見せていただきたいものですわ、他所の家庭の聖機士というものを
ウィリアム王子と出会ってから数日が経った今、お父様主催するお茶会に私も出席することになりました。
「……行きたくねぇですわ」
えぇ、正直物凄く行きたくありません、いらんこと言ってお母さまのお説教など目に見えていますわ。
リーリエ・リヴァーレ……学ぶ女ですわよ。
「そうだ、リーリエ今度のお茶会は皆聖機士で出席するのだぞ」
「もっと早く言っていただいてもよかったのではありませんかお父様!! 見せていただきたいものですわ、他所の家庭の聖機士というものを」
そんなん行くに決まってますわ!!
残念ながら私、生まれてこの方聖機士はお父様のとんちき装備ロボしか知りませんもの。
考えても見てくださいな、何処の世界にパイルバンカーとドリルが基本装備になる世界観がありますの?
もっと他の積みますわよ? ドリルだけならまだ理解できますわ、パイルバンカーだけも理解しますわ。
でも、両方は頭おかしいでしょう? しかも他の武器積んでないんですわよ?
……やっぱお父様頭おかしい人なんではないでしょうか。
ふぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっっっ!!!!
聖機士に乗っていますわ! お父様の膝の上で! お父様の聖機士に乗っていますわ!!!
「この世の春が来ましたわぁ!!」
ぐへへへへへっ、もう私死んでも構いませんわ。
「そんなことは言わないでくれ、これからの人生楽しいことはいっぱいあるぞ」
そうですわね、自分の手で動かすという夢がまだありましたわ、こんなとこで死んでなんていられませんわ。
「はははっ、パパのようになるんだぞー」
いや、ロマン全振りマンにはなりたくないですわ。
さて、到着しましたお茶会の会場。
「これは王族が招待した方だけが参加できるパーティーでね」
ほうほう、お父様は偉い方だったのでしたわね。
「とはいえ、成り上がりだけどね」
それにしてもいっぱい人がいますわね。
「ふむ……百二十七人来ているね」
あの、一瞬で分かるものなのですの!?
「この程度できなければ聖機士のパイロットはできないよ」
ま、まさかこの一瞬で何人の方がここにいるのか判別しただなんて。
「いいや、違うよ……この会場で働いている人や招待した側の人は除いた人数だ」
な、なんとこの一瞬で全てを見抜いたというのですか!?
「ははははっ、いやいやこの位は―」
「謙遜はやめていただけません? さすがにそれだけの目を持ってるのは貴方ぐらいですよ」
あら、知らない方ですわね。
「おいおい、緋色の雷鳴と呼ばれた君が言うのかい」
「あんたに比べれば俺のその異名も糞雑魚ナメクジですからねぇ!」
緋色の雷鳴……確かおまけのアクションゲームの方で対戦相手として出てきた方でしたわね……最強クラスの相手でしたわ。確か名前は―。
「っと、いけないいけない、こんなお嬢様の前であんな振る舞いはいけないな……リーリエお嬢様、お父様にお世話になりましたドンナー……ランツェ・ドンナーと申す者です、お見知りおきを」
あぁ、この方っ! この方ですわっ! 倒せるようになるのに何日もかかったエースですわっ!
「……お嬢さん、俺なんか見てこんなに喜んでどうしたんです?」
「聖機士が大好きなのさ」
「……あんたの娘なだけあって変わり者……独特な感性の持ち主なのですね」
なんか馬鹿にされてる気がしますけれど、私全く気になりませんわっ!!
「……よかったら、君の聖機士を見せてあげてほしいんだが」
「まぁ、減るものじゃないし別にいいですよ?」
なんと、あのゲームで見た機体を生で見られる……最高ですわねっ!!
あら、人だかり?
「ははははっ、どうだどうだこの僕のゴルトオーロゾールタはっ!!」
……ドイツ語で金、イタリア語でも金、とどめにロシア語でも金……あぁ、思い出しましたわ。
おまけモードで一番弱い方ではありませんか。
掲示板でもやけくそにもほどがあるだろこいつ、とか言われてた方。
「おいおい、あの金持ちボンボンまたやってるのか」
「ただなぁ、金かかってるから強いんだよなぁあいつの聖機士」
性能だけ……ふむ、お父様。
「どうしたんだい、リーリエ」
「あの方とちょっと戦ってみたいのですが」
「ふむ、とはいえ体格の問題がなぁ」
「あー、ならいいアイデアがありますぜ……シミュレーターですよ」
「あぁ、あれなら行けるか、王族のパーティーだし置いてあるだろう」
……この世界シミュレーターあったの!?
え、いや……えっ!?
「ふむ、聖機士の戦闘を見せるのもパーティーではよくあるし、多分あるな」
「シミュレーターなら細かい調整も容易ですし、お嬢様のお望みも叶いますとも」
……聖機士を動かせる、本物ではなくとも……最高ですわね。
「すまない、黄金卿、シミュレーターで君の力を見せてほしいんだが」
「ほう、この私のかっ! それで奇人か、緋色の雷鳴か!」
「私ですわっ!」
「はっ、ガキが……いや、構わん、完膚なきまでに全力を振るうぞ?」
「もちろん、構わないんだろう? リーリエ」
「はいっ、お父様!」
後にこの日の出来事を【白百合姫の降臨祭】【聖機士黄金時代の幕開け】【奇人の子も奇人】などと言われることになるのだが、それはまた次回のお話である。