明日は遠足!
※この作品は、拙作『お空が晴れてる!』『いたいよぉ!』の続編として書かれていますが、そちらを読まれていないかたも楽しめるように書いています。もちろんそちらをお読みくださったかたも楽しめます(*^_^*)
「ゆい、明日の準備ちゃんとした?」
「うん!」
ママにいわれて、ゆいは元気よく答えました。明日は遠足です。ゆいは、はりきりっぱなしでした。
「ほらほら、早く寝なさい。明日は六時に起きなくちゃ間に合わないんだから、おねぼうしちゃっても知らないわよ」
リュックをせおって、おしりをふりふりしているゆいに、ママがあきれたようにいいました。
「うん、ママ、おやすみなさい」
ママにおやすみのあいさつをしてから、ゆいはリュックをおろしました。もう一度中を確認します。
「お弁当と水筒入れて……。もうちょっと入りそうだなぁ」
にまっと笑って、ゆいがちらりとぬいぐるみたちに目をやりました。ぬいぐるみたちは、いやな予感でいっぱいになります。
「あの目は、絶対なにか企んでるよ」
まんまるふっくらした、くじらのぬいぐるみがいいました。
「もしかしてゆいちゃん、ぼくたちをリュックに入れる気じゃ……」
にっこり笑っている、くまのぬいぐるみもぎゅうっと身をちぢめました。
「どうしよう、ぼくたち小さいから、リュックにすっぽり入っちゃうよぉ」
小さなひよこのぬいぐるみに、やっぱり小さなうりぼうのぬいぐるみがうなずきます。
「そうだよ、ぼくやだよぉ、あんなせまいところに入りたくないよぉ」
うりぼうのぬいぐるみが悲鳴をあげます。
「ぼくはおっきいから、リュックには入らないぞ」
ぬいぐるみたちのなかでも、一番古株の、アザラシのぬいぐるみが得意そうにいいました。
「ずるいぞ、自分だけ!」
アザラシの次に古株の、シャチのぬいぐるみが怒ったようにいいかえします。
「そういうシャチくんだって、大きいじゃないか! ぼくたちは小さいから、リュックの中に入っちゃうよ」
一番新しいかえるのぬいぐるみが、お友達のキノコのぬいぐるみを抱きしめてからいいました。みんな身をぎゅうっとちぢめて、ゆいをじっと見ています。ゆいはにまにましながら、リュックを開けたりしめたりしています。
「だれを持っていこうかなぁ……」
リュックをしめると、とうとうゆいがぬいぐるみたちのところへやってきました。みんな「選ばれませんように」と願いながら、小さくちぢこまっています。
「やっぱり、うりちゃんかなぁ、ひよこちゃんかなぁ?」
うりぼうのぬいぐるみと、ひよこのぬいぐるみを手のひらに乗せて、ゆいが首をかしげます。うりぼうとひよこは、どちらも「助けてぇ!」とみんなにさけんでいますが、みんなプイッと顔をそむけています。
「それとも、かえるくんがいいかなぁ? キノコちゃんもいっしょがいいよね?」
うりぼうとひよこをベッドにおいて、ゆいはかえるとキノコを手に取りました。かえるが「いやだよぉ!」とさけんでいます。
「うーん、でも、ちょっとぎゅうって押しこんだら、アザラシくんもいけるかも」
かえるとキノコをベッドにおいて、安心しきっていたアザラシをゆいがだっこしました。アザラシは「ひぃっ!」と悲鳴をあげます。
「無理だよぉ、あんな小さなリュックに、ぼくは入らないよぉ!」
「いいぞ、ゆいちゃん! アザラシを持っていってくれ!」
シャチの言葉に、アザラシはもうカンカンです。「ひどいぞ!」とシャチをどなります。
「うーん、でも、アザラシくんは大きすぎかなぁ。それじゃあ、シャチくんかなぁ」
「うわっ、いやだよぉ!」
今度はシャチがゆいにだっこされて、悲鳴をあげます。アザラシが、ここぞとばかりにはやしたてます。
「やーい、そのままつれていかれちゃえ!」
「このっ! そんなこといってると、あとでかみつくからな!」
シャチがアザラシをにらみつけました。他のぬいぐるみたちも、みんなもうブルブルガタガタ、だれがリュックに入れられるのか、ドキドキしながらゆいを見ています。ゆいはにまにましながら、ぬいぐるみたちをじーっと見ています。
「うーん、だれを入れようかしら……」
「……い、ゆいったら! もう、早く起きないと、遠足遅刻しちゃうわよ!」
ママの声に、ゆいはガバッと起きあがりました。ごしごしっと目をこすると、時計は六時をとっくに過ぎていました。
「わわわっ! どどど、どうしよう!」
「ほら、急いで着替えて、ご飯食べちゃいなさい。お弁当と水筒はママが用意してるから」
ママにせかされて、ゆいはバタバタしながら着替え始めます。ママもお弁当と水筒を持ってきて、あわただしい朝になってしまいました。
「……うーん……。もう朝かぁ」
ママとゆいのドタドタに、ぬいぐるみたちも目を覚まします。みんなぐったり疲れていました。
「ゆいちゃん、ひどいわ。あのあとわたしたちのこと、無理やりリュックにつめこもうとして……」
くじらがふっくらしたからだをもっとふくらませて、怒ったようにいいました。
「リュックの中、暗かったよぉ」
うりぼうとひよこも半泣きになってつぶやきます。
「まったくもう、ゆいちゃんには困ったものだよ」
かえるも、カンカンになっていいました。と、アザラシが目をぱちくりさせて、かえるを見ます。
「……あれ、そういえばかえるくん、キノコは?」
「……あ」
「あれぇ、おやつにチョコレート持ってきてたのに、どうしてキノコくんが入ってるの?」
リュックをごそごそあさりながら、ゆいが泣きそうな顔でキノコに聞きます。ゆいに聞かれても、キノコはさっぱりわからずに、ぎゅうっと身をちぢめてつぶやくだけでした。
「かえるくん、どこぉ? うぅ、早く帰りたいよぉ……」
お読みくださいましてありがとうございます(^^♪
こちらの『ゆいちゃんのぬいぐるみ』シリーズは、9/26にも投稿予定です。そちらもどうぞお楽しみに(^^ゞ
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