表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ゆいちゃんのぬいぐるみシリーズ

明日は遠足!

作者: 小畠愛子

※この作品は、拙作『お空が晴れてる!』『いたいよぉ!』の続編として書かれていますが、そちらを読まれていないかたも楽しめるように書いています。もちろんそちらをお読みくださったかたも楽しめます(*^_^*)


「ゆい、明日の準備ちゃんとした?」

「うん!」


 ママにいわれて、ゆいは元気よく答えました。明日は遠足です。ゆいは、はりきりっぱなしでした。


「ほらほら、早く寝なさい。明日は六時に起きなくちゃ間に合わないんだから、おねぼうしちゃっても知らないわよ」


 リュックをせおって、おしりをふりふりしているゆいに、ママがあきれたようにいいました。


「うん、ママ、おやすみなさい」


 ママにおやすみのあいさつをしてから、ゆいはリュックをおろしました。もう一度中を確認します。


「お弁当と水筒入れて……。もうちょっと入りそうだなぁ」


 にまっと笑って、ゆいがちらりとぬいぐるみたちに目をやりました。ぬいぐるみたちは、いやな予感でいっぱいになります。


「あの目は、絶対なにか企んでるよ」


 まんまるふっくらした、くじらのぬいぐるみがいいました。


「もしかしてゆいちゃん、ぼくたちをリュックに入れる気じゃ……」


 にっこり笑っている、くまのぬいぐるみもぎゅうっと身をちぢめました。


「どうしよう、ぼくたち小さいから、リュックにすっぽり入っちゃうよぉ」


 小さなひよこのぬいぐるみに、やっぱり小さなうりぼうのぬいぐるみがうなずきます。


「そうだよ、ぼくやだよぉ、あんなせまいところに入りたくないよぉ」


 うりぼうのぬいぐるみが悲鳴をあげます。


「ぼくはおっきいから、リュックには入らないぞ」


 ぬいぐるみたちのなかでも、一番古株の、アザラシのぬいぐるみが得意そうにいいました。


「ずるいぞ、自分だけ!」


 アザラシの次に古株の、シャチのぬいぐるみが怒ったようにいいかえします。


「そういうシャチくんだって、大きいじゃないか! ぼくたちは小さいから、リュックの中に入っちゃうよ」


 一番新しいかえるのぬいぐるみが、お友達のキノコのぬいぐるみを抱きしめてからいいました。みんな身をぎゅうっとちぢめて、ゆいをじっと見ています。ゆいはにまにましながら、リュックを開けたりしめたりしています。


「だれを持っていこうかなぁ……」


 リュックをしめると、とうとうゆいがぬいぐるみたちのところへやってきました。みんな「選ばれませんように」と願いながら、小さくちぢこまっています。


「やっぱり、うりちゃんかなぁ、ひよこちゃんかなぁ?」


 うりぼうのぬいぐるみと、ひよこのぬいぐるみを手のひらに乗せて、ゆいが首をかしげます。うりぼうとひよこは、どちらも「助けてぇ!」とみんなにさけんでいますが、みんなプイッと顔をそむけています。


「それとも、かえるくんがいいかなぁ? キノコちゃんもいっしょがいいよね?」


 うりぼうとひよこをベッドにおいて、ゆいはかえるとキノコを手に取りました。かえるが「いやだよぉ!」とさけんでいます。


「うーん、でも、ちょっとぎゅうって押しこんだら、アザラシくんもいけるかも」


 かえるとキノコをベッドにおいて、安心しきっていたアザラシをゆいがだっこしました。アザラシは「ひぃっ!」と悲鳴をあげます。


「無理だよぉ、あんな小さなリュックに、ぼくは入らないよぉ!」

「いいぞ、ゆいちゃん! アザラシを持っていってくれ!」


 シャチの言葉に、アザラシはもうカンカンです。「ひどいぞ!」とシャチをどなります。


「うーん、でも、アザラシくんは大きすぎかなぁ。それじゃあ、シャチくんかなぁ」

「うわっ、いやだよぉ!」


 今度はシャチがゆいにだっこされて、悲鳴をあげます。アザラシが、ここぞとばかりにはやしたてます。


「やーい、そのままつれていかれちゃえ!」

「このっ! そんなこといってると、あとでかみつくからな!」


 シャチがアザラシをにらみつけました。他のぬいぐるみたちも、みんなもうブルブルガタガタ、だれがリュックに入れられるのか、ドキドキしながらゆいを見ています。ゆいはにまにましながら、ぬいぐるみたちをじーっと見ています。


「うーん、だれを入れようかしら……」




「……い、ゆいったら! もう、早く起きないと、遠足遅刻しちゃうわよ!」


 ママの声に、ゆいはガバッと起きあがりました。ごしごしっと目をこすると、時計は六時をとっくに過ぎていました。


「わわわっ! どどど、どうしよう!」

「ほら、急いで着替えて、ご飯食べちゃいなさい。お弁当と水筒はママが用意してるから」


 ママにせかされて、ゆいはバタバタしながら着替え始めます。ママもお弁当と水筒を持ってきて、あわただしい朝になってしまいました。


「……うーん……。もう朝かぁ」


 ママとゆいのドタドタに、ぬいぐるみたちも目を覚まします。みんなぐったり疲れていました。


「ゆいちゃん、ひどいわ。あのあとわたしたちのこと、無理やりリュックにつめこもうとして……」


 くじらがふっくらしたからだをもっとふくらませて、怒ったようにいいました。


「リュックの中、暗かったよぉ」


 うりぼうとひよこも半泣きになってつぶやきます。

 

「まったくもう、ゆいちゃんには困ったものだよ」


 かえるも、カンカンになっていいました。と、アザラシが目をぱちくりさせて、かえるを見ます。


「……あれ、そういえばかえるくん、キノコは?」

「……あ」




「あれぇ、おやつにチョコレート持ってきてたのに、どうしてキノコくんが入ってるの?」


 リュックをごそごそあさりながら、ゆいが泣きそうな顔でキノコに聞きます。ゆいに聞かれても、キノコはさっぱりわからずに、ぎゅうっと身をちぢめてつぶやくだけでした。


「かえるくん、どこぉ? うぅ、早く帰りたいよぉ……」

お読みくださいましてありがとうございます(^^♪


こちらの『ゆいちゃんのぬいぐるみ』シリーズは、9/26にも投稿予定です。そちらもどうぞお楽しみに(^^ゞ


ご意見、ご感想などもお待ちしております(*^_^*)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] ヌイグルミや人形に深い愛着があると、お出掛けに連れて行きたくなるのは人情ですね。 そうしてお出掛け先での思い出を共有する事で、ヌイグルミや人形への愛着が益々深まっていき、「かけがえの無い友…
[良い点] 今回はみんな薄情でしたね…… ぬいぐるみたちは手のひらサイズでしたか。 もっと大きいものだと勘違いしていました。
[一言] 今回もほっこりさせていただきました。 うちの娘も小さい頃、ぬいぐるみ全部を連れて行こうとしましたね。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ