーが起きてもしょうがない。そのエラーがまさかお父さんが『生きている』ことなんて素晴らしいことはない。一家全員揃うなんて夢見たい‥‥‥。
やはり、あの声の持ち主は『神様』だったのだろうか?まあ、時間を巻き戻すなんて絶対にできないようなことをできるのは神様だけだろうけど。
一応、魔術師の端くれだったから魔術でないことぐらいは分かるし『教会』の技でもないだろうし‥‥‥。
神様、ね‥‥‥。
『神様』を崇める宗教は一つしか無い。『教会』という宗教だ。『教会』は神を崇め、デモンを討ち滅し、亜人を許さないことを教え導いた。
そんな『教会』に行けば何か分かるかもしれない。
村の隅に慎ましく建てられている『教会』の支部が見えてきた。家からそう遠くもない距離だし行くのに苦労しない距離だ。だからお母さんも1人で行く許可を出したのだろう
そういえば故郷が滅ぼされたときには『教会』だけは残されていた。勇者にも『教会』には思い入れがあるのだろうか?
そんなことを思いながら教会の扉前で辿り着き、その古びた扉をゆっくりと開けた。ただ結構古い建物だからギシッと軋む音がした。
‥‥‥あれ?静かだな?もう少し賑やかだった気がするんだけど。教会って。
「こんにちは!神父様いらっしゃいますか!!」
「おお、エリースちゃん。いらっしゃい。」
考え事をしていた私を穏やかな声で迎えてくれたのは目尻を下げた優しい表情の神父様。
質素なキャソックを来ていた。キャソックは神父様の服のことだが、それがなんとまあ、素晴らしくお似合いなのだ。
見とれている場合じゃないんだろうけど、でもしょうがないじゃん!!神父様は私の初恋の人なんだから!!
えっと10歳のときだから神父様は60超えていたっけ‥‥‥?
圧倒的な年齢差がありながら『父』というものを知らなかった私は父性を感じる神父様にゾッコンだったんだよな‥‥‥。神父様かっこいい!!ラブ!!
「この老いぼれに何か用があるのかな?エリースちゃん。」
「はっ!そうでした!!お母さんに『今日のあんたはおかしいから教会に行きなさい』と言われたのです。」
「ほう、どれ見てみるかね‥‥‥。」
そう言って私の頭に優しく手を乗せた。
神父様は『教会』に属することで色々な技を使える。そのうちの一つに他人の状態を見られる、というものがある。
まあ人によっては見られるものに程度はあるけれども、ここの神父様は超優秀だから他人の名前や能力など個人情報がガバガバだ。
時間が戻る前の故郷にいた頃はそんなすごい人だなんて知らなかったんだけどね‥‥‥。
旅に出ると『教会』に所属する人をたくさん見てきたから優秀具合がわかるのだ。
なんでこんな優秀な人がこんな辺鄙な教会にいるのかな?国の中心である王都にいてもおかしくないのに。
「ふむ。特に精神状態はおかしくないが‥‥‥。」
「どうしたの?神父様?」
「‥‥‥いや、なんでもないよ。お母さんにも大丈夫だったよと伝えてくれるかい?」
「わかったよ!神父様!」
‥‥‥神父様、どうしたんだろう?急に黙って‥‥‥?
一瞬、時間を遡ってきたのがバレたのかと思ったのだけれども‥‥‥。
「ところでエリースちゃん。今日はこれからどうするのかね?」
「う〜ん‥‥‥。今日は教会にいよっかな?神父様のお話し聞きたい!!神父様のお話だぁいすき!!」
「ほうほう。そうかねそうかね。嬉しいことを言ってくれるね‥‥‥。」
「えへへっ!」
憧れの人に褒められて照れちゃうなっ!
‥‥‥はっ!私、精神年齢下がっている?10歳に近づいてない!?17歳としての沽券がぁ‥‥‥。
それでも神父様の笑顔を見ると‥‥‥。えへへ‥‥‥。こうやって甘えちゃうんだよ!!うう‥‥‥。
それにしても神父様のお顔ってこんな感じだったんだな‥‥‥。
神父様にお会いするのは旅に出る前に会ったっきりだからなんだかこうやって話せるのが不思議。
「じゃあ信者席に座ってワシの話を聞くかね?」
「うん!」
うんうん!神父様のお話し好きなんだよな!でも常に信者席には誰かいるから別室でお話を聞いてたんだよ、‥‥‥え?
「神父様、信者席に何で誰もいないの?」
「うん?いつも閑古鳥が泣いているじゃろ?この『教会』の支部は。」
「は?」
『教会』の支部でいつも閑古鳥が泣いている‥‥‥?時間が巻き戻る前は毎日盛況だったというのに!?
あはは‥‥‥、そんな馬鹿な。神様に対して信心深くない人でも月イチで教会に行っていたというのに!?
「神父様、面白い冗談ですね?でも流石に誰も長らく来ていないなんてそんなはずは‥‥‥。」
「‥‥‥?‥‥‥ああ、なるほど。あっはっはっは。そういうことか。エリースちゃん!ワシを慰めようとしているのか!ああ、ありがとうありがとう。すぐに気づかなくて悪かったね。その慈悲深さはきっと神様まで伝わっているよ。でもそうだな‥‥‥、この『教会』の支部に月に一回の頻度でも来るのはエリースちゃんぐらいだよ。あとは食べ物を分けてくれる優しい人か。」
「え?」
そんな馬鹿な。月一でも誰も祈りに来ないっていうの!?何で!?
愚かにも神父様のことを疑ってしまったけど、確かに誰もいない。静かだって感じたのはだからか‥‥‥。
「エリースちゃん、もしそんなに人が来るとしたら何をお祈りしに来るのだろうかね?」
「え?それは村の男の人がデモンによって傷つきませんように、とか、勇者によって魔の皇帝が早く倒されますように、とかじゃないのですか?」
神父様の意図が見えない。とりあえず皆が祈っていた内容をそのまま言ってみるが。
「‥‥‥ふむ。デモンか‥‥‥。それは思いもつかなかったな‥‥‥。」
「思いもつかないってどういうことですか?」
「いや、気を悪くしたならすまない。デモンなんて村で数年に1体出るか出ないかだったからね‥‥‥。正直
忘れていたよ。」
「数年に1体!?」
そんな馬鹿な!?時間が戻る前の村では一ヶ月でなかったら運がいい方なのに!?
「それに『ユウシャ』や『マノコウテイ』?とやらはすまぬ。なんのことやらさっぱりじゃ。」
やっぱり時間が巻き戻る前と後じゃ明らかに違う‥‥‥。
「‥‥‥エリースちゃんは『《《巫子》》』様を知っているかのう?」
「え?『巫子』様?」
「そうじゃ。時折この世界にやってこられる不思議な方たちだよ。なんでも私達とは違う世界‥‥‥、異世界からいらっしゃるらしい。」
その神父様の声にドキリとする。
__条件がある。殺せ、世界に愛されし異界の『ミコ』を。
そう言われたんだ。私は。その『ミコ』っていうのは『巫子』のこと?ならば私はその人を殺さなきゃいけない。
だって
__お主もそいつを殺せばお主がしたい『復讐』とやらをできる。
そう、声の主が言っていたから。その人を殺すことで勇者に復讐できるなら私は喜んでその人を殺して勇者に復讐する。
「そ、その人のこと!詳しく教えて下さい!!」
「『巫子』様のことを?」
「はい!」
気がつけば大きな声でそう言っていた。
礼儀がなっていないとは自分でも思ったけど、でも少しでも知らなきゃいけない。その人のこと。
「『巫子』様は我々は持たない巨大なお力を持たれている。そのため我ら『教会』が保護しているって言って分かるかね?」
「はい。」
でもそれって大きな力を持つゆえ、それを制御するために『教会』が飼っているってこと‥‥‥、だよね?
勇者が『巫子』様?とやらと同じ立場だったからよく分かる。
神父様は大好きだけど、『教会』の人たちのなかでも汚い人たちがいたから‥‥‥。
「その『巫子』様の中でも最近いらっしゃった方がいる。今はもういらっしゃらないらしいけどね。」
「え?『巫子』様ってもういないのですか!?」
どういうことですか!?あの声の持ち主様!!いないじゃないですか!!殺す相手!!
「もうご自分の世界へお帰りになったと聞いているよ。」
「ところで神父様。『巫子』様というのは複数人いたのですか?」
「ああ。今までにたくさんの方がこの世界にいらっしゃったよ。とは言ってもこの世界には1人しかいれないらしいから1人ずつだけどね。」
「さっき神父様は『巫子』様が巨大な力を持たれていると言っていましたがそれはどんなお力なのですか?」
「うーん。1人ずつ違うものであるらしいのだけれども‥‥‥、例えば一気にデモンを殲滅することができたり、広範囲の驚異的な治癒能力を使われたり、中には動物などと言葉を交わすことができる方もいらっしゃったかな?」
「それは‥‥‥、すごいですね。」
「そうだろう?魔術や『教会』の持つ技を持ってでも難しいだろうね。」
う〜ん。じゃあこれから『巫子』様が来るからその人を仕留めてほしいってこと?
あの声の持ち主は。そんな私には敵いそうにもない巨大な力を持つ相手に?
「『巫子』様はどうやってこちらの世界にいらっしゃるのですか?」
「それはよくわからないけど、『神様からのお告げ』があった後、この国のどこかにいらっしゃるらしい。」
「『神様のお告げ』‥‥‥、ですか。」
「そう、『教会』の持つ技術のうちの一つだね。」
そういえば勇者も『神様からのお告げ』だったらしい。『神様のお告げ』は直接神様と交信できるものである、そう勇者が言っていたことを思い出す。
確かあれは『魔の皇帝』を倒したあと『教会』へ帰った、勇者や私の仲間である聖女との会話だっけ‥‥‥?
聖女は知っていたのだろうか?私の故郷を滅ぼすことを。狸だったからな‥‥‥、あの子。知っていたとしても分かんなかった。
「エリースちゃん?どうしたの?そんな顔して。」
「あ、いえ!なんでもありません。」
というか私がどんな顔をしていたのかが気になるのですが。
私、般若になっていたのでしょうか?神父様‥‥‥。
「それでどこまで話したかな‥‥‥?確か、『巫子』様のお力までは話したよね?」
「はい。神父様。」
「じゃあこんなに多種多様な力を持っていた『巫子』様なんだけどある共通点があるんだよ?分かるかい?」
「共通点、ですか‥‥‥?」
力以外に共通しているもの‥‥‥?
「もしかしてものすごく性格が悪い、とか‥‥‥?」
「あー、それも人それぞれかな?正解を教えてあげよう。ちょっといいかい?」
「はい?」
首をかしげる私に微笑みかけながら、神父様は時間が巻き戻る前によく訪ねた別室へと案内してくれた。
一名様ごあんな〜い。ってあれ?
別室こと神父様の私室はあいかわらず質素だった。机と椅子、そして教本などの大量の本を置くための本棚ぐらいが特筆すべきものだろう。
前に時間が巻き戻る前と同じような部屋だったけど一つだけ違ったのは前には何もなかった壁に布をかけた絵が飾られていることだ。
「神父様‥‥‥、その絵って‥‥‥?」
「ああ、この絵かね‥‥‥。ちょっと待っていてくれるかな?」
そう神父様はゆっくりと丁寧な仕草でその布を取り除いた。
「これが初代の『巫子』様の絵だよ。エリースちゃん。」
「『巫子』様‥‥‥?この、方が‥‥‥?」
「ああ。本当は最近いらっしゃっていた『巫子』様の絵を見せてあげたかったんだけどね‥‥‥、捨ててしまったから。」
その絵は男の人だった。
その人は片手を前に出し、自然の力を借り数多くのデモンを倒しているようだった。そして、その巫子様は、
「黒髪‥‥‥?」
「ああ、そうだよ。よく気がついたね。」
「では‥‥‥。」
「そう。今までいらっしゃる『巫子』様は例外なく黒髪で黒の瞳をお持ちになるだよ。」
ああ!ああ!なるほど、復讐、ね‥‥‥。あの声の主の本当にいいたいことがわかった。
黒髪、黒い瞳。それは勇者の特徴に当てはまった。つまり勇者は『巫子』だったんだ!!
なんで名称が変わったかは気になるけど‥‥‥。なるほどなるほど。
だから私にチャンスをくれたんだ!!あの声の主は!!勇者を殺そうとしている!私に!!
勇者を殺せと、そう言いたいのだ!!あははっ!!
声の主、いや、神様に見捨てられたの!?勇者サマ!!
そして私は、私の存在は神様に認められたんだ!!あははははははははははは!!!
「クスクス‥‥‥。」
「エリースちゃん?どうしたの?」
「いえ、なんでもありません。そんなことよりも『巫子』様のお話、もっと聞きたいです!!」
「そうかい?あ、でも‥‥‥。」
「どうされたのですか?」
憎き勇者が『巫子』様とやらで神様にも頼まれたのならば私は勇者を絶対に、100%殺さなくてはならない。そのためにも『巫子』様の情報を知らなくてはならない。
「実はね‥‥‥。」
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