貴様にも味あわせてやりますわ! このリーリエ・リヴァーレの恐ろしさを!
さてさて、なんやかんやで始まった私と黄金卿と呼ばれる方との一戦。
もちろんシミュレーターですから、データで再現されたものにはなります。
彼の黄金の聖機士は、彼自身がしっかりとデータを確認して完全再現されているそうですわ。
で、私の機体ですけれど。
「……カスタマイズパーツは全解放、実にいい状態ですわね」
えぇ、生前のアレで行くのが一番ですわね。
一般的な量産品の聖機士、ガ〇ダムで言う所の〇ムだったりザ〇だったりする奴を選択。武装を一般的な剣を一本。
以上!
「……お、おいおい嬢ちゃん射撃武装は!?」
「必要ありませんわ」
もちろんこれにはある理由がありますの。黄金卿の扱うゴルトオーロゾールタは高火力広範囲の射撃武装をメインにした機体、弱点としてリロード時間が長いというものがありますが、それ以外は高スペックにまとまった機体ですわ。
で、これで問題ない理由ですが―。
「あら、カウントダウン、試合の始まりですわね」
「ふん、ガキが調子に乗ったことを後悔させてやろう」
暗かった視界は一瞬で草原へと変わる。太陽がさんさんと降り注ぎ、まるで私の初陣を祝福するかのようですわね。
まぁ、これただの映像なんですけれど。
「っと!!」
こちらに向かって放たれる無数のミサイル。その一つ一つを剣で切り払いどうにかして切り抜ける。
「あらあら、レディに優しくするのは基本ではなくって」
さて、最初のミサイルを切り払いに成功した場合次に来るのは―。
「だが手を抜くのはもっと非礼であろう?」
高エネルギー反応っ! 黄金卿の聖機士の持つ最大の一撃ですわねっ!
「ゴールデン砲が来るということはっ!」
バーニアを最大出力、いる場所が分かったということは攻撃のチャンスっ!!
エネルギーが反応の方角目掛けて最大速度で突撃、エネルギー反応からちょうど3秒で。
「ゴールデン砲発射ぁっ!!」
金色の破壊エネルギーが放たれましたわね、でもそれをすれすれで回避してしまえば逆に隙だらけ。
そう、実はリロードに時間がかかる武装しかない黄金卿は回避の大切さを理解すれば実に対処しやすい相手なのです。
まぁ、おまけモードの最初の敵ですし難易度が高くってもそれはそれで困るのですが。
「なっ!?」
ちなみに剣一本にしていたのはギリギリミサイルのリロードが終わらない間に近づくための軽量化が目的ですわね。下手に射撃武装積んでるとミサイルのリロードが完了、そこから距離取られてぶっぱと悪循環に陥りますわ。
そして距離を詰めることの最大のメリット、それはなんと黄金卿が近接武装を積んでいないという点ですわ。
しかもも高火力のゴールデン砲は攻撃を受けると再度チャージをしなければならず、ミサイルは爆発の範囲が広いので近接戦では使えない。
カモですわ!!
「なっ、この距離はまずいっ!?」
まずいと気がついてももう無駄ですわ。
「貴様にも味あわせてやりますわ! このリーリエ・リヴァーレの恐ろしさを!」
さて、剣を何度も叩きつける。踊るように振り回す。
当然離脱しようと動きますが、ゴテゴテ装備の重量級が軽装のこちらから逃げられる道理などありませんわ!!
「ふふっ、そろそろジ・エンドですわね!」
とどめは雄々しく唐竹割りですわ!!
黄金卿のゴルトオーロゾールタを真っ二つ……いや、まぁデータ再現ですわよ? 正直本物ならいろいろと問題も出てくるでしょうし。
まぁ、どちらにせよっ!
「勝利掲げよ高らかにっ!」
キメッ! と決めポーズを決めるのも忘れませんわ! えぇ、大事ですもの!!
「うぉぉぉぉぉっ! あの黄金卿をぶっ倒しやがった!」
「天才ですわ!!」
あら、オーディエンス盛り上がっていますわ……もっと褒めなさい! いいですか、厳しくしても人はやる気を失って成果を上げないのです! 褒めなさい! 多少調子に乗らせるぐらいのほうが伸びるのですわ!!
と、テンション上げすぎですわね……。
「ふっ、なかなかやるではないか」
あら、黄金卿。って冷静に考えると私この方の名前知らないのですわ。
「ガキだと侮っていたが、奇人ローマンの娘だけはあるか……失礼な態度をとってしまい申し訳ない、ああいうキャラで売っていてね」
キャラづくり大事ですわよね、私のこれもキャラ付けですし。
「あらためて初めまして、私はゴルード・ネカッチモ侯爵、どうぞお見知りおきを」
いえいえ、、こちらこそ恥をかかせるような真似をしてしまい申し訳ありませんわ。
「なーに、貴女のような素晴らしいレディの引き立て役になるのであればこの程度の恥さしたる問題ではありませんとも」
……すっごく良い人ですわ!? え、このような方を前世でカモ扱いしていたのですか!?
恥ずかしすぎて死にたくなってきましたわ。
嘘ですわ、一回死んだしもう死にたくないですわ。
「はっはっは、しかしこれだけ動かせるとは……本当に天才か、ご両親に似られたのですね」
「そりゃ、あの奇人ローマンと戦姫トライゾンの娘だぞ? 弱かったならそもそも別の所に才能が伸びてるとしか思えんさ」
「ふむ、これからの時代のためにも緋色の雷鳴、君にもいい相手はいないのか」
「こちとらフリーランス、お貴族様とは違います」
……あ、大人の話が始まりましたわ。
ふーむ、これなら子供の所に行って偉ぶってくるのがよさそうですわね。